自由党の自自公連立に対する態度(2000.4.3)



【胸襟を開き真情を吐露し合った小渕・小沢】
  4月1日(土)の自自公3党の党首会談は、約50分かかったが、このうち30分は小渕総理・総裁と小沢党首の二人きりの会談であった。この中で二人は胸襟を開いて真情を吐露し合った。小渕総理は「自分は合意をすべて実現したいが、330人の大所帯の自民党をその方向に引張れず申し訳ない」と述べ、小沢党首は「ただ仲良くするだけならいくらでもやり方はあるが、それでは日本の改革が出来ないので、ご理解頂きたい」と述べた。その後正式の3党首会談となり、始めに小沢自由党党首は次のような意見表明を行った。

【残された政策合意の実現を迫った小沢党首】
  「平成10年11月19日にスタートした自自連立政権は、政策合意のもと、教育・福祉・税制・安保・地方分権等重要な合意は実行されずにのこされたままであるものの、しかし、議員定数の削減、閣僚ポストの削減、および政府委員制度の廃止と国会改革という成果を得たことは、評価されるべきである。
  一方、平成11年10月4日、自民・自由・公明により政策合意がなされ、連立政権がスタートした。それ以来約半年間、臨時国会を終え、今通常国会においても予算は成立し関連法案も次々と成立しつつある。総選挙がいつ行われてもよい一般状況の下、通常国会もあと事実上2ヶ月間となったが、3党政策合意の重要課題は殆ど実現していない。
  これでは、連立政権は単なる数合わせの野合という批判に反論できないことになる。また、連立政権の政策合意は、国民との約束であり、これを実行できなければ、国民を裏切ることになってしまう。
  したがって連立政権は、今国会中にこの政策合意を、勇気をもって実行しなければならない。
  このことについて、ぜひ総理・総裁のご決意をタイムスケジュールを含めて、お聞かせ頂きたい。」

【小渕首相は政策合意実現は不可能と言明】
  これに対して小渕首相は、二人切りで話し合った時とは正反対に「今国会でこれを実行することは、非常に困難である。不可能といっていいかもしてない」と述べ、神崎公明党代表も「今の総理のお話と同様に考える」と述べた。
  今国会の会期はまだ2ヶ月半もある。それにも拘らず、連立政権発足に際しての残された政策合意、例えば税制・社会保障の改革案の取りまとめ、安全保障の法整備、規制緩和による通信料の大幅引下げ、地方分権の推進(詳しくはこの文章の最後に付した「自自公連立政権3党政策合意要旨」参照)などを実行する意志がない、というのである。

【野田グループは脱党の大義名分を失った】
  これは少なくとも三つの意味を持っている。
  第一は、公党間の政策合意は国民との約束であり、それを実行することが出来ないのであれば、連立を解消しなければ国民に対して筋が通らない。この連立は政策を欠く野合であり、政策維持の数合わせに過ぎないことになってしまった。
  第二は、自由党を出て行こうとする野田グループの大義名分が無くなったということだ。何故なら、彼等は「連立にとどまって残された政策合意を実現する」というのが大義名分であったから、小渕首相がそれを不可能という以上、何のために連立にとどまるのか、根拠が無くなってしまった。
  第三は、伝統的な自民党政治にとっては、合意をうやむやにするのは常とう手段であり、またしてもその手法を使ったということである。55年体制の下で、自社間で何回も繰り返された建前と本音の使い分けは、自民党にとっては当然でも、自由党には通じない。現代の日本国民にも通じない筈だ。

【小渕総理は自からの真情と自民党の態度の板挟みとなった】
  この党首会談の数時間後に小渕総理は倒れた。二人だけの会談で吐露した真情と、正式会談で述べたこととの矛盾に悩み、ストレスが高まったのではないだろうか。いずれにせよ、総理が倒れたということは、国家的な危機である。このため自由党は4月3日(月)の全議員懇談会において、連立に対する態度決定を見送り、事態の推移を見守ることにした。

【野田グループの動機は個人個人の保身策】
  自由党を脱党する野田グループのメンバーをみると、確りした選挙地盤を持つ自民党出身者(海部、二階、中西氏など)と、自公の協力なしには当選に不安のある人達(野田、岡島、西野、松浪、三沢氏など)の二つのグループに分かれる。
  前者のベテラン議員は、もともと自民党体質の人達であり、改革や政策とはあまり縁が深くない。自民党への復帰の機会を狙っていたところによいチャンスが来たというのではないか。
  後者の選挙に不安のある人達は、自公に裏切られるリスクを犯しているのではないか。97年中に自民党の一本釣りに会って自民党に移った人達でさえ、東京22区のように、自民党の新人候補が公認となり、現職の移籍組が比例区に回されそうになっている。ましてや今頃逃げ込む人達のために、長年準備してきた自民党の地元候補を引っ込めるはずはないのである。

【自由党分裂に対する国民の審判は総選挙で】
  野田グループの旗揚げには自民党から資金が出ているという。その真意はともかく、自民党の自由党分裂作戦に、野田グループがまんまと乗せられたという事であろう。新党の党首も、当初予定の海部氏に自民党がノーと言ったために実現しなかったと言われる。これでは自民党のかいらいである。
  しかし、政策を大切にし、真剣に日本を改革しようという自由党が、政策は共通であるのにも拘らず二つに分かれるということは、日本の政治にとって、決してよいことではない。
  これに対する最終的審判は、来るべき総選挙において、国民が下すことになる。頑固に改革を追求する小沢自由党に対する国民の支持を私は信じたい。

 附   「自自公連立政権3党政策合意要旨」

○ 税制・社会保障
1) 基本的社会保障の財政基盤を強化するため、消費税の福祉目的税化(基礎年金・高齢者医療・介護の財源へ限定)、社会保険料の引き下げ・廃止のための改革案を取りまとめる。
2) 所得課税の整理・簡素化と、大幅な制度減税の改革案を直ちに取りまとめる。
○ 安全保障
1) 国際協力を積極的に推進し、国連平和活動への参加・協力をするため国連平和協力法を制定する。当面RKF本体業務の凍結を解除する。
2) 緊急事態に対応するため、有事法制として第1分類、第2分類を立法化する。また第3分類やそれ以外の項目についても法整備を行う。
3) 領域警備について、現行制度下での対応を強化するとともに、新報を制定する。
4) 現在の内外情勢を適切に反映した「安全保障の基本方針」を策定し、閣議決定する。
○ 規制緩和
1)成長分野での規制緩和を進め、電気通信接続料の大幅引き下げを行う。
○ 地方分権
1) 補助金の統合化を推進するため、従来の事業補助金を一括して交付する制度を創設する。
2) 永住外国人に対して、地方参政権を付与する。
3) 地方自治活性化のため、首長の多選を禁止し、他の選挙への立候補を一定期間制限する。