21世紀を迎えるに当って(2001.1.1)
−自由で創造性あふれる自立国家日本を築くために−
明けましてお目出度うございます。21世紀の初年である2001年を迎えるに当たり、私の決意を申し述べたいと思います。
【欧米先進国の産業化の水準に追い付いた20世紀】
20世紀は、日本が欧米先進国に追い付くという明治維新以来の悲願を達成した世紀でした。アジア諸国の中で一人日本だけが欧米列強の植民地や半植民地になることなく独立を維持し、欧米諸国以外では達成することの出来なかった先進諸国への仲間入りを果たしたのです。
その過程では、世紀の前半に欧米列強の帝国主義的侵略に伍して周辺諸国に進出し、戦争を繰り返して1945年の敗戦に至りました。しかしその後1950年代中頃までに戦後の復興を成し遂げ、1955年から73年までの18年間は、世界で奇跡と呼ばれる年率10%の高度成長を実現しました。その結果遂に比較可能なマクロ経済指標に関する限り、欧米先進国の産業化の水準に追い付いたのです。
【経済停滞に陥り社会不安が広がった20世紀末】
やがて米英独仏に日本が加わった先進5ヶ国グループ、いわゆるG5が形成されました。日本は1971年のニクソン・ショックがもたらしたドル切下げ、73年の変動為替相場制への移行と第1次石油ショック、79年の第2次石油ショック、85年のプラザ合意と87年のルーブル合意によるドルの大幅切下げなどに際し、G5の一国として、国際政策協調で大きな役割を果たしました。
しかし90年代に入ると、日本経済に変兆が現われました。先進国の中で成長率が最も高く、失業率が最も低かった日本は、先進国中最低の成長率となり、失業率は米英よりも高くなってしまいました。停滞した経済を背景に社会も荒れ、凶悪犯罪が多発し、自殺者が増加しています。
このような経済の停滞は、直接的にはバブルの崩壊に伴う地価や株価の暴落で多くの企業、金融機関、個人が債務超過に陥り、元気を失い、倒産・破産が増加しているからです。倒産しない場合も借金の返済、値下がり資産の損切り売り、不良債権の放棄や償却などの後向きの処理に追われ、景気回復に通じる前向きの支出拡大が出来ないでいます。
【旧来の追い付き型システムが変化に付いていけなくなった】
しかし、この経済停滞と社会不安の根本的原因は、70年代に欧米先進国に追い付いたにも拘らず、それ迄の「追い付き型システム」から脱却せずに今日に至ったからです。
明治以来の先進国に追い付くための日本型システムは、欧米先進国の産業技術、法律、制度などを学んで「官が民を指導し、中央が地方を支配する」システムでした。これは高度成長期まで一定の成功を収めました。
しかし先進国に追い付き、日本は自ら新しい産業技術、法律、制度などを創り出さなければならない時代に入ると、官は欧米先進国という手本を失って民を指導する能力を喪失し、官の指導や中央の支配がかえって民や地方の創意工夫に基づく自由な活動を妨げるようになったのです。
折りしも金融のグローバル化、IT革命の進展、少子高齢化の進捗、冷戦構造の終結などの大変化が進み始め、旧来のシステムはこれらに追い付いていけず、官僚は次々と失政を繰り返し、90年代の経済停滞と社会不安に立至ったのです。バブルの発生と崩壊、米国に対する情報化の遅れ、社会保障制度の危機、安全保障体制の不安、教育の荒廃などは、いずれも官主導のシステムが引き起こした失政です。
占領下で作られ、半世紀を経た日本国憲法と教育基本法も、時代にそぐわない所が出てきています。
【元気な民間、小さな政府へシステムを変える】
90年代の経済停滞と社会的不安を克服し、輝かしい21世紀の日本を築くためには、何よりも先ず、官が民を指導し、中央が地方を支配するシステムを改革しなければなりません。日本国憲法と教育基本法も、よい所を維持しながら、新しい時代に合わせて改正すべきです。
規制撤廃によって官僚の仕事を減らし、ルールを守る限り民間は官僚の介入を受けず、自由に活動できるようにするべきです。地方分権を進め、中央政府の仕事は司法、警察、外交、安全保障、基礎的社会保障、義務教育、基幹交通網などに限定すべきです。また町村の合併を促進し、地方分権の受皿となる人口30〜40万人の都市約300に再編し、地域の公共事業の決定、介護サービスの提供などを地方自体が自主的に行うように改めるべきです。そのための財源として、現行の公共事業の補助金相当額を地方自治体に一括交付し、また地方独自税源を整備すべきです。
以上によって中央政府が小さくなり、地方自治体が現在の3200から300程度になれば、中央・地方合わせた歳出総額150兆円の1割(15兆円)以上の削減は容易に実現します。それを財源に更に10兆円程度の所得課税、法人課税の減税を実施すべきです。
これによって、元気な民間市場経済と小さく効率的な中央・地方政府を作ることが、日本の構造改革、システム転換の基本でなければなりません。
【現行憲法の三つの原則の堅持と改革の四つの指針】
以上のシステム転換によって、21世紀の日本は創造力に富んだ生き甲斐のある社会に変わり、民間主導の自律的な経済成長が続くようになるでしょう。
それと同時に、日本国憲法や教育基本法を時代に合わせて改正し、自立国家日本の枠組みを整備しなければなりません。
日本国憲法の主権在民、基本的人権の尊重、平和主義の三大原則は、決して変えてはなりませんが、それを時代に合わせる必要があります。
その際の基本的指針は、次の四つです。@日本人の心と誇りを取戻す。A自己中心的な社会から、お互いを認め合う規律ある自由に基づく開かれた社会に改める。B民間経済の活力を維持し、誰もが生き甲斐を持って暮らせる社会をつくる。C地球の平和と環境の維持に自ら進んで貢献する。
【基本的人権の保障は国家社会の公共的基盤】
現行憲法には国家権力と基本的人権を対峙させる啓蒙時代のような書き方が見られますが、国民に対する基本的人権の保障は、現代日本の国家社会の安定と発展の公共的基盤でもあるのです。両者は調和するもので、対立概念として規定すべきではありません。
個人の権利は、他人の同様の権利を尊重する義務を伴うことによって、はじめて社会全体の秩序となり、国家社会発展の公共的基盤となるのです。個人の権利ばかりを説いて他人への思いやりに触れない現行の教育基本法にも、このような国家社会との調和の重要性を書き加えるべきです。
【軍隊は日本への侵略を防ぎ、国連の平和維持活動に貢献する存在】
そのような日本人の基本的人権を脅かし、生命、財産をも奪いかねない日本に対する侵略を阻止するために、日本が国防軍を持つのは当然です。それを憲法に明記すべきです。しかし、このような「急迫不正の侵害」以外には、個別的であれ集団的であれ、自衛権の名の下に武力による威嚇またはその行使を行わないという現行の憲法の立場を護るべきです。その意味で、現行憲法第9条の理念は継承すべきものです。
日本の安全を含む世界の平和は、現代では、日本一国の自衛権でも、特定国との集団的自衛権でも、守り切れるものではありません。日本を含むすべての国の軍隊が参加する国連警察機構を創り、国連中心の平和維持活動を強化する以外に、日本の安全を守る道はないと思います。その機構が出来る迄は、国連の安全保障理事会または総会の決議に基づく多国籍軍がその役割を果たすでしょう。日本の軍隊は、これに積極的に参加すべきです。
【改革する保守主義の政治勢力が結集した時「山が動く」】
以上のような構造改革やシステム転換、あるいは憲法など基本法の改正によって21世紀の日本を一新する力は、国民の多数に支持された政治勢力から湧き出るに力以上にはありえません。政治が主導しない限り、官僚支配・中央支配を打ち破る規制撤廃や地方分権は実行できないからです。
しかし、従来の自民党政治のように、政策の企画を官僚に任せ、官が民を指導し、中央が地方を支配するための橋渡しや口利きだけを仕事とする政官業癒着の利益誘導型政治では、改革など出来る筈がありません。
「日本一新」の明確なビジョンと整合的な政策体系を掲げる「自由党」に、国民の一層のご指導ご鞭撻を賜わりたいと思います。自由党の理念と政策を中心に「改革する保守主義」の勢力が結集した時、日本を一新する力が凝縮し、「山が動く」のだと思います。
2001年がそのような年の始まりになりますように、皆様と共に努力することを誓います。