対個人サービス中心の雇用と設備投資に支えられ05年度は小幅の増収増益(H17.7.1)
─ 6月調査「日銀短観」が示す貴重な景気情報 ─
【非製造業を中心に「業況判断」は緩やかに好転】
7月1日(金)に公表された6月調査「日銀短観」は、3月調査に比べて全般的にやや好転している。
まず3月調査時に製造業を中心に悪化した「業況判断」DIは、6月時点では全規模の製造業と非製造業で小幅の好転を示した。先行きについても、ほぼ横這いの見通しとなっている。
業種別に見ると、現状・先行き共、対個人サービスを中心とする非製造業(とくに大企業と中堅企業)の好転幅が大きい。製造業の生産が足踏みを続ける中で、緩やかな回復のエンジンは、対個人サービスを中心とする非製造業に徐々に移りつつある。
因みに、製造業の「需給判断」DIや「在庫水準判断」DIの好転は遅々としている。
【製造業は依然として下期の輸出回復に大きく期待】
しかし製造業は、輸出回復を中心とする下期好転のシナリオを捨てていないようだ。全規模製造業の増収率の予想を見ると、05年度は3月調査に比べ1.7%ポイント上方修正されて+2.7%となっている。04年度の+5.5%に比べると大きく鈍化している。
これを大企業製造業について輸出と国内に分けると、輸出が+3.3%、国内が+3.1%と輸出の伸びの方が高い。とくに上期と下期に分けて前年同期比増加率をみると、輸出は上期の+1.1%から下期の+5.4%へ大きく伸び率を高める予想となっている(国内は上・下期共+3.1%で変わらず)。最近の中国経済の成長減速に伴う対中国輸出の鈍化などからみて、果してこの楽観的見通しは大丈夫であろうか。
他方、非製造業(全規模合計)も、増収率は04年度の+3.3%から05年度は+1.4%に鈍化する予想である。
【増収増益は鈍化するが収益率は高く、設備投資は伸びる】
増収率の鈍化に伴い、経常利益ベースの増益率も、全規模合計でみて、製造業は04年度の+27.7%から05年度の+2.7%へ、非製造業は同じく+14.9%から+2.8%へ大きく鈍化する。
しかし、増収率と増益率が共に鈍化するため、売上高経常利益率は、製造業も非製造業も、全規模合計でみて、04年度の高水準(夫々5.26%、3.03%)を維持する見通しとなっている(同5.26%と3.07%)。
このような高収益を背景に、全規模全産業の05年度設備投資計画(ソフトウェアを含む)は、3月調査に比べて5.4%ポイント上方修正され、前年比+8.8%となった(前年度は+5.1%)。特に非製造業は、前年度の+0.5%から本年度は+6.8%と伸び率を高める。
ここでも、景気回復を支える設備投資が、輸出関連製造業から対個人サービス関連非製造業に移りつつある。
【対個人サービスを中心に非製造業で雇用回復】
このような対個人サービスに対する需要は、「日銀短観」を見る限り、同じ非製造業の雇用増加に支えられているように見える。
「雇用人員判断」DIをみると、非製造業は既に各規模で「不足」超に転じており、先行き「不足」超幅が拡大して行く見通しになっている。これに対して製造業の全規模合計では、6月時点でまだ「過剰」超であり、先行きようやくトントンになる見通しである(大企業では先行きもなお「過剰」超)。
このような変化を反映して、全規模全産業の雇用者数(実績)は、本年3月末に前年比+0.9%の増加となった。
同じ7月1日に公表された総務省の統計によると、5月の就業者数は前年比+46万人の増加(うち雇用者は同+41万人の増加)となったが、業種別の内訳を見ると、サービス業が+33万人増加の922万人、医療・福祉が+41万人増加の571万人となっており、製造業は逆に5万人減少の1135万人である。ここでも対個人サービス業中心の回復が鮮明である。
【「日銀短観」が示す四つの景気情報】
以上のように、今回の「日銀短観」は、本年度の景気展望についていくつかの重要な情報を示しているが、主なものは次の4点である。
@05年度の回復は続くがスピードはかなり落ちる。
A回復を支える需要は、設備投資、および雇用の緩やかな回復を背景とする個人消費である。
B設備投資と雇用の回復は、輸出関連製造業から対個人サービス関連非製造業にウェイト・シフトしている。
C懸念材料は、製造業の下期輸出見通しが甘目に出ていることである。