本年度上期の売り上げと設備投資は下振れ、下期は輸出を中心に売り上げ、経常利益、設備投資の計画が上方修正、雇用は引き続き深刻(H21.12.14)

―12月調査「日銀短観」の主要メッセージ―


【大企業製造業を中心に「業況判断」は3期連続して改善、先行きも改善の見込み】
 本日(12月14日)発表された12月調査「日銀短観」によると、企業の業況判断は、3月調査を底に、6月調査以降12月調査まで、3期連続して緩やかに改善しており、円高がやや進んだために懸念されていた本年度の経常利益も、9月調査比若干上方修正された。水準は低いものの、企業業績の回復基調に変化はない。
 まず、「業況判断」DIは、大・中堅・中小の各規模製造業において、前回調査比9〜12%ポイントの大幅改善を見たため、非製造業の改善幅は小幅であったものの、全体として前回の「悪い」超38%から今回は同32%に改善した。製造業の大幅改善は、鉱工業生産が3月(実績)以降12月(予測)まで10か月連続して急回復した動きを反映したものであろう。
 先行きは、大企業が引き続きほぼ同じテンポの改善を見込んでいるが、中堅・中小は小幅の悪化を予想している。もっとも、中堅・中小は業況の先行きを慎重にみる傾向があり、今回の実績も前回の予想をかなり上回って好転しているので、10年3月調査の結果が出るまでは、悪化するかどうかは速断できない。

【本年度売り上げ計画は上期の内需を中心に下振れ、輸出計画は上方修正】
 「需給判断」DI、「在庫水準判断」DIはかなりの「供給」超、「過大」超ではあるが、その幅は少しずつ縮小している。しかし、「販売価格」DIの「下落」超幅は、先行きも縮小するとは見られていない。企業は物価の下落傾向が、当分続くとみているようだ。
 本年度の売り上げ計画は、前年比−11.4%と前回調査比−1.0%の下方修正となったが、下振れは主として上期(−1.7%)に起こっている。これは大企業製造業の国内売り上げ(−1.4%)と同非製造業(−4.6%)で大きく下振れしたためである。上期の国内需要が予想以上に下振れしたためとみられる。
 これに対して、大企業製造業の輸出計画は、上期に前回調査の前年比−37.6%から2.2%上振れして同−35.4%となり、下期には同+3.2%とプラスに転じる計画である。円高の影響よりも、アジアを中心とする海外需要回復の影響の方が大きくでているためであろう。




【本年度の経常利益、売上高経常利益率は上方修正】
 売り上げ計画の下期回復を反映して、本年度全体の経常利益の計画も、下期の大幅増益によって上方修正され、年度の減益幅が大きく縮小する計画である。
 すなわち、全規模全産業ベースでみると、08年度下期に製造業の欠損を中心に前年比−70.1%の大幅減益となった経常利益は、09年度上期には前回調査比+29.3%上振れして、同−52.8%の減益幅に縮小し、下期には同+91.3%の増益となる計画である。
 これに伴い、全規模全産業ベースの売上高経常利益率も、本年度は2.31%と前回調査比0.11%ポイント上振れし、とくに下期は2.56%と前年度の平均(2.44%)を上回る計画となっている。




【本年度の設備投資計画は上期に下振れしたが下期は上方修正】
 全規模全産業と金融機関を合計した本年度の設備投資計画(ソフトウェアを含み、土地投資を除く)は、前回調査比−1.9%下方修正され、前年比−14.3%となった。
 年度計画の下方修正は大企業で起こっており、中堅・中小は前回調査比逆に上方修正されている。また、上・下期別にみると、下方修正が起こったのは上期(前年比−17.6%→−23.1%)で、下期は同−17.3%→−14.7%と上方修正されている。このことから判断すると、企業の設備投資意欲は、現時点で下振れしている訳ではないと見られる。
 「生産・営業用設備判断」DIの「過剰」超幅も、製造業を中心にジリジリと縮小している。




【雇用の悪化は続く見込み】
 他方、企業の「雇用人員判断」DIも、ジリジリと「過剰」超幅を縮小している。
 しかし、過剰には違いないので、現実の雇用者数は、少しずつ減少している。これは、中堅・中小で減少しているためで、大企業は前年比増加率を縮小しているものの、09年9月時点では減少に転じていない。また金融機関は、逆に増えている。
 2010年度の採用計画は、各規模企業、各業種で前年比減少しており、全規模全産業と金融機関の合計では、09年度の前年比−9.9%減に続いて、10年度は同−23.6%と減少幅を拡大する計画である。
 遅行指標である雇用には、まだ全く明るさが見られない。