自由党が政権の座にあれば実行する当面の経済財政政策(2000.11.7)

−本年度補正予算・来年度予算で実行すべきこと−

【このままでは介護保険料徴求と医療費負担増加で消費を一段と弱くする】
  総選挙直後に1万7千円台にあった日経平均株価が、一時は1万4千円台まで下がった。これには米国株価の下落や銀行・企業の株式持ち合い解消売りの影響も日々の動きとしては響いている。しかし、来年の日本経済と企業収益に自信があれば、下がった株に必ず買いが入り、株価は反発する筈だ。それが無いのは、自公保連立の森政権の下では、来年の景気回復持続に国民が自信を持てないからだ。
  森政権は本年10月以降40才以上の国民から毎月3千円近い介護保険料を徴収し始めた。これだけで、年間2兆円強の増税と同じデフレ効果を持つ。また健康保険法の改悪法案を数に物を言わせた強行採決で衆議院を通したが、これが成立すると高齢者の医療費の自己負担増加、40才以上の国民の医療保険料と介護保険料の上限引上げが実現する。

  これらはいずれも国民負担の増加であり、ただでさえ低迷している個人消費を一段と弱くするデフレ効果を持つ。

【補正予算は規模が小さく内容も乏し】
  更に、伝えられるところによれば、11月10日頃に提出される本年度補正予算は、事業規模では11兆という大風呂敷を広げているが、予算規模では4.8兆円、経済効果の確かな眞水では3.9兆円にすぎない。
  この予算規模は、昨年の補正予算の規模に比べると2兆円程少ないうえ、中身は相も変わらぬ公共事業費の地方バラ撒きが大半である。これでは来年の日本経済に対して財政面からデフレ効果が及ぶことは確実だ。
  補正予算の規模と内容が発表になった当日に株価が下落したのは、当然の反応と言えるだろう。

【保険料徴求や自己負担増加をストップして、消費税方式へ】
  自由党の政策調査会の副会長で財政経済部会長でもある私は、責任をもって断言するが、もし自由党が政権に加わっていたならば、次の@〜Cのような政策合意を作り、実行するであろう。
  @本年度下期からの介護保険料の徴収はストップする。そして、介護制度を国民全体支え、公正な負担を実現するため、来年4月から介護制度を社会保険方式から消費税方式に改める。
同様に、高齢者医療についても、社会保険方式から消費税方式に改め、これ以上の患者負担を避ける。
  少子高齢化が進む下では、数の減る生産年齢人口の保険料で、数の増える高齢者の介護や医療の給付を支える社会保険方式は必ず破綻する。老若男女を問わず、経済力に応じて消費の一定割合を拠出する消費税方式の方が合理的かつ公正である。
  消費税方式の導入に際しては、消費税の簡易課税制度と免税制度を廃止し、不公正な「益税」を撲滅する。
  また廃止される保険料の企業負担分については、外形標準の事業税を地方独自税源として導入し、吸収する(企業の追加負担はなし)。

 【所得課税と法人課税を広く薄い税制にして10兆円減税を実施】
  A所得課税と法人課税を薄く広く課税する簡素で分かり易い方式に改め、全体として10兆円の恒久減税を実現する。
  まず所得課税については、所得税と住民税の合計税率を3段階程度に簡素化し、全体の税率を引き下げる。子供や老人や身障者の扶養支援などの政策目的は、課税水準に達した所得を得る者のみが対象となる「所得控除」ではなく、誰でも対象となる「諸手当」によって実現する。これらによって課税最低限と税率の両方が下がり、広く薄い課税となる一方、扶養支援などの政策目的は諸手当の形で確実に被支援者に届く。
  法人課税では償却制度の適正化など税制全体のバランスを図りながら租税特別措置を原則として廃止し、簡素化する。他方、法人税の基本税率は更に引き下げる。これによって在来型の重厚長大産業に有利に働いていた複雑な法人税制を、広く薄い中立的な税制に改める。

 【行政改革による15兆円以上の歳出削減が減税の財源】
  B10兆円減税の財源となるのは、行政改革による15兆円(国・地方を合わせた歳出の1割)以上の歳出削減である。
  まず公共事業については、国家的プロジェクト以外は地方公共団体にまかせることとし、中央と地方の折衝にともなう無駄な経費や非効率的な投資決定を排除する。
  これに伴い、個別補助金を一括して地方自治体に交付するが、その受皿となって公共事業を自主的に決定できる人口30〜40万人以上の地方自治体を合併の促進で増やす。これによって地方自治体の数は現在の3200から最終的には300程度に減り、大きな行政経費の削減を可能とする。
  入札の適正化を通じて調達資材の価格引下げや工事の効率化を図り、民間工事に比して割高な事業単価を民間並みへ2割り引下げる。
  公共事業の見直しを、新規着工はもとより、継続事業についても恒常的に行うこととし、そのための行政評価法を制定する。これにより、諸外国に比して立遅れている生活関連社会資本や地方に比して立遅れている大都市圏の安全対策・交通インフラ等の社会資本が充実されることになる。
  徹底した規制撤廃と地方分権により、中央・地方を通じて官僚の仕事を減らす。
  省庁のOB天下り先となっている特殊法人は原則廃止し、民営化する。

【携帯型インターネット接続機器の無償配布】
  C21世紀の日本型情報社会の創設を促進するため、携帯型のインターネット接続機器を全国民に無料で配布し、誰もがその機器により、買い物、決済、行政サービスの利用、納税手続き等を、どこにいても出来るシステムの構築を目指す。民間の企業や金融機関、中央省庁や地方自治体は、このシステムに参加して商品やサービスの販売、資金の決済、行政サービスの提供などを行うため、大規模なeコマースの設備投資と行政電子化の公共投資を行うことになろう。
  この端末機器の単価は1万円に達しないので、子供を除く日本国民1億人に無料配布したとしても、その予算は1兆円以下である。しかし、それによって誘発される民間のIT関連設備投資と、中央政府・地方自治体の電子政府化を目指す公共投資の規模は、少なく見積もっても5兆円を超すであろう。

【本年度補正予算は眞水8兆円程度、来年度予算で構造改革がスタート】
  以上の@〜Cの政策を本年度補正予算と来年度当初予算に組み込む。
  補正予算には、@本年度下期の介護保険料徴収ストップ(約2兆円)と高齢者医療費負担の引上げストップ、A来年1月から実施する10兆円減税の来年1月〜3月分の計上、B生活関連社会資本と都市安全対策・交通インフラ関係社会資本への公共投資のシフト、Cインターネット接続機器配布(1兆円弱)の準備、を組み込むことにより、眞水で8兆円前後の規模とする。
  また、来年度予算には、@〜C全ての施策を組込み、個人消費と設備投資の誘発、公共投資の乗数効果の引上げ等によって民間需要主導の景気回復を下支えし、他方では行政改革による歳出削減に着手する。
  このような当面の経済財政政策を発表すれば、来年の景気持続に対する国民の不安は解消し、中期的には歳出削減による財政健全化の目標も立って、株価は現在の低迷を脱して回復し始めるであろう。
  想像力豊かで活力ある民間市場経済と、小さな効率的な政府に向かう構造改革の戦略も明らかになり、国民の間には21世紀日本の具体的なイメージが湧き、やる気が出てくるのではないか。