1998年2月版
【10〜12月は一段と深刻な不況に】
昨年10〜12月期の主要景気指標は、12月の家計統計を除いて、ほぼ出揃ったが、7〜9月期に比べて一段と景気後退の様相が強まっている。
生産・出荷の減少傾向は加速し、在庫率は更に上昇した(図表1)。完全失業率は3.46%と既往ピーク(96年4〜6月)と同水準にまで上昇し、実質賃金の前年比は△1.3%とマイナス幅を拡大した。このため、百貨店・スーパーの売上高は△3.2%、乗用車新車登録台数は△12.3%、新設住宅は△22.6%と、個人消費関連指標は軒並み前年比マイナス幅を拡大し、住宅投資関連指標も低迷している(図表2)。
また機械受注(民需、除く船舶・電力)の前年比は△13.4%と遂にマイナスに転じ(図表2)、資本財(除く輸送機械)の出荷も△2.0%となるなど、設備投資の先行指標と一致指標は共に減少に転じた。
公共工事請負額も△9.1%と前年比マイナス幅を拡大し、公共投資削減の影響が強く出ている(図表2)。
従って10〜12月期の内需は全体としてマイナスであろう。経常黒字拡大を反映して外需が大きく伸びない限り、10〜12月期はマイナス成長の可能性がある。
【自律的後退メカニズムが始動】
このように景気後退が加速してきたのは、9兆円の国民負担増加と3兆円の公共投資削減という本年度超デフレ予算の影響で始まった政策不況が、雇用・賃金の悪化で消費と住宅投資を一段と弱め、それが遂に設備投資も反転下落に導くという形で、典型的な自律的景気後退を始動させたからである。
また、都銀の一角である北海道拓殖銀行や四大証券の1つである山一證券の破綻などで金融不安が更に高まり、株価、地価が再び下落したことも、心理面や逆資産効果を通じて、消費マインドと投資マインドを冷やしている。
【設備投資の減勢で景気は当分後退局面】
本年1〜3月については、1月と2月の生産予測指数に回復の気配が見られるが、これは1月の休日数がたまたま少なかった為である。休日数まで調整するX12arimaで季節調整すると、図表1の通り、引続き低迷している。在庫率の高水準から判断しても、また減産強化の情勢(例えば2月以降の自動車)から判断しても、1〜3月の生産は落ち続けるであろう。
また先週発表された「法人企業動向調査」によると、業界の景気見通しBSI(「上昇」と見る企業の割合から「下落」と見る企業の割合を差し引いた数)は、全産業で昨年7〜9月が1、10〜12月(実績見込み)には△3.9%と減少に転じ、本年1〜3月は△20.0%と急速に悪化している。
これを反映して、同じ「調査」の設備投資動向は、季調済前期比で、昨年7〜9月(実績)の1.4%から10〜12月(実績見込み)には△3.9%と減少に転じ、本年1〜3月と4〜6月の計画は△2.2%、△3.7%と減勢を続ける。
これまでかろうじて景気を支えてきた設備投資が減少傾向に転じたことによって、この景気後退は本格化することになろう。
たとえ景気対策の抜本的な転換があり(橋本内閣ではできそうにないが)、株価が回復に転じたとしても、一度始まった自立的景気後退の動きは秋口まで続くのではないだろうか。