9月調査「日銀短観」のポイント(H28.10.3)
―売上高、設備投資は緩やかに立ち直るが、輸出中心に収益の回復は遅れ、他方で人手不足は一段と深刻化

【業況は横這い圏内ながら中堅・中小企業中心に僅かに好転】
 本日(10/3)公表された9月調査「日銀短観」のポイントは、以下の通り。
 まず「業況判断」DIは、中堅企業、中小企業の製造業、非製造業の四つのセクターで、いずれも前月6月調査より、小幅ながら好転した。このため、大企業製造業は横這い、同非製造業は小幅悪化したにも拘らず、全規模全産業では前回の「良い」超4%ポイントから今回は「良い」超5%ポイントに僅かに好転した。
 7~9月期の業況は、横這い圏内ながら、中堅・中小企業中心に僅かに好転したと判断される。

【売上高は国内需要中心に緩やかに回復する見通し】
 売上高は、全規模全産業で、15年度下期の前年比-2.5%をボトムとして、16年度上期は同-2.2%、下期は同+0.4%と緩やかに回復する計画である。
 回復は国内需要にリードされる見通しで、大企業製造業の輸出は、15年度下期の前年比-5.5%のあと、16年度上期も同-5.8%と僅かに悪化し、下期に同-1.4%と減少幅が縮小する見通しである。

【円高と世界経済回復の鈍化に伴う輸出採算の悪化から売上高経常利益率は16年度下期まで悪化の見通し】
 経常利益の回復は、輸出の回復と同様に遅れる見通しで、全規模全産業ベースで15年度下期に前年比-5.4%となったあと、16年度下期には同-13.9%と落ち込み、下期になって同-1.7%と前年の水準をやや下回る水準まで戻る見通しである。輸出依存度の高い大企業製造業の経常利益が、円高と世界経済の回復鈍化の影響から下振れしていることが大きく響いている。
 このため、売上高経常利益率は、全規模全産業のベースで、15年度上期の5.30%をピークに、16年度下期の4.44%まで下がり続ける見通しである。

【本年度の設備投資計画の増加率は前年の伸びを僅かに上回る】
 全規模全産業に金融機関を加えた16年度の設備投資計画(ソフトウェア投資を含み土地投資を除く)は、前回6月調査に比して0.4%ポイント上方修正され、前年度比+5.2%となった。これは前年度の実績(同+4.3%)をやや上回る伸びである。
「生産・営業用設備判断」DIの先行きは、大企業で+1%ポイントとわずかに「過剰」超となっているが、中堅企業と中小企業では-0.1%と-0.3%ポイントの夫々「不足」超となってきた。また、全規模全産業ベースで見ると、現状は0%であるが、先行きは-2%ポイントの「不足」超である。この「不足」超の拡大傾向が、今後の設備投資計画にどう響いてくるかが注目される。

【人手不足は中堅・中小の非製造業を中心に一段と深刻】
 「雇用人員判断」DIの「不足」超幅は、大・中堅・中小の各規模企業の製造業と非製造業で、いずれも拡大している。
 全規模全産業ベースで見ると、現状は「不足」超-19%ポイント、先行き-22%ポイントであるが、業種別には、非製造業が現状-25%、先行き-29%と特に人手不足が厳しい。
 企業規模別にも、大企業が現状-12%ポイント、先行き-13%ポイントであるのに対し、中堅企業と中小企業は、現状は共に-20%ポイント、先行きは夫々-22%ポイント、-25%ポイントと人手不足が厳しくなる見通しである。