経済情勢は08年度下期が最悪、09年度上期は底這いのあと下期にやや立ち直り、製造業と非製造業の格差が目立つ

―3月調査「日銀短観」のポイント(H21.4.1)


【日本経済は08年度下期に激しく落ち込んだあと09年度は底這いから僅かに回復へ】
 本日(4月1日)、公表された3月調査「日銀短観」によると、予想通り、製造業を中心に足許の業況判断DIおよび08年度下期の売上高と経常利益が大幅に悪化、設備と雇用の過剰感は強まり、09年度の設備投資計画は前年比1割のマイナス、販売価格と仕入価格は下落を続ける見通しである。
 しかし、輸出を中心とする売上高と経常利益の落ち込みは08年度下期で止まり、09年度上期と下期は底這い状態となり、下期には前年同期を僅かに上回る計画となっている。
 また、不況の衝撃が輸出激減という形で海外から来ているため、業況判断DIと売上高経常利益率は、製造業ではほぼ過去最悪の水準まで低下しているが、非製造業では大きく低下したものの、過去最悪の水準には達していない。
 以上を要約すれば、経済情勢の悪化は08年度下期が最悪で、09年度は底這い状態の中で企業業績は僅かながら立ち直ってくる、というのが3月調査「日銀短観」に現れた企業の平均的な見方である。

【足許の業況判断は大企業製造業で過去最悪
 具体的に見ていこう。
 大企業製造業の業況判断DIは、「悪い」超−58%ポイントと過去最悪の記録であった第一次石油ショック直後の75年5月調査(−57%ポイント)と並んだ。しかし、先行きは−51%ポイントとやや縮小する見通しである。
 もっとも、中堅・中小の製造業の業況判断DIは、先行きも悪化幅が拡大する。
 他方、大企業非製造業の業況判断DIは、「悪い」超−31%ポイントと大きく悪化したが、バブル崩壊直後の94年2月調査(−35%ポイント)、超緊縮予算が引き起こした政策不況の98年12月調査(−41%ポイント)の悪化幅よりは小さい。今回は不況の衝撃が海外から来ており、94年や98年は国内から起こっているという違いが、内需型の非製造業と外需型の製造業の業況判断の差に投影されているのであろう。

【大幅な供給超が続き価格は下落傾向】
 国内の製商品・サービス需給判断DIの「供給」超幅も大きく拡大した。ここでも製造業の方が非製造業よりも「供給」超幅が大きいことと、先行きは「供給」超幅がやや縮小すると見ていることは、業況判断DIと同じである。
 他方、販売価格と仕入価格の判断DIも、「下落」超幅が拡大し、先行きについてもほぼ同じ「下落」超幅が続くと見ている。

【輸出は08年度下期の大幅落ち込みのあと下げ止まりから09年度下期にはやや回復】
 次に大企業の売上高計画を見ると、下表の通り、製造業は08年度下期に輸出が前年比−24.4%と大きく落ち込むため、全体も同−18.6%の大幅減少となる。しかし、09年度を通じて輸出の減少幅は縮小し、下期には同+2.7%と小幅の増加に転じるため、全体も下期に同+0.5%の微増となる。
 これに対して、非製造業は08年度下期に同−4.4%と小幅の落ち込みにとどまるが、09年度上期には減少幅が同−7.2%と拡大した後、下期に同−1.2%と縮小する。
 売上計画では、輸出、従って製造業は08年度下期が最悪期、内需、従って非製造業は09年度上期が最悪期のようである。


【08年度と09年度は2期連続の大幅減益】
 08年度下期の売上高が上記のように大きく落ち込むため、同下期の経常利益は加工業種を中心に大企業製造業は欠損、同非製造業も−33.0%の減益である。
 このため、08年度全体の大企業の経常利益は、製造業で−62.7%、非製造業で−23.2%の減益となる。更に09年度も、下期には増益に転じるものの、通期では製造業で−19.7%、非製造業で−6.4%の減益が続く。
 以上の結果、09年度の大企業の売上高経常利益率は、製造業では2.23%と第一次石油ショック直後の75年度(1.55%)に次ぐ最悪の水準に落ち込む。
 これに対して非製造業では3.07%と、過去のボトム(82年度1.41%、94年度1.62%、97年度1.85%、01年度2.54%)をまだ上回っている。

【設備の過剰感が強まり09年度設備投資計画は1割減】
 企業の生産・営業用設備判断DIを全規模全産業ベースで見ると、製造業は「過剰」超36%ポイントと12月調査比22%ポイント悪化し、先行きもほぼ同じ35%ポイントで推移する。このため、製造業の09年度設備投資計画(ソフトウェアを含み土地投資を除く)は、前年比−17.7%の大幅減少である。
 これに対し非製造業では、生産・営業用設備判断DIの「過剰」超は、最近も先行きも8%ポイントにとどまる。このため、09年度の設備投資計画(同)は、前年比−7.1%の小幅減少である。
 更に金融機関も含む設備投資(同)総額を見ると、09年度は前年比−10.6%である。ただし、製造業を除くと、同−6.6%となる。

【非製造業と中堅・中小企業でも雇用判断は過剰へ】
 企業の雇用人員判断DIも、製造業を中心に大きく「過剰」超に変わった。全規模製造業では、「過剰」超が12月調査の14%ポイントから38%ポイントに大きく拡大し、先行きも36%ポイントで推移する。
 これに対して非製造業では、12月調査までは「不足」超−3%ポイントであったが、今回の3月調査では「過剰」超6%ポイントに変わり、先行きは更に10%ポイントに拡大する。
 非製造業や中堅・中小企業においても、雇用情勢は厳しくなってきた。