08年度の景気は減速、輸出は下期に回復の予想、売上高経常利益率は前年比上昇の見込み

―3月調査「日銀短観」のポイント(H20.4.1)

【企業マインドは目先悪化、先行き景気持続の予想は崩れていない】
 本日(4月1日)発表された3月調査「日銀短観」では、輸出関連の大企業製造業を中心に、「業況判断」DIの「良い」超幅が予想以上に大きく後退し、先行きについても08年度の増収率(売上高の増加率)の減速が予想されている。08年度の設備投資計画も、まだ3月時点の計画ということもあって小幅の減少である。
 しかし、「生産・営業設備判断」DIと「雇用人員判断」DIは「不足」超幅を縮めておらず、景気の持続について自信が崩れているとはみられない。
 先行きの経常利益についても、07年度下期と08年度上期に前年比マイナスとなったあと、08年度下期には増益に戻る計画となっている。08年度の売上高経常利益率は、中堅・中小企業が回復を続けるため、全規模全産業ベースで07年度を若干上回り、最高記録を更新する計画となっている。

【「業況判断」は輸出関連大企業を中心に悪化】
 詳細に見て行くと、まず「業況判断」DIは、大企業製造業で「良い」超幅が8ポイント縮小して11ポイントとなり、ほぼ事前予想の最下限となった。大幅な「良い」超を示していた精密機械、鉄鋼の縮小が大きい。反面、造船・重機等、自動車、一般機械は、「良い」超幅の縮小は小幅にとどまり、なお大幅な「良い」超を続けている。これらの業種は、いずれも輸出の代表業種であり、サブプライム・ローン問題に端を発する米国の成長減速予想が、企業マインドに大きな影を落としているものと見られる。
 大企業製造業に比べると、非製造業や中堅・中小企業製造業の「業況判断」DIの悪化幅は小さい。輸出より内需の方が、相対的に見通しがよいからであろう。非製造業の中では、情報サービス、対事業所サービス、通信などの「業況判断」DIは「良い」超幅が大きく、12月調査に比して好転しているケーズもある。

【輸出は08年度上期に減速、下期に回復の計画】
 08年度の売上高増加率の計画を大企業について見ると、製造業は前年度の+5.7%から本年度は+1.9%に大きく減速するが、非製造業は+4.3%から+1.8%と、減速幅は小さい。これは、製造業の売上高のうち、輸出が+9.1%から+1.6%に急減するためで、内需は+4.4%から+2.0%とほぼ非製造業並みの減速にとどまっている。
 しかし、輸出の急減速は本年度上期に限られている。上・下別に前年比を見ると、輸出は07年度下期の+5.5%から08年度上期の+0.8%に大きく落ちたあと、下期は+2.5%に回復する計画である。これに対して内需は、それぞれ+4.8%、+2.3%、+1.7%と期を追って緩やかに減速して行く。その結果、売上高全体としては、上期+1.8%、下期+1.9%と伸び率はほぼ横這いである。
 このように、輸出減速の影響は上期の売上高に大きく出るが、下期の輸出回復を予想しているため、08年度の上・下別の増収率には、大きな変化はない。
 なお、大企業非製造業も、上期も下期も+1.8%の増収率を見込んでいる。

【価格転嫁が進み08年度は増益率が高まる計画】
 08年度の増収率は07年度よりも落ちるものの、期を通じて緩やかな伸びが続くと見ているため、「製商品・サービス需給判断」DIや「在庫水準判断」DIには、とくに先行き悪化の気配はない。
 このような需給状況を背景に、資源・エネルギー価格など仕入れ価格の高騰を、販売価格に転化する計画と見られ、「販売価格判断」DIは現状3ポイント、先行き5ポイントの「上昇」超となっている。
 このためか、08年度は増収率が低下するにも拘らず、増益率(経常利益の増加率)は非製造業や中堅・中小企業を中心に、全規模・全産業ベースで、07年度(予想)の−1.6%減益から、08年度は+2.4%の増益となる計画である。もっとも大企業製造業だけは、07年度の+2.7%の増益から、08年度は0.0%と横這いとなる計画である。
 08年度は全規模全産業ベースで増収率低下・増益率上昇となるため、08年度の売上高経常利益率は、前年度の4.06%から4.10%に上昇し、バブル期を上回る最高水準を更新する計画となっている。

【設備と雇用の判断は弱気化していない】
 全規模全産業に金融機関を加えた08年度の設備投資計画(ソフトウェアを含み土地投資を除く)は、前年度の+4.2%の増加予想に対し、−1.6%の減少となる計画である。
 もっとも、これは3月時点の計画であり、08年度の景気が予想外に悪化しない限り、中小企業を中心に上方修正され、小幅の増加計画になると見られる。
 また全規模全産業の「雇用人員判断」DIの「不足」超幅は、前回12月調査の10ポイント、今回3月調査の9ポイント、先行きは10ポイントと横這いで推移しており、企業の人手不足感に変化は見られない。全規模全産業に金融機関を加えた雇用人員の前年比は、07年3月末+2.0%、6月末+2.3%、9月末+2.6%、12月末+2.7%と、増加率をジリジリ高めている。