本年度上期の企業業績は上方修正されたが下期は足踏みの予想(H22.12.15)

―12月調査「日銀短観」のメッセージ

【業況判断は7期振りに悪化したが、予想よりも小幅】
 本日(12/15)公表された12月調査「日銀短観」は、想定通り本年度下期の足踏みを示す内容で、良い意味でも悪い意味でもサプライズはなく、株式市場も格別の反応を示さなかった。
 まず「業況判断」DIは、大・中堅・中小の各規模の製造業・非製造業において、前回9月調査よりも悪化した。これは、大企業・中堅企業の場合、7期振りの後退である。しかし前回の先行き予想よりも悪化幅は小幅にとどまった。
 これを大企業製造業についてみると、前回の「良い」超8%から今回は5%に後退したが、前回の先行き予想−1に比べると6%ポイントの小幅悪化にとどまった。
 「良い」超の範囲内ではあるが悪化幅の大きかった業種は、電気機械、自動車で、エコポイント対象の縮小、エコカー補助金の打ち切りなどによる反動がでたためであろう。逆に前回より好転した業種は、造船・重機、汎用機械、業務用機械、鉄鋼、食料品などである。

【本年度の売上高と経常利益は上期を中心に上方修正】
 本年度の売上・収益計画をみると、中堅・非製造業の売上高を唯一の例外として、各規模企業の製造業と非製造業で、前回調査に比して、売上高と経常利益が上方修正された。
 これを全規模全産業の合計についてみると、本年度の売上高は0.2%ポイント上方修正されて前年比+4.3%、経常利益は2.8%ポイント上方修正されて同+28.2%となり、売上高経常利益率は0.08%ポイント上方修正されて3.35%となった。
 大企業製造業の売上高のうち輸出は0.9%ポイント上表修正されて、前年比+15.6%となっている。
 これを上期、下期別にみると、上方修正はもっぱら上期の実績について行われており、下期の予想は、前回調査に比べて売上高が−0.4%ポイント、経常利益が−8.7%ポイント下方修正された。売上高よりも経常利益の方が下振れが大きいのは、想定外の円高進行によるものと思われる。また輸出も、下期は前回調査に比べて0.5%ポイント下方修正され、前年比+8.5%となっている。世界経済の減速を織り込んだ修正とみられる。
 なお、大企業製造業の売上高経常利益率4.35%は、前回の景気上昇が始まった02年度と03年度の中間の水準である。

【設備判断の改善は遅く設備投資計画は前回並みの小幅増加】
 次に、企業の「生産・営業用設備判断」DIは、全規模・全産業ベースでみて、前回、今回、先行きとも、「過剰」超8%、7%、8%とほとんど変わっていない。下期の増収増益幅の予想が下方修正されていることにも窺えるように、企業の先行き見通しは慎重で、これがここにも反映されているようである。
 全規模の製造業・非製造業・金融機関を合計した本年度の設備投資計画(ソフトウェアを含み土地投資額を除く)は、前回調査よりも僅かに0.2%下方修正され、前年比+2.6%となった。
 下方修正は上期の大企業・中堅企業で起こっており、下期は各規模の製造業・非製造業で上方修正されている。従って、下期の投資マインドが、弱気化したとはみられない。
 また、土地投資額は、各規模の製造業・非製造業・金融機関で前回調査比+35.7%ポイントと大きく上方修正された。もっとも前年比では−26.2%である。地価の先行きについての弱気が徐々に修正されているのであろう。

【雇用の改善は遅々としている】
 「雇用人員判断」DIの改善も、遅々としている。各規模の製造業・非製造業の合計でみると、前回、今回、先行きの「過剰」超は、7%、6%、6%とほとんど横這いである。
 金融機関はやや前向きで、8%、6%、3%と「過剰」超幅の縮小がみられる。
 しかし、各規模の製造業・非製造業・金融機関の合計で、現実の雇用者数は本年9月末現在で前年比−0.5%と微減している。ただし、金融機関は+2.3%の増加であった。
 同じベースでみた新卒採用計画は、本年度が前年比−23.0%、来年度が同−2.2%と冷え込んでいる。

【下期の後退のあと来年度はどうなるか】
 以上、今回の「短観」のメッセージは、足許は3か月前に予想した程悪化してはいないものの、年度下期全体としては慎重な見方をしており、それが設備と雇用のマインドと計画の改善が遅々としていることに反映されている。
 問題は来年度であるが、この調査は次回の3月調査から始まるので、それまで待たなければならない。