問題は家計消費、設備投資、輸出が弱いこと(H26.11.17)

―7~9月期GDP統計の見どころ


【在庫投資の変動だけで、成長率は年率7.4%も振れた】
 本日(11/17)、本年7~9月期のGDP統計が公表され、7~9月期の実質成長率は前期比-0.4%(年率-1.6%)のマイナス成長となった。民間研究所でマイナス成長の予測がなかっただけに、やや意外性があるが、このHPの<月例景気見通し>(2014年11月版)で予測したように、7~9月期には過剰在庫を減らす生産調整が進んでいたので、在庫投資の減少が大きければあり得ることであった。
 4~6月期は在庫投資(過剰在庫の積み上がり)の増加だけで、成長率は+1.2%(年率+4.8%)押し上げられていたが、7~9月期はその反動で在庫減らしが進み、在庫投資の成長率への寄与度は-0.6%(年率-2.6%)に縮小した。この在庫投資の変動だけで、成長率は1.8%(年率7.4%)も振れたのである。

【在庫投資を除いても、国内最終需要と純輸出は弱い】
 この在庫投資の振れを除くと、下表の通り、成長率(年率)は4~6月期の-12.1%の大幅マイナスから7~9月期は+1.0%の微増となった。
 +1.0%の内訳は、国内最終需要で+0.7%、純輸出で+0.3%である。
 問題とすべきは、この国内最終需要と純輸出の成長寄与度が低いことで、ここに景気の実態の弱さが表れている。


【問題は家計消費と設備投資が弱いこと】
 国内最終需要が年率+0.7%の成長寄与度にとどまった主因は、家計消費の成長寄与度が年率で僅か+0.8%増にとどまり、設備投資が微減したことである。消費の弱さは、言うまでもなく消費増税に伴う消費者物価の上昇率が、名目家計所得の伸びを上回っているためである。設備投資の弱さは、企業の先行き感の弱さを反映している。
 純輸出の成長寄与度が年率で僅か+0.3%にとどまっているのは、円安にも拘らず、生産拠点の海外移転もあって、輸出数量が伸びていないからである。

【消費増税延期と並んで有効な成長戦略を実施できるか】
 安倍政権は、来年10月の消費税率引き上げ(8%から10%へ)を延期する以外に、選択肢が無くなったと見るべきであろう。
 その上で、実効のある成長戦略の実施によって、企業の先行き感を好転させ、来年の設備投資とベース・アップの積極化を促すことが出来れば、道は開けるが、どうなるであろうか。