RCCの不良債権買入拡大は必ず禍根を残す(2001.12.3)
−衆議院本会議における反対討論 −
私は11月30日(金)の衆議院本会議において、RCC(整理回収機構)の不良債権買入拡大を図る「金融機能再生の為の緊急措置法(いわゆる「金融再生法」)の一部改正案」に対し、自由党を代表して反対討論を行った。
以下はその原稿である。
【税金の負担による銀行救済に反対】
私は自由党を代表して、金融機能再生のための緊急措置法の一部改正案に反対の討論を行います。
反対の第一の理由は、この法案がRCCの不良債権買入価格の引上げや入札への参加を容易にすることによって、結果的に国民の税負担による銀行救済スキームを作ろうとしていることです。
この法案は、いわゆる「時価」での購入や入札参加の拡大により、金融再生勘定十兆円の政府保証のうち、まだ使われていない四兆円を活用して不良債権を積極的に買い上げようとしておりますが、今まで約四百億円弱しか買上げできなかったRCCが、四兆円規模で買上げを行うためには、これまで国民負担を最小限に抑えるという原則で決めてきた買上価格を甘くする以外には不可能であります。また入札に参加して実際に落札するためには、民間サービサー等が提示する価格よりも高値をオファーしない限り不可能であります。これらはいずれも買上げ後の二次ロスの危険性を拡大するもので、最終的には税金による国民の負担を増大するものです。これは高値買上げのツケを間接的に税負担で払うことで銀行を救済することに他ならず、許されることではありません。救済しなければ生き残れない銀行は、企業と同様、市場から退出すべきだというのが、自由党の基本的主張であります。
【企業再建に失敗して税金の負担が更に増える可能性あり】
反対の第二の理由は、RCCが買上げた不良債権について、企業再生ファンドを活用して借り手企業を再建するとしておりますが、企業再建の専門集団である銀行でさえ手に負えなくなった厄介な不良債権のみをRCCに売却するのですから、寄せ集め集団であるRCCの能力で果たして企業再建がうまく進むのか、すこぶる疑問であります。企業再生ファンドには、政策投資銀行本体から五百億円、政策投資銀行を経由して産業投資特別会計から五百億円、計一千億円が充てられますが、企業再生に失敗すれば、これもまた最終的には税金による国民の負担となります。
さらに、買上げた不良債権の担保不動産を都市基盤整備公団を利用して整理したり、政策投資銀行等の融資を活用して企業再生を図るとしておりますが、特殊法人の力を借りて不良債権を処理するという考え方自体が行政改革の流れに逆行するものであります。都市基盤整備公団自体は廃止の方向となっており、小泉改革全体として政策の整合性が取れておりません。
【不良債権早期処理は構造改革の本筋に非ず】
不良債権はこれまで全国銀行ベースで見て約七〇兆円ほど処理されてきましたが、金融再生法開示債権の総額は十三年三月末で、なお三十三兆円あります。好況であれば銀行は、あと数年のうちに処理できるでしょうが、失われた十年の損失と、今始まったマイナス成長が、新たに不良債権を生み出している現状では、RCCがこの法案で想定しているような努力を幾ら払っても、とても三年以内で処理することはできません。
小泉総理は「構造改革なくして景気回復なし」として、構造改革の重要な柱に不良債権処理を掲げておりますが、不良債権処理そのものは構造改革ではないのです。それは、バブルに踊った一部の大企業や、査定の甘かった金融機関の護送船団方式の後始末であり、構造改革の本筋ではありません。
構造改革とは本来、日本の仕組みを変えることであります。例えば事業活動の規制廃止と統一市場ルールの確立、民業を圧迫する全ての特殊法人の廃止と政府事業の民間への開放といった、経済・社会の仕組みを変えることです。これを実現することによって、創造力豊かで活力ある民間経済活動の舞台を広げ、日本経済を民需主導の持続的成長軌道に復帰させたとき、自ずと民間の自主的な努力による不良債権の処理が進むのです。われわれ自由党は常にこのことを主張しています。
国民の税金で銀行を救済しながら、他方で「失われた十年間」の景気低迷と、今始まったマイナス成長で、一時的に経営悪化した中堅・中小企業への貸出までもが、厳密な査定によって不良債権とされ、早期処理の対象にされなければならない理由がどこにあるのですか。この法案には、仕組みを改める構造改革の中身は全くなく、ただ血税による銀行救済と、不況に悩む中堅・中小企業や住宅ローンの重圧に苦しむ個人の借り手を圧迫する危険性だけが含まれていることを指摘して、私の討論を終わります。