製造業を中心に景気回復の足踏みを示す9月調査「日銀短観」(H24.10.1)


【製造業に変調】
 本日(10/1)公表された9月調査「日銀短観」は、大企業製造業の「業況判断」DIが前回(6月)調査に比べて悪化し、先行きも好転しない見通しとなっているほか、大企業製造業の本年度の売上・収益計画や設備投資計画も前回調査に比べ下方修正された。
 しかし、非製造業や中堅・中小企業の「業況判断」DIや売上・収益計画は総じて前回調査比横這いとなり、全規模全産業の本年度設備投資計画は、前回調査比上方修正された。
 9月調査「日銀短観」は、景気が後退局面に入ったことを示すというよりも、回復が製造業を中心に足踏みをしていることを示していると判断される。

【製造業の業況は前回の見通しとは逆に悪化】
 注目すべきポイントを見て行くと、まず大企業製造業の「業況判断」DIは、前回調査の先行きが「良い」超1%ポイントと好転することになっていたにも拘らず、今回は逆に「悪い」超3%ポイントと悪化し、悪化幅は前回(「悪い」超1%ポイント)よりも拡大した。とくに大きく悪化したのは、鉄鋼、金属製品などの素材業種である。
 これに対して、非製造業の「業況判断」DIは、大企業と中堅企業で「良い」超幅が前回比横這い、中小企業で「悪い」超幅が前回比横這いとなり、格別業況の悪化は見られない。

【製造業の売上計画は国内向けを中心に下方修正】
 これらの原因を売上・収益計画によって見ると、大企業製造業の本年度の売上計画は、前回調査に比して、国内売上計画が-2.0%ポイント下方修正されたことから、全体で-1.7%ポイント下方修正となった。つれて本年度の経常利益も前年比+3.2%の微増にとどまり、前回調査比-6.2%ポイントの下方修正となった。
 このような増収・増益計画の下方修正は、製造業において顕著であるが、非製造業の大企業と中堅企業では、増収・増益計画は前回調査比上方修正ないしは横這いとなっている。

【デフレ・ギャップは縮んでいない】
 次に本年度の設備投資計画(ソフトウェア投資を含み土地投資を除く)を見ると、前回調査比+0.4%ポイント上方修正され、前年比+7.3.%の増加となっている。
 これは、本年度計画が未定であった中堅企業と中小企業の計画が固まり、計上されてきたためで、大企業では、前回調査比-0.3%ポイントの下方修正、金融機関では同-1.1%ポイントの下方修正となっている。
 「生産・営業用設備判断」DIは、全規模全産業を合計したベースで、「過剰」超幅5%ポイントと前回調査比横這いである。デフレ・ギャップが縮小していないことを裏付けている。
 「販売価格判断」DIは、製造業で-16%ポイントの「下落」超、非製造業で-9%ポイントの「下落」超と前回(それぞれ-17と-8の下落幅)に比べ、ほとんど変わらず、デフレ基調の持続を示している。

【雇用回復は足踏み傾向】
 「雇用人員判断」DIは、製造業で「過剰」超+10%ポイント、非製造業で「不足」超-5%ポイント、全体で「過剰」超+1%ポイントと前回(それぞれ+9、-3、+1)に比べて全体は変化してないが、製造業で過剰、非製造業で不足が僅かに強まっている。
 雇用者数(製造業、非製造業、金融機関合計)は、本年6月末現在、前年比+0.9%増と、3月末(同+0.9%増)比横這いである。