1998年12月版

‐ 景気に下げ止まり気配はあるが底入れではない ‐

【4四半期連続のマイナス成長で3.6%落込み】
98年7〜9月期の実質成長率はマイナス2.6%(年率)と予想通りのマイナス成長となった。これで97年10〜12月期から4四半期連続のマイナス成長となり、前年同期比ではマイナス3.6%に達した。この1年間の3.6%の落込みに最も大きく寄与したのは、図表1に明らかなように、民間設備投資の急落である。民間設備投資は1年間に14.4%も下落し、それだけでGDPを2.6%押し下げた。つまりGDPのマイナス3.6%のうちの72%は、設備投資のマイナスによる。公共投資は、図表1に明らかなように、96年4〜6月期をピークに下落を続けていたが、98年度第1次補正予算による公共投資追加の効果がようやく出て、98年7〜9月期はプラス0.3%となった。しかし、これ迄の落込み幅が大きかったので、前年同期比ではまだマイナス4.2%であり、この1年間のGDPの落込み3.6%に対する寄与度はマイナス0.3%(寄与率8.3%)である。


【民間需要の下落が公共投資と純輸出の増加を大きく上回る】

図表2に示したように、公共工事請負額の前年比は、7〜9月期のプラス4.9%のあと、10月はプラス22.6%と大きく伸びているので、10〜12月期にはかなりの伸びとなるであろう。
もう一つのプラス要因は、図表1に明らかなように純輸出である。GDPが3.6%も落込んだこの1年間に、唯一GDPの押し上げ要因となったのが、純輸出の寄与度プラス0.8%である。逆に言えば、国内需要だけではGDPは4.4%(3.6%+0.8%)も落ちていたことになる。純輸出は、10〜12月期の成長に対しても、プラスに寄与するであろう。
そこで問題は、公共投資と純輸出の伸びによって、4四半期続いたマイナス成長が、10〜12月期にはプラス成長に転じるかどうかである。これはかなり難しい。何故なら、7〜9月期の国内民間需要のGDPに対する寄与度は、マイナス1.2%に達しているので、これを完全に相殺してプラス成長となるためには、公共投資と純輸出の両方が現在の2倍以上の伸びを示さなければならない。図表1で過去の公共投資と純輸出の伸びをみると、これはなかなか難しい注文であることが分かる。


【消費と住宅投資に下げ止まりの兆なし】

従って、プラス成長に転換するためには、どうしても民間需要が下げ止まって来なければならない。しかし残念ながら、図表2の10月までの指標を見る限り、その兆はない。
10月の全国百貨店・スーパーの売上高や乗用車新車登録台数の前年比マイナス幅は、夫々マイナス4.8%、マイナス3.9%と7〜9月期(マイナス4.7%、マイナス3.8%)と同じ程度であり、個人消費に下げ止まりの兆は見られない。また10月の新設住宅着工戸数も、前年比マイナス12.9%と7〜9月期(マイナス12.2%)よりやや悪化している。更に設備投資の先行きを示す機械受注は、図表2のように4〜6月も7〜9月も、前年比二割も落ちている。
僅かに最悪期を脱したと見られる指標は、図表2の所定外労働時間で、4〜6月期のマイナス9.3%をボトムとして10月にはマイナス7%まで下落幅を縮小している。これに伴なう時間外手当下げ止まり傾向の影響で、実質賃金の方も、図表2に見られように、10月はマイナス0.3%まで下落幅が縮小した。


【9月と10月の景気動向指数回復は一時的】

これは図表3に見られるように、6月頃から生産が弱含み底這い傾向に変わってきたからである。1〜3月マイナス1.3%、4〜6月マイナス5.1%と急落してきた鉱工業生産は、7〜9月プラス・マイナス0%と下げ止まったあと、10月の実績と11月、12月の予測で試算すると、10〜12月は再びマイナス0.3%と弱含みの底這い傾向である。
9月と10月に景気動向指数(一致系列)が14ヶ月振りに50%ラインを超えたのも、底這い傾向の中でたまたま9月と10月の生産関連指標が3ヶ月前の6月と7月よりも高かったためである。しかし図表3を見れば明らかなように、11月と12月の生産予測指数は再び3ヶ月前の8月と9月と同水準ないしは下回っている。景気動向指数は再び50%ラインを割るのではないか。
実はこれには、統計のイタズラも響いているのである。9月と10月は、たまたま日曜日が4回しかなく、稼働日数が多いので、指標はいずれも実勢以上に大き目に出ている。その反動は、必ず11月と12月に出る。


【底入れの兆ではなく下げ止まり気配】

しかし、それにしても、生産指数が下げ止まり傾向を示し、つれて時間外労働内時間や賃金も下げ止まって来たというのは、一つの変兆ではある。これは生産調整が進んで在庫水準が減り始めたためである。在庫指数の前年比は9月マイナス2.1%、10月マイナス3.1%とようやく前年水準を下回った。ただ、図表3に明らかなように、在庫率は僅かに下がったとはいえまだ高いので、生産調整は当分続くであろう。
ここから先は出荷次第であり、出荷の背後にある総需要の動向次第である。先に述べたように、公共投資と純輸出によって、民間需要のマイナスをどこ迄相殺できるかで決まる。マイナス幅が縮むのは確かであるが、プラスに転じるには力不足ではないか。その意味で、一部にある「底入れ」説は時期尚早である。「底入れ」ではなく、「下げ止まり気配」であろう。
この「下げ止まり気配」を「底入れ」に変え、更にプラス成長に転換するには、公共投資と純輸出だけでは力不足で、個人消費や設備投資をプラスに転じる必要がある。
自・自協議で自由党が提案している消費税の一時凍結と再引上げ、設備投資の課税所得控除や加速度償却など「異時点間代替(inter-temporal substitution)」を誘う大胆な政策減税が実施されれば、景気は明年上期にはプラス成長に転じるであろう。(このホームページのWhat's New 欄、「自・自政策責任者協議のポイント」(98.12.7)参照。