新方式による7〜9月のGDP統計をどう評価すべきか(2000.12.4)
【新方式のGDP統計でも本年度の成長率は政府見通しを上回る】
新方式によるGDP統計が、本年7〜9月期まで発表になった。
7〜9月期の季節調整済み実質GDPは、前期比+0.2%(年率1.0%)の僅かなプラス成長となった。この水準は新方式で改訂された99年度の実質GDPの平均に対し、+1.6%の水準にある。したがって、今後10〜12月期と明年1〜3月期が前期比でゼロ成長であっても、2000年度の実質GDP平均は、前年平均比+1.5%となる。つまり残る2四半期がゼロ成長であっても、2000年度の平均成長率は1.5%と、政府改定見通しの1.0%を上回ることになる。GDPの推計方法を新方式にしたあとも、政府の2000年度見通しは過小である。
2000年度の国税の税収は、前年度に比べ2兆円強の自然増収となっているが、成長率が政府見通しを上回ることによって、本年度中の自然増収は更に増え、一般会計の公債依存度(決算ベース)は、99年度の42.1%をピークに、2000年度は38%前後に下がるであろう。政府は税収見積りを低く抑えて財政危機をあおりたいために、成長率見通しを過小にしているのであろうか。
【設備投資の成長率寄与度は年率5%に達した】
7〜9月期の内訳を見ると、このHPの「月例景気見通し」欄の“2000年11月版”で予測した通り、設備投資が大幅な増加(+7.8%)となり、反面公共投資は大幅な減少(−10.7%)となった。
ただし、小幅のマイナスもありうると見ていた個人消費と住宅投資は、前期である4〜6月期の水準が下方修正されたため(個人消費は+1.1%→+0.1%、住宅投資は−0.8%→−5.4%)、その低い水準に比して個人消費は横這い、住宅投資は+0.5%となった。
また純輸出は、輸出の伸びが頭打ちとなって−0.1%の成長寄与度となった。逆にいうと、国内需要は設備投資の大幅増加だけで+1.2%の成長寄与度となったため、公共投資の−0.8%の成長寄与度を差し引いても、全体として+0.3%の成長寄与度となった。
【2000年度下期も小幅のプラス成長か】
今後の10〜12月期、明年1〜3月期を展望すると、補正予算を考慮しても公共投資は減少傾向となり、住宅投資も4〜6月期、7〜9月期の住宅着工統計が前年比マイナスとなっていることから判断して、弱含みで推移しよう。
他方設備投資は、4〜6月期、7〜9月期の機械受注(民需、除く船舶・電力)が前年比それぞれ+20.2、+25.3%と大幅な伸びを示していることから判断しても、かなりの増加を続けるであろう。
この間個人消費は、雇用と賃金の不振や消費者コンフィデンスの沈滞からみて、横這い圏内の動きではないか。
以上を全体としてみると、今後の10〜12月期と明年1〜3月期がマイナス成長の傾向を辿る可能性は薄く、設備投資主導の小幅のプラス成長となる可能性が高い。
【2000年度の成長率は2%程度】
前述の通り、10〜12月期と明年1〜3月期が横這いでも2000年度成長率は+1.5%となるので、この2四半期が若干のプラス成長であれば、本年度の成長率は2%程度になるのではないか。
これは、旧方式のGDP統計で考えていた2.0〜2.5%成長よりは低い。その原因は前年度の水準が新方式によって上方修正された結果である(前年度の成長率は+0.5%→+1.4%)。
2%成長は決して勢いのよい景気回復ではない。とくに個人消費は弱いままだ。従って、2001年度の始めから設備投資の伸びか鈍化してくると、景気の先行き感は少しづつ弱気に振れてくる可能性があることに、注意すべきである。