2000年4月版

‐ 本年1〜3月期は大幅なプラス成長となる可能性 ‐

【鉱工業生産は4月まで着実に上昇を続けている】
2月の鉱工業生産は、通産省公表のX-11による季節調整指数でみると、うるう月の影響で+3.0%と大幅に上昇したが、その反動が出て、予測指数は3月−2.3%、4月0.0%とやや停滞する(図表1参照)。それでも1〜3月の平均は前期比+2.2%の大幅上昇となる。
しかし、これは実勢を現していない。うるう月や曜日構成の影響を除去できるX−12ARIMAで季節調整してみると、2月は逆に−0.5%の減少となり、3月の予測は+0.1%、4月の予測は+2.8%と連続して上昇する。従ってX-12ARIMAで見た生産の実勢は、通産省公表の季節調整指数(図表1参照)のように3月、4月に停滞するのではなく、1〜3月平均で前期比+1.2%となったあと、4月にはこの1〜3月平均に比して更に+2.7%の上昇となる。
鉱工業生産の着実な回復は続いている。


【1〜3月は可処分所得と個人消費は共に回復】

年明け後の需要項目は、昨年10〜12月期の特殊事情による減少(このホームページの「What's New!」欄"昨年10〜12月期のGDP統計の読み方"(2000.3.13)を参照せよ)の反動で、一斉に回復している。
まず全世帯の消費水準指数は、季節調整済み前月比で1月+2.1%、2月+0.2%と連続で増加し、前年比でみても2月は+1.0%と水面上に顔を出した(図表2参照)。3月まで発表されている乗用車新車登録台数をみると、1〜3月平均は季節調整済み前期比+8.9%、前年比+2.5%と大きく回復している。
背後の所得動向をみても、勤労者家計の実質可処分所得は季節調済整前月比で1月+4.6%、2月+0.5%と回復している。また労働省の実質賃金指数の前年比は、10〜12月−0.1%のあと、1月は+2.5%、2月は+2.4%とプラスに転じている。
個人消費は所得の裏付けを得て緩やかに回復している。


【設備投資は10〜12月に続き1〜3月も増勢持続か】

10〜12月期にGDP統計で回復に転じた設備投資は、1〜3月期も順調に伸び続けているようだ。一般資本財出荷の前年比は、10〜12月期に+0.7%と水面上に顔を出したあと、1月+7.1%、2月+8.7%と大きく伸びている(図表2参照)。季節調整指数でみると、1〜2月の平均は10〜12月平均比+7.6%となっている。
また先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)も、10〜12月に前年比+6.1%と水面上に出たあと、1月+21.2%、2月+12.8%と伸びを高めている。季調済前期比では、昨年7〜9月期から本年1〜3月期まで3四半期連続で増加すると見られる。これを6〜9ヶ月の先行指数とみると、設備投資は本年7〜9月期ないし10〜12月期までの増勢持続が見えてきたことになる。
事実、3月調査の「日銀短観」では、製造業と金融業の2000年度設備投資計画がプラスに転じており、小幅のマイナスとなっている非製造業もやがて上方修正されてプラスに転じるのではないかとみられる(このホームページの「What's New!」欄"日銀短観(3月調査)は2000年度の回復を鮮明に裏付けた"(2000.4.3)参照)。


【純輸出も1〜3月はプラスに転じるか】

上記の一般資本財出荷の8%に達する伸びの中には、輸出の回復も含まれていると見られる。
昨年10〜12月期のGDP統計では、純輸出が輸入の一時的増加の影響で減少したが、その反動もあって、1月と2月の輸入数量指数は前年比で夫々+9.1%、+7.2%と昨年11月の+19.9%、12月の+20.9%に比して伸び率は大きく落ちた。
反面、輸出数量指数の前年比は、昨年11月+10.9%、12月+10.0%のあと、本年1月は+6.9%と低かったが、2月は+19.8%と大きく伸びた。
GDP統計の純輸出は、本年1〜3月期はプラスになるのではないか。


【公共投資と住宅投資も1〜3月は立直りの気配】

最後に公共投資と住宅投資の動向をみると、両者とも昨年10〜12月に比べれば持直しそうである。
まず公共工事請負額は、10〜12月に前年比−12.7%と落込んだあと、1月は−6.1%、2月は−1.4%とマイナス幅を縮めている。99年度当初予算の公共事業予備費と、第2次補正予算が執行され始めたからである。
新設住宅着工戸数の前年比も、10〜12月の+2.2%のあと、1月は+16.8%、2月は+4.1%となった(図表2参照)。1〜2月の季調済み着工戸数は年率128.2万戸で、10〜12月平均比+9.8%である。


【1〜3月は大幅なプラス成長となるが雇用は厳しい】

以上のように本年1〜3月期のGDP需要項目は一斉にプラスに転じる可能性があるので、1〜3月期はかなり大幅なプラス成長になったのではないか。もしその成長率が前期比+2.0%に達すれば99年度の平均成長率は政府実績見込み通りの0.6%になる(図表3参照)。
しかし重要なことは、数値よりも、このプラス成長の持続性である。少なくとも鉱工業生産は、4〜6月期もプラスを続けそうである。
また3月調査の「日銀短観」によると、2000年度はすべての企業規模の製造業と非製造業で増収増益に転じる。
一つだけ不安要因が残っているのは、失業率が2月に4.9%に達したことだ(図表2参照)。このあと新卒者の就職未定者が加わると、失業率はもっと上がるかもしれない。 しかし、そのことは逆からみると、企業の雇用態度が極めて慎重であり、労働分配率の低下、資本分配率の上昇という形で大幅な増益が始まっていることを意味する。株価が2万1千円台に迫っているのも、こうした企業経営の態度を好感しているのであろう。