10~12月期の成長率は公共投資の減速(「財政の崖」か?)から前期並みにとどまる(H26.2.17)
―10~12月期GDP(1次速報値)の特色
【10~12月期の成長率は前期並みの低成長】
昨年10~12月期の成長率は、家計消費と設備投資の立ち直りから前期(7~9月期)を上回ると予測していたが(このHPの<月例景気見通し>2014年2月版参照)、本日(2/17)公表された10~12月期GDP(1次速報値)によると、成長率は前期比+0.3%(年率+1.0%)と前期(同+0.3%、年率+1.1%)並みにとどまった。
【民間需要の伸びは前期を大きく上回った】
家計消費は前期比+0.5%増(前期は同+0.2%増)、設備投資は同+1.3%増(前期は同+0.2%増)、住宅投資は同+4.2%増(前期は同+3.3%増)、といずれも予測通り前期を上回る伸びを示し、その結果民間需要は全体として同+0.8%増(年率同+3.0%増、成長率に対する寄与度+2.3%増)と前期の同+0.5%増(年率同+2.0%、寄与度+1.5%を、大きく上回った。
【公共投資の伸びが大きく減速し、国内需要全体の成長寄与度は前期並みにとどまる】
しかし、公共投資の伸びが前期比+2.3%増(年率+9.3%、寄与度+0.5%増)と前期の同+7.2%増(年率+31.9%、寄与度+1.4%増)を大きく下回ったため、民間と公共を合計した国内需要全体としては、前期比+0.8%増(年率+3.2%増)とほぼ前期の同+0.8%増(年率+3.1%増)に等しくなってしまった。
このような公共投資の鈍化は、多くの民間調査機関も予測していなかった。13兆円の12年度補正予算の執行が峠を越えつつある上、人手不足や資材高騰に伴う入札不調などで予算執行が遅れていることも響いたと見られる。
【外需は予測通り前期並みのマイナス寄与】
外需(純輸出)は、月例景気見通し(2014年2月版)で予測した通り、10~12月期は前期比-0.5%のマイナス寄与度と前期(同-0.5%のマイナス)並みのマイナス寄与度となった。輸入の伸びが前期比+3.5%と輸出の伸び(同+0.4%)を大きく上回っているためである。
【13兆円の補正予算終了に伴う「財政の崖」の走りが現れた】
以上の10~12月期GDP(1次速報値)は、安倍政権の政策に対し、少なくとも二つの大きなインプリケーションを示している。
第一は、13兆円の21年度補正予算の執行が峠を越すにつれ、大きな「財政の崖」(fiscal cliff)が成長率を下に引っ張ることである。5.5兆円の13年度補正予算はあるが、これは5.2兆円の消費増税のネガティブ・エフェクトを相殺するためであり、13兆円の12年度補正を予算執行終了に伴う「財政の崖」はは依然として残る。その走りが、早くとも10~12月期GDPに現れたと言うことが出来る。
【成長率の重石となってきた「純輸出」のマイナス】
第二のインプリケーションは、原発停止に伴い、高価格のLNGや原油の輸入増加が続いている限り、円安に伴う輸出数量の増加では間に合わず、大きな「純輸出」のマイナスが続き、成長率の重石になることがはっきりしてきたことである。原発再稼働の是非やその時期が、日本の成長率を左右する条件の一つであることが明らかになってきたと言えよう。
【デフレーターと名目雇用者所得の上昇、GNIの増加】
以上のほか、10~12月期GDP(1次速報値)には、注目すべきポイントが三つある。
一つは、国内需要デフレーターが前期比+0.3%増と前期(同+0.2%増)に続き2四半期連続で上昇したことである。またGDPデフレーターも、同+0.1%増と前期の同-0.1%減から僅かながら上昇に転じた。
二つ目は、1~3月期から前期比で上昇に転じていた名目雇用者報酬が、10~12月期は前期比+0.7%とかなり大幅な上昇となったことである。
以上の二つは、デフレ脱却の兆しとして注目される。
三つ目は、2013暦年の実質国民総所得(実質GNI=実質GDP+交易利得+海外からの所得純受取)が、前年比+1.7%と11年(同-1.3%)や12年(同+1.2%)を上回って伸びたことである。これは、対外直接投資の増加を反映して、海外からの所得純受取の伸びが高まっているためである。
国民経済の真の力を示す統計は、言うまでもなくい、GDPではなくGNIである。