6月調査「日銀短観」は超金融緩和の修正を迫る内容(2023.7.3)
【超低金利修正を後押しする経済指標の公表】
本日(7月3日)公表された6月調査「日銀短観」は、日本の景気回復が確りしてきたことを裏付けるもので、現在のマイナス短期金利とゼロ長期金利を正常なプラス領域の金利水準に引き上げても、23年下期以降の経済回復を下振れさせ、物価上昇率を2%以下に下げるリスクは大きくないと判断するのに十分な指標であると言えよう。
逆に言えば、現在の超低金利を23年下期も続けた場合、明年にかけてインフレ率が2%を上回る水準で持続するリスクが高いと判断するのに十分な指標であるとも言えよう。
【「業況判断DI」は一斉に好転】
具体的に「短観」の内容を見ると、「業況判断DI」は、比較的低かった製造業で大企業・中堅企業・中小企業のすべての企業規模で、現状判断と先行き判断が、すべて好転している。また既に大きく水準を高めていた非製造業では、大・中堅・中小のすべての企業規模で現状は更に大きく好転した後、先行きは高水準で頭打ちとなっている。その結果、企業の業況は、製造業・非製造業、大・中堅・中小企業を問わず、総じて過去の景気上昇期の水準に回復したと言えよう。
その結果、23年度の売上高経常利益率の見込みは、各規模企業の製造業・非製造業の合計で、いずれも景気上昇期の13~19年度の水準を上回っている。
【23年度の設備投資計画は前年を上回る高い伸び】
特に注目されるのは、23年度の設備投資計画の強さである。
本年度の製造業・非製造業・金融機関の各規模企業の設備投資計画合計(ソフトウェア・研究開発投資を含み、土地投資を除く)は、前年比+12.3%増と前年度の実績(同+7.6%増)を大きく上回っている。このうち、製造業・非製造業のソフトウェア投資額は、前年比+14.6%増と22年度の同+11.5%増を更に上回っており、DX、GXを始めとする合理化、生産性向上意欲の強さが窺われる。
【企業は1年後も物価上昇率が2%を下回らないと見る】
以上のような景気回復意欲の立ち直りの強さの中で、企業自身は今度の物価動向をどのように見ているであろうか。
製造行・非製造業を合計した大・中堅・中小企業の総計では、1年後の自分の企業の販売価格は、現在よりも3.0%上昇すると考えている。
また、1年度の物価全般の見通しは、前年比+2.6%上昇すると見ている。これは日銀の物価目標である「2%」よりも高い。
企業の見通しであるが、1年後の24年度に入っても、物価上昇が物価目標の2%を下回らないと見ていることを、日銀はどう考えるのであろうか。