売上高経常利益率は中堅・中小を中心に過去最高の領域に達しているが、業況先行き感はやや慎重、設備投資も前回調査比横這い、他方販売価格は引き上げの構え(H25.12.16)

―12月調査「日銀短観」の見所


【業況判断は好転したが先行きはやや慎重な見方】
 本日(12/16)公表された12月調査「日銀短観」によると、企業の本年度売上高経常利益率は中堅・中小を含め高水準に達する計画であるが、先行きの収益、業況についてはやや慎重な見方をしている。設備投資も3か月前に比して上方修正されていない。他方、販売価格については消費税率引き上げを控え先行き上昇を見込む企業が増え始めた。
 まず「業況判断DI」の現状は、各規模の製造業、非製造業において3か月前よりも好転し、唯一「悪い」超であった中小企業の製造業と非製造業も「良い」超に転じた。
 しかし、先行きについては、各規模の製造業・非製造業において悪化している。一般に、先行きの業況について企業は慎重に報告する傾向があるが、前回9月調査では、先行きについて横這いの見通しにとどまり、悪化の見通しはなかった。今回の先行き悪化は、各規模とも「良い」が減り、「さほど良くない」という中立的な見方が増えたためである。


【本年度の売上計画は上方修正、先行きは販売価格引き上げの方向】
 本年度の売上計画は、大企業製造業の国内売上(前年比-0.6%)と同・非製造業の売上(同-0.3%)を除き、全規模の製造業・非製造業で前回調査より上方修正され、全体で+0.5%上振れして前年比+3.4%(前年は同+0.6%)となった。
 大企業製造業の国内売上の下方修正は、上期で起こっており、同・非製造業の売上げ下方修正は下期に起こっている。
 なお、「販売価格DI」は、消費税率引き上げを控え、各規模の企業で先行きについて「下落」超幅の縮小し、ないし「上昇」超幅の拡大が見られ、その傾向は製造業よりも非製造業において強い。

【中堅・中小を含め売上高経常利益率は過去最高の領域】
 本年度の収益計画は、全規模の製造業・非製造業が前回調査に比し一斉に上方修正しており、経常利益の前年比増益率は全体で+7.5%上振れして+17.3%に達した。
 増益率が大きいのは、上期の「実績」で、全体は+17.9%上振れして前年比+34.5%の増益率となった。反面下期の「計画」は、-2.0%下方修正され、同+3.0%の増益率にとどまっている。
 このような収益動向を反映して、本年度の売上高経常利益率は全体で4.14%に達し、06年度の4.26%に次ぐ高さとなった。企業規模別に見ると、中堅企業の3.40%はバブル期直前の84年以来の最高水準であり、中小企業の2.89%はバブル崩壊後の92年以来の最高水準である。収益改善が、中堅・中小に浸透してきた。
 反面、大企業の4.94%は05年(4.95%)、06年(5.29%)、07年(5.06%)のピーク水準に達していない。

【土地投資は増えているが、これを除く設備投資計画は前回調査比横這い】
 本年度の設備投資計画(製造業・非製造業・金融機関の合計、ソフトウェアを含み土地投資を除く)は、前年比+6.9%と前年の伸び(+4.3%)を上回っているが、3か月前の計画に比べると上方修正はなく、横這いである。
 土地に対する投資額が前回調査比+29.3%と大幅に増え、ソフトウェア投資も同+1.9%と僅かに上方修正されたが、機械・建屋などの本体工事は増えていない。
 背後にある「生産・営業用設備判断DI」を見ると、各規模の非製造業は小幅の「不足」超となり、その幅は少しずつ拡大している。他方製造業は依然として「過剰」超で、その中でジリジリと「過剰」超幅が縮小している。

【「雇用人員判断DI」はジリジリと改善、雇用者数は前年比1%の伸び】
 全規模製造業・非製造業の「雇用人員判断DI」は、-10%ポイントの「不足」超となり、先行きも「不足」超幅が拡大する。このうち製造業は依然として1%ポイントと「過剰」超であるが、先行きは過不足なしのゼロになる予想である。
 ただし、製造業のうち大企業に限ってみれば、先行きも3%ポイントの「過剰」超である。
 雇用者数は、製造業・非製造業・金融機関の合計で、9月末現在、前年比+1.0%の増加と、6月末の同+0.7%に比してやや大きく伸びた。
 同じ対象企業の新卒採用計画は、本年度は前年比+4.8%、明年度は同+1.6%と昨年度(同+7.0%)より伸びが落ちるが、このうち金融機関だけは、12~14年度にそれぞれ前年比+1.1%、同+2.7%、同+13.7%と伸びが高まる計画になっている。
 総じて、大企業の採用計画は慎重である。