2003年10〜12月期+7%成長の陰の部分(H16.2.20)


【一般の予想を大きく上回る高成長】
    2003年10〜12月期の実質GDPは、前期比+1.7%(年率+7.0%)の大幅増加と発表された。その結果、2003暦年の平均成長率は+2.7%となった。
    昨年の10〜12月期の成長率は、輸出と設備投資が大幅に伸びた上、個人消費も年末商戦を中心にやや持直したことが分かっていたので、私はこのHPの2004年2月版「月例景気見通し」で、前期比+1.2〜1.3%程度の成長(2003暦年平均は+2.2〜+2.3%)と予想していた。11の主要民間研究所の予測は、+0.6%〜+1.7%に分かれていたが、平均は+1.2%成長であった。従って、大方の予想をかなり上回る政府統計が発表されたことになる。

【個人消費のプラス幅が予想外に大きく公共投資のマイナス幅が予想外に小さい】
    民間設備投資の前期比+5.1%(成長率に対する寄与度+0.8%)と輸出の同+4.2%(同+0.5%)は、私の予想の範囲内である。この二つで、成長率は私の予想の+1.3%に一致する。私は残りの需要項目について、個人消費のプラスと公共投資、住宅投資、輸入のマイナスがほぼ相殺し合うと見ていた。しかし政府統計では、個人消費が前期比+0.8%(成長に対する寄与度+0.5%)と予想外に大きく、反面公共投資が前期比僅か−0.2%(寄与度−0.0%)の減少と予想外に小さくなったことなどから、私の予想(+1.2%〜+1.3%)を上回る+1.7%成長となった。

【トレンドとしては前回、前々回より成長スピードは遅い】
    年率+7%成長というバブル期以来の高い瞬間風速が出たために、日本経済はいよいよ本格的な立直りかという声も一部に出ているが、私はそうは思わない。
    第1に、1四半期だけの瞬間風速でトレンドは判断できない。しかもこの瞬間風速は、季節調整の修正などに伴ない、公共投資のマイナス幅拡大などで今後下方修正される可能性がある。
    第2に、トレンドという意味で2003暦年の平均成長率をみると、+2.7%である。これは前回プラス成長期における2000年度の+3.0%や前々回プラス成長期における1996年度の+3.4%よりも低い。トレンドとしては、いよいよ長期停滞を脱するかという程のスピードが出ている訳ではない。
    トレンドという意味では、次の2004年1〜3月期の成長率が注目される。10〜12月期急伸の反動でゼロ成長ないしマイナス成長になると、2003年度の平均成長率は+2.8%以下にとどまる。+3.0%に達するためには、1〜3月期に前期比+0.5%(年率+2.0%)以上のスピードが維持されなければならないが、果してどうなるであろうか。

【今回の連続プラス成長はまだ4四半期目に過ぎない】
    第3に、マスコミは殆ど注目していないが、今回のGDP統計発表で、景気回復の流れについての考え方を変えなければならないような大きな統計の修正があった。
    それは、2002年10〜12月期の実質GDPが前期比+0.4%から同−0.1%へ、0.5%(年率2%)もの下方修正が行われたことである。
    この意味は大きい。政府は2002年4〜6月期に「景気回復宣言」を発表し、この時から連続6四半期のプラス成長が続いているという統計を発表し続けていた。
    しかし、2002年10〜12月期がマイナス成長だとすれば、景気はこの時に一度失速したのであり、今回の連続プラス成長は2003年1〜3月期から始まり、まだ4四半期連続にすぎないことになる。前回は6四半期連続、前々回は9四半期連続のプラス成長であったあら、本年の上期に連続プラス成長を維持して前回並み、来年まで連続プラス成長を維持してやっと前々回並みの回復である。
   従って、2003年10〜12月期の瞬間風速だけで、今回はいよいよ長期停滞からの脱出だと騒ぐのは、まだ早過ぎる。

【政府のGDP統計に対する大きな不信】
   それにしても、GDP統計のような景気判断の基礎統計を、1年以上もたってからプラスからマイナスに変えられては困る。逆に言えば、2003年10〜12月期のGDP統計も、その程度の信憑性しか持っていないと思って使わなければならない。
   このHPの「月例景気見通し」欄の2003年1月版と2月版では、各種統計から判断して2002年10〜12月期に景気は失速したので、マイナス成長であろうと予想した(同欄参照)。
   それが前期比+0.5%の増加と発表されたので、2003年3月版では、これは過大推計だと断じ、政府推計の根拠は不透明で説明責任を欠いていると述べた(同欄参照)。
   今頃になって私の主張が正しかったと分かっても遅すぎる。政府のGDP統計には大きな不信を抱かざるを得ない。