設備投資と雇用の回復で内需主導型成長の基盤強まる(H17.10.3)


─ 9月調査「日銀短観」の見方 ─

【製造業の業況判断DIは「良い」超圏内で先行きまで横這い】
   本日(10月3日)発表の9月調査「日銀短観」によると、業況の大幅好転は一服し、高水準横這いとなっているが、企業の設備と雇用に関する判断は前回調査よりも積極化しており、設備投資と個人消費に支えられた内需主導型回復の基盤が強まっているように見える。また大企業製造業は、年度下期の輸出好転に引続き期待を寄せている。
   まず「業況判断」DIをみると、各規模製造業は輸出主導型回復に伴って昨年6月調査まで急速に回復し、「良い」超に転じたが、その後回復は頭打ちとなり、今回の9月調査も全規模製造業で前回比横這いである。
   先行きについては、大企業製造業の輸出計画が上期の前年比+1.7%増から下期の同+5.4%増に大幅好転する形となっている。しかし、「業況判断」DIの先行きが好転していないところを見ると、まだ輸出回復の手応えはないのであろう。

【売上高の伸びは鈍化し「供給」超幅は縮小しない】
   他方、非製造業の「業況判断」DIは、総じてジリジリと好転している。大企業が「良い」超圏内で回復を続けているほか、中堅企業も「良い」超圏内に入ってきた。当面の景気回復が内需主導型であることと符合している。
   05年度の売上高計画は、全規模全産業で前回調査比0.3%ポイント上方修正されたが、それでも前年比増加率は+2.1%増にとどまり、04年度の同+4.0%増を大きく下回っている。
   国内の「製商品・サービス需給判断」DIも、「供給」超のまま横這い傾向を続けており、「販売価格判断」DIも「下落」超幅が縮小していない。「短観」から見る限り、デフレ解消の兆しは見えない。もっとも、「仕入れ価格判断」DIは、原油や素材の価格高騰から大幅な「上昇」超である。

【売上高経常利益率は高水準横這い】
   以上のような売上高の伸び率鈍化と、原料高・製品安に伴って、05年度の経常利益の増加率は各規模各産業で前年度に比して大きく鈍化し、1桁となる。全規模全産業でみると、増益率は04年度の20.3%から05年度の3.4%に急落する。
   もっとも売上高経常利益率で見れば、売上高の伸びも鈍化しているので、04年度の3.74%に対し05年度は3.79%となり、高水準横這いである。その限りでは、現在の株高には収益面の根拠がある。

【内需関連企業の積極化が加わり設備投資の伸びは加速】
   今回の9月調査「短観」で最も注目されるのは、設備と雇用の見方が好転していることである。
   「生産・営業用設備判断」DIは、各規模各産業で「過剰」超幅が縮小し、全規模全産業ベースでみて、先行きは「過剰」と「不足」が等しくなる。とくに各規模非製造業と中小企業製造業の先行きは、バブル崩壊以降10数年振りに「不足」超に転じる。
   これは、国内需要主導型の回復で、国内関連企業が久し振りに設備に関して前向きの考えに転じた証左であろう。
   このため、「ソフトウェアを含む設備投資額(除く土地投資)」は、全規模ベースでみて、製造業が前年度の前年比+16.4%増から本年度は同+13.8%にやや伸びは鈍化するものの、非製造業が同+0.5%増から同+7.6%増に伸びを高めるため、全体としては、前年度の同+5.1%から本年度は同+9.6%と加速する。
   従来の輸出関連製造業の設備投資に加え、その伸び率鈍化を補う形で国内関連非製造業の設備投資が出てきたため、内需主導型回復の持続性は高まっている。

【雇用の不足感が広がり雇用人員は着実に増加】
   設備の判断と並んで、雇用に対する企業の判断も積極化してきた。
   「雇用人員判断」DIは、各規模各産業で遂に「不足」超に転じた。全規模全産業ベースでみると、前回調査のゼロから今回調査では−2の「不足」超、先行きは−5の「不足」超となった。
   とくに非製造業は先行き−8の「不足」超であり、中堅企業非製造業の先行きは−10という大幅な「不足」超である。
   このため現実の雇用者数も、全規模全産業ベースでみて、6月末現在、前年比+1.0%の増加、とくに中小企業は同+1.3%の増加となった。
   このような雇用判断の積極化と現実の雇用増加は、個人消費の回復を支え、設備投資と並んで内需主導型成長の持続性を高めるであろう。