1997年9月版
日本経済は軽い在庫調整局面に入っている。4月以降出荷が減少傾向にあり、自動車、エアコン、冷蔵庫などを中心に、在庫率が急上昇しているためだ。(図表1参照)在庫を減らすため、鉱工業生産は少なくとも11月頃までは増加しないだろう。
4月以降の出荷減少は、政府が言うような消費税引上げ前の買い急ぎの反動といった一時的な要因ではない。9兆円(国民所得の2.3%)の国民負担増加と公共投資の減少を含む97年度のデフレ予算によって、個人消費、住宅投資、公共投資が弱いためである。(図表2参照)
今景気を支えているのは、純輸出と設備投資の2つであるが、純輸出増加に伴う経常黒字の拡大(図表3参照)に対しては、秋以降米国政府の抗議が一段と強まり、急激な円高が起きるリスクが高まっている。そうなれば、設備投資の伸び率も鈍化し、来年度は頭打ちになる可能性がある。この場合には、現在の軽い在庫調整に続いて、明年の景気は頭打ちとなる。
株価が日経平均で18千円前後に下がり、国債指標利回りでみた長期金利が2%割れとなっているのは、このような先行き観を反映した動きである。
景気がこのように弱い中で、政府は「財政構造改革法案」(臨時国会に提出予定)に基づく支出抑制型の98年度予算を編成することになる。そうなると、98年度の経済予測は決定的に悪化し、株価の一層の下落や金融危機が起こりかねない。
新進党の主張する法人税減税(実効税率を50%→40%へ、4兆円)や所得減税(最低2兆円)を来年度に実施することになれば、先行き観は好転して株価や長期金利も上昇に転じ、明年の景気停滞シナリオは消える。
果して、政府・与党はどう出るであろうか?