野党はもっと確りアベノミクスを批判せよ(H26.11.26)


【難問山積の明年通常国会で支持率が下がらぬうちの「勝ち逃げ」解散】
 衆議院が11月20日に解散され、12月2日公示、14日投開票で総選挙が行われる。
 私は当初、この解散を「勝ち逃げ」解散と名付けるのが良いと思った。理由は次の通りだ。
 第2次安倍内閣発足後、2人の女性閣僚の辞任というつまずきはあったものの、依然として安倍内閣の支持率は不支持率を上回り、政権発足後2年を経た時点の支持率としては、多くの歴代内閣よりは高い。
 しかし、来年の通常国会では、集団的自衛権に関連した防衛関係法案や機密保護関係の法案、沖縄の基地移転、原発再稼働、統一地方選などがあって野党の攻勢が強まり、国会が大いに荒れ、内閣の支持率が下がり、総選挙に不利な情勢になっていく恐れがある。
 野党の選挙態勢が整っていないこともあり、支持率が下がらない今のうちに、解散、総選挙を打てば、確実に与党が勝利、絶対多数を維持する可能性が高いと考えたようだ。
 これは、リャンチャン(2ラウンド)の約束で始めた麻雀で、最初のイーチャン(1ラウンド)で大勝した人が、リャンチャン(2ラウンド)目をやらないで終わりにしようと言い出す「勝ち逃げ」に似ている。

【大義なき解散の大義探し】
 まさに与党の党利党略による大義のない解散である。
 しかし、憲法が内閣に解散権を与えている以上、与党の都合が良い時に内閣が解散権を行使するのは当たり前のことで、それが政治である。大義がないということは、野党の批判としては当たっているが、だから一般論として、この解散がおかしいとは言えない。
 さはさりながら、安倍首相としては、野党の批判に応えて大義を探さなければならない。最初に言い出したのは、「明年10月の消費税率引き上げ(8→10%)を1年半延期したことについて、国民に信を問う」という理屈だ。確かに前回の総選挙では、明年10月に消費増税を行うと言って支持されたのだから、その変更は選挙のやり直しに値するようにも見える。
 しかし、法律の付則には、経済情勢による見直し条項が入っているので、消費増税の延期は選挙公約変更ではない。第一、どの野党も消費増税延期に反対していないのであるから、選挙の争点にはなり得ない。

【アベノミクスを審判する選挙】
 そこで安倍首相は、もう一つの大義を言い出した。「安倍政権2年間の実績、とくにアベノミクスの成果について、国民の信を問う」というのである。これなら争点になる。結局今回の総選挙は、「アベノミクス審判選挙」となるであろう。
 選挙公約を見ると、野党のアベノミクスに対する態度は、大きく二つに割れている。
 一つは、アベノミクスを全部否定するもので、民主党、生活の党、共産党、社民党などがそうである。
 もう一つはアベノミクスのうちの第3の矢、成長戦略の規制緩和や行政改革が不充分である点を批判し、もっとやるべきだと主張する。維新の党や次世代の党がそうである。

【アベノミクス批判の仕方が大切】
 私は、改革を志向している民主党や生活の党は、全否定をするのではなく、維新の党のように第3の矢が口先だけで実効を伴っていない点を強く批判すべきではないかと考えている。
 第2の矢、大胆な金融緩和については、10月31日に打ち出した「量的・質的金融緩和」の拡大(QQE2)は、将来の「出口政策」のリスク(長期金利上昇に伴う金融システム不安、円の信認動揺、財政ファイナンスの行き過ぎのトガ等)を考えると、やり過ぎではないかと見ている。既にデフレを脱却しているのであるから、これ程のリスクを犯してまで、来年中の2%インフレの実現にこだわる必要はないのではないかと思う。野党も、金融緩和を全否定するのではなく、その行き過ぎを批判した方が国民の理解を得やすいのではないか。
 第2の矢、財政出動は初年度の13年度に実行しただけだ。14年度以降は前年度補正予算と本年度当初予算の合計ベースで支出規模は縮小し、更に消費増税まで行ったので、逆噴射となり、14年4~6月期、7~9月期と2四半期連続のマイナス成長を招いた。国民の実質賃金、実質消費は減少し、国民生活は圧迫されている。財政再建の近道は、消費増税ではなく、経済の持続的成長を実現することだと、野党はもっと声を大にして国民に訴えたらどうだろうか。
 野党がアベノミクスをもう少し確り批判できれば、この解散は「勝ち逃げ」解散とはならず、「経済失政隠し失敗」解散となり、与野党の議席差を今言われているよりも大きく縮める選挙になり得るのだが・・・。