1998年1月版
【弱基調強まる10〜12月期】
年末・年始に発表された経済諸指標は、日本経済の景気後退を裏付けるものばかりで、昨年11月、12月の「月例景気見通し」の基調判断を変更する材料は見当たらない。どちらかといえば、基調は一段と弱まっている。
全国百貨店・スーパーの売上高や新車登録台数の前年比マイナス幅は、10月、11月と月を追って拡大しており、個人消費が一段と減退していることを示している。(図表1参照)
また新設住宅着工戸数の前年比マイナス幅も、10月と11月は7〜9月(−22.7%)よりも更に拡大している(同)。これは生産減少をを反映した時間外労働の減少や収益鈍化を反映したボーナスの減少などから賃金の前年比が11月にはマイナスに転じ、また雇用の伸びも鈍化しているため、個人所得全体の伸びが止まっているからである。現に実質賃金の前年比マイナス幅は11月に拡大しており(同)、9兆円の国民負担増加、生産の減少、ボーナスの減少などから、個人消費や住宅投資の原資となる所得が悪化していることを示している。これは景気の自律的後退のメカニズムである。公共投資の前年比マイナス幅は、7〜9月に縮小したが、先行指標である公共投資請負額の前年比は、10月、11月と再びマイナス幅を拡大している。公共投資は引き続き減少している(同)。
【通産省の季節調整は旧式で役に立たず】
このような個人消費、住宅投資、公共投資の落ち込みに加え、これまで景気を支えてきた設備投資と純輸出も頭打ち傾向となってきた。(図表2参照)
特に設備投資の先行指標である機械受注(民需、除く船舶・電力)は、10月に前年比−14.3%となった。(図表1参照)
この大幅なマイナスは一時的であろうが、6〜9ヶ月先の設備投資がマイナスに転じる可能性が出てきたことは確かであろう。以上のような総需要の悪化を背景に、過剰在庫減らしの生産調整が進行しており、10月の生産は前年比−4.1%の大幅な減少となった。しかし在庫と在庫率は逆に上昇し、在庫調整の進捗は遅々としている。(図表3参照)
この中で1つ疑問の多い指標が発表になった。それは12月と1月の生産予測指数が+1.4%、+4.2%と2ヶ月連続して急増することである。(図表3参照)
これは@予測指数の季節調整は便宜上実績指数の季節指数を使っているため、不正確であること、A通産省の季節調整(MITI法)が旧式で休日の数を調整していないため、例年より休日が少ない去年の12月と今年の1月の生産が大き目に出ていること、などによるものである。
ちなみに、休日数も考慮に入れたX12ARIMA法によって12月と1月を季節調整すると、12月−1.2%、1月+3.4%となり、2ヶ月累計でMITI法よりも3.4%も低くなる。従って、1〜3月の生産動向を通産省発表の1月予測指数から判断するのは差し控えた方がよい。1月の実績や2月、3月の予測指数の発表を待ちたい。
【1〜3月の金融不安懸念】
1〜3月の動向で一番心配なことは、年度末を控え、資金繰りがつかなくなった企業の倒産や金融機関の破綻が増えることである。年末を越えるために振り出された3ヶ月物のCPや現先取引の期日が2月から3月始めに到来する。97年度決算の悪化が市場に伝えられ、借り換えの出来なくなる企業や金融機関が、ゼネコン、商社、銀行、信金、証券会社などの一部に出るのではないか。
そのような個別的な経営破綻が、金融システム全体の動揺に至らないように、万全を期さなければならない。しかし、景気に対しては、株価など各種資産価格の下落や心理面から悪影響が及ぶことは避けられないであろう。