議員辞職勧告決議に従わない議員の懲罰(H15.3.25)

−院議不服従は懲罰事犯か−

【国会議員は本会議の決議に従わなくてよいのか】
衆議院は3月25日(火)の本会議で、政治資金規正法違反容疑で逮捕された坂井隆憲衆議院議員(自民党を除名)に対する野党4党(民由共社)提出の「議員辞職勧告決議案」を全会一致で可決した。
しかし坂井議員は、本会議の決議に法的拘束力はないとして、弁護士を通じて自民党幹部に辞職しない意向を示していると伝えられる。
そうなると、鈴木宗男議員と並んで、二人の衆議院議員が本会議の決議に従わず、獄中で議員の給料(税金)をもらって暮らしていることになる。これでは納税者である国民が釈然としないものを感じるのは、当然であろう。
私も一人の国会議員として、どこかが狂っているのではないかと感じる。

【本会議の決議は院議であり国是にもなる】
本会議での決議は、衆議院の「院議」である。これに議員が従わなかったり無視したりしてよいのであろうか。
国是とされている「非核3原則」も、昭和46年の衆議院本会議の決議である。国務大臣の「辞職勧告決議」の場合は、可決されても大臣を辞める法的義務はないが、当人は院議を重視して後日に必ず辞任しており、在任し続けた例はない。
どうして「議員辞職勧告決議」という「院議」だけが軽く扱われるのであろうか。これはおかしいのではないか。
実は、戦前は「帝国憲法」の下で、「院議無視」又は「院議不服従」は、院内の秩序を乱す懲罰事犯と判断して、これを懲罰委員会に付託すると言う取り扱いが認められていた。6件のうち3件は可決、2件は否決、審議未了が1件であった。
戦後も、昭和41年の田中彰治事件のときは、同様の扱いが検討されたが、田中氏はその前に議員辞職願いを提出した。

【院議不服従は院の権威を失墜させ院の秩序を乱す】
今日では、院内もマスコミも、「議員辞職勧告決議」には何の効力もないと平気で考えているようだが、これは再考すべきではないか。
この「勧告決議」は「院議」であるから、それに従わないで無視することは、「院の権威」を著しく失墜するものであり、日本国憲法第58条の「院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる」に該当するのではないか。
私は衆議院の懲罰常任委員長として、この問題を提起し、議員全員に考えてもらいたいと思っている。その方法は、私が決めることではないので、衆議院議長、議員運営委員会、懲罰委員会などの意向に従う積りである。
しかし、「院議不服従は懲罰事犯か」という問題を何らかの形で提起することは、懲罰委員長としての私の国民に対する義務であると思う。