昨年10〜12月期のGDP統計の読み方(2000.3.13)
−本年1〜3年期からはプラス成長に転じる−
【個人消費、公共投資、外需がマイナス、設備投資はプラス】
99年10〜12月期の実質GDPは、前期比−1.4%(年率−5.5%)となった。
このマイナス成長に対する寄与度は、個人消費が−1.0%、公共投資が−0.5%、外需が−0.5%である。これを合計すると−2.0%となるが、反面で設備投資が前期比4.6%増加し、プラス成長に対する寄与度が0.7%となったため、全体では1.4%のマイナス成長にとどまったものである。
しかし、マイナスに寄与した個人消費、公共投資、外需の減少はいずれも一時的である。反面プラス成長に寄与した設備投資は、本年の回復へ向けての助走であり、持続性があると判断される。
【個人消費のマイナスは昨年10〜12月期が最後か】
まず個人消費のマイナスは、冬期ボーナスの落込みとコンピュータ2000年問題に伴なう買控えが主因である。この一時的な減少の反動もあって、例えば乗用車新車登録台数は、前年比でみて昨年10〜12月期の−3.9%のあと、本年1月は+3.9%、2月は+4.7%と増加している。同様に、1月の全国百貨店の売上高も前月比+2.8%と久方ぶりのプラスとなった。また消費動向全体を示す全世帯消費水準も前月比+2.1%の増加となっている(このホームページの「月例景気見通し」欄、2000年3月版参照)。
今後を展望すると、消費がボーナスの落込みに足を引張られるのは昨年10〜12月期が最後であり、本年3月期の企業業績の大幅増益を反映して、本年夏のボーナス以降は前年比プラスに転じ、消費回復要因の一つとなるであろう。
また本年1〜3月期まで鉱工業生産は5四半期連続で増加しているので、時間外手当や雇用の面からも個人消費には下支えが入ることとなろう。
【公共投資は本年1〜3月期から7〜9月期まで回復する】
次に公共投資は、昨年10〜12月期が発注の谷間となり、公共工事請負額で前年比−12.7%、GDPベースの実質公共投資で前年比−5.5%となったが、本年1月の公共工事請負額は前年比−6.1%とマイナス幅を縮小した。
これは、99年度公共事業予備費5,000億円の執行、99年度第2次補正予算の執行が本年1〜3月期から4〜6月期に実施されるためである。このため公共投資は再び回復し始める見通しであり、その走りが1月から出始めたものと見られる。
更に本年4〜6月期と7〜9月期には、前年同様景気刺激型に組んだ2000年度予算の執行期に入る。従って公共投資は昨年10月〜12月期に落込んだ後、再び回復すると見られる。
【年明け後の輸出は回復傾向】
最後に昨年10〜12月期の外需の減少は、輸出積出しの関係からたまたま輸出の伸びが落ちたためである。その反動で、1月貿易収支は、実質輸出が+3.0%、実質輸入は−5.6%となり、収支は昨年7〜9月期の水準に戻っている。
当面の円相場の動向やアジア経済の回復からみて、外需がこのまま落込んで行くとは考えられない。
【設備投資増加には持続性がある】
以上のマイナス要因に対し、唯一のプラス要因となった設備投資は、先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)からみて、回復傾向はますますはっきりしてくると見られる。
すなわち、機械受注(同上)は昨年7〜9月期に前期比+3.1%、10〜12月期に同+9.9%と2四半期連続で増加し、前年同期比も昨年10〜12月期に+6.1%と3年ぶりのプラスに転じている。
本年に入ってからも、1月の機械受注(同上)は前月比+0.8%、前年同月比+21.2%とこの傾向が続いている。
【民間投資主導型成長の芽が出ている】
以上を総括すると、昨年10〜12月期の実質GDPはやや大きなマイナスとなったが、マイナス要因はいずれも一過性であり、プラス要因は持続性があるので、本年1〜3月期以降は再びプラス成長に転じるのではないだろうか。
また昨年7〜9月期と10〜12月期の2四半期連続のマイナス成長で、それに先立つ1〜3月期と4〜6月期の2四半期連続のプラス成長分を吐き出し、昨年10〜12月期の実質GDPは一昨年10〜12月期とほぼ同じ水準となった。
しかし、実質GDPの内訳をみると、前年同期比でみて、設備投資(+3.1%)、住宅投資(+4.4%)、在庫投資(+31.4%)という民間投資はいずれもプラス、公共投資(−5.5%)がマイナス、個人消費(+0.1%)はほぼトントンとなっている。
これは、実質GDP全体としては成長していないが、内容的には民需、とくに民間投資主導型成長の芽が出ているということである。