3月調査「日銀短観」に見る消費増税後の日本経済の姿(H26.4.1)

―前回(97/4)との比較もまじえて


【消費増税前の業況は今回の方が前回よりも遥かによい】
 消費税率が5%から8%へ引き上げられた4月1日(火)に、消費増税後の日本経済を企業がどう見ているかを示す貴重な資料が公表された。3月調査「日銀短観」である。前回消費増税が実施された97年4月に公表された(97年)3月調査「日銀短観」との比較をまじえ、今回「短観」のメッセージを見て行こう。
 まず消費増税直前の企業の業況判断(3月調査の「最近」)を見ると、今回の各規模企業の製造業と非製造業の「業況判断」DIは、いずれも「良い」超となっており、とくに大企業製造業の「良い」超は17に達しているのに対して、前回は大企業製造業の「良い」超は今回よりも低い12にとどまり、しかもこれを除くと、各規模製造業はいずれも「悪い」超であった。
 従って、消費増税前の企業の業況は、今回の方が格段に良いことが分かる(以下、次表参照)。


【先行きの需給判断は、今回の方が国内で早くから悪化、今回は海外で僅かに好転】
 次に、増税時点における「先行き」の予測を見ると、上記の表のように今回は10%ポイント前後の悪化を見込んでいるのに対し、前回は大幅な悪化が始まったのは半年後の9月調査からで、消費増税の影響を始めは比較的楽観していたことを示している。
 これに対して、今回は企業が消費増税の悪影響に対する警戒感が強く、先行き、とくに増税直後の上期を慎重に見ていることが分かる。
 これを裏付けるように、今回の「製商品・サービス需給判断」DIの「国内」は、先行き5~8%ポイントの悪化と予測されている。
 ただ、注目すべきは、先行きの「海外」の需給判断は、大企業で好転、中小企業で不変となっていることである(以上、下表参照)。


【14年度は増収率が大幅に低下し上期を中心に減益に転じる計画】
 次に売上高の計画を見ると、下表のように14年度は各規模製造業・非製造業ともに前年度よりも増収率が大きく低下し、とくに中小企業非製造業は-0.9%の減収(前年度は+4.1%の増収)と見ている。消費増税のインパクトを大きく見ているためであろう。
 他方、14年度の経常利益は、消費増税のインパクトが大きい上期が大幅な減益となるため、年度全体でも前年度の大幅増益から一転して減益の見通しとなっている(例外は中小企業製造業の小幅増益、下表参照)。前回の97年度は、97年度下期から減益に転じていることから判断すると、やや慎重に過ぎる見通しのようにも見える。もっとも、今回は、14年度下期から増益に戻る見通しであることを見ると、消費増税のインパクトは、上期中心の一過性の動きと見ているのかも知れない。
 増収率の低下や減益転落の幅は、今回14年度の方が、前回97年度よりもかなり小幅である(下表参照)。

【非製造業と中小企業製造業の本年度設備投資計画はマイナス】
 14年度の設備投資計画(土地投資額を除きソフトウェアを含む)は、全規模の製造業・非製造業・金融機関の総計で、前年比-0.4%と前年度のかなりの増加(同+6.2%)から一転して頭打ちとなっている。これは、中小企業の年度計画が未定である向きが多く、例年3月調査では大幅なマイナスになるためであるが、今回のマイナス幅(前年比-24.7%)は12年3月や13年3月の年度計画に比べても、大きい。消費増税後の経済見通しが不透明なためであろう。
 これに対し、大企業と中堅企業の製造業では、本年度の計画が前年比それぞれ+3.9%、+10.0%と前年度の伸び(+2.8%、-0.8%)を大きく上回っている。しかし非製造業では、本年度の伸びが前年度よりも低い(下表参照)。
 国内需要への依存度が高い非製造業や中小企業製造業は、消費増税後の需要動向を慎重に見ているため、本年度の設備投資計画を現段階では抑え気味にしていると見られる。


【設備と人員の過不足判断の好転傾向は先行き足踏み】
 企業の「生産・営業用設備判断」DIを全規模全産業ベースで見ると、前回12月調査の「過剰」超2に比べて「過剰」超幅は製造業を中心に縮小して今回調査ではゼロとなった。先行きは消費増税のインパクトを受けてほぼ横這いとなり、全体では僅かに-1の「不足」超に転じる(下表参照)。
 「雇用人員判断」DIは、全規模全産業ベースで前回調査の-10の「不足」超から、今回は-12とやや「不足」超幅を拡大したが、先行きは-11と再びやや縮小する見通しである。
 総じて設備と人員の判断は、極めて緩やかに好転してきたが、ここへ来てやや足踏み気味である。


【消費増税のインパクトは上期を中心とする一過性か下期まで尾を引くか、企業の判断は割れている】
 以上を総括すると、消費増税のマイナス・インパクトについて、企業は前回(97年4月)よりも警戒的で、上期を中心に早めに出てくると慎重な見方をしているが、現時点の業況が前回よりも格段に良いこともあって、増税の影響は一過性で下期には再び前年比増益に転じると見ている。
 もっとも、企業規模別、業種別に見ると、海外需要にも依存する大企業と中堅企業の製造業が先行きについて比較的楽観的であるのに対し、中小企業製造業と各規模非製造業は、消費増税のインパクトを受ける国内需要に依存しているだけに先行きを慎重に見ている。
 果たして消費増税のインパクトが、増税前の駆け込み需要とその反動という一過性の動きで終わるのか、それとも本年度下期の消費、住宅投資、公共投資の減少という形で内需停滞が尾を引くのかは、ベース・アップ、海外景気、予算執行のテンポなど今後の動きを見なければ、判断は出来ない。