自由党の政策はどの程の度成果を挙げたか(2000.2.7)

−衆議院予算委員会の基本的質疑から−

【予算委員会で自由党を代表して基本的質疑】
  2月3日(木)の衆議院予算委員会において、平成12年度当初予算に対する基本的質疑が、野党欠席のまま行なわれた。私は自由党を代表し、14時40分から50分間、総理、蔵相、経企庁長官、日銀総裁(参考人)と討論し、その模様はNHK総合テレビによって全国に放映された。
  この中では、98年1月の自由党結党以来の基本政策が、どのように現実の政策に反映され、成果を挙げてきたか、今後の課題は何か、という点に重点を置いて議論を展開した。
  NHKの放映や翌4日(金)の各紙朝刊でご存知の方も居られようが、以下、そのポイントを整理してみた。

【2年前に自由党の主張は橋本内閣に拒絶された】
  2年前の1月19日の同じ予算委員会の総括質疑で、私は当時野党であった自由党の三つの主張を橋本総理にぶつけた。@国民負担の9兆円増加、公共投資の3兆円削減、計12兆円の財政赤字削減を狙った97年度の超デフレ予算を改め、A2003年まで財政刺激を不可能にした財政構造改革法を廃止し、B金融システム安定対策を樹立しない限り、既に始まっているマイナス成長と金融危機を止めることはできない、という@〜Bの3点である。
  しかし当時の橋本内閣は、この自由党の三つの主張に対して、一顧だにしなかった。その結果、政策不況と金融危機は一段と深刻化し、その年の7月の参議院選挙において自民党は大敗を喫し、橋本内閣は退陣した。日本の選挙民が鉄槌を下したのである。
  代って登場した小渕内閣は、11月19日に自由党と政策合意(小渕・小沢合意)を結び、前述の@〜Bの自民党の政策をすべて受け入れ、翌99年1月に自自連立内閣が発足した。

【自由党の主張を取入れた小渕連立政権】
  自・自連立政権が作った98年度第3次補正予算と99年度当初予算(いわゆる15ヵ月予算)は、@財政再建最優先の超デフレ予算を払拭し、9.4兆円減税と10%の公共投資増加を実施した。A財政政策を縛る財政構造改革法は凍結した。B預金者の保護、破綻金融機関の処理、経営立直しの資本注入、に合計60兆円の枠組を作った。
  1年前の1月27日にも、私は予算委員会の総括質疑を行ったが、その時は与党として小渕内閣と相対した。そして、上記@〜Bの政策転換により、自自連立政権は必ず政策不況と金融危機を克服できると主張した。
  その年の2月には、日本の金融システムに対する国際的信用が回復し、国際金融市場におけるジャパン・プレミアムは消えた。
  当時民間のほとんどの調査研究機関は、99年度は3年目のマイナス成長になると予測していたが、自・自連立政権は0.5%のプラス成長を目標に掲げた。

【公的需要の追加だけではなくサプライサイド改善の減税策を打った】
  さて、それから1年経った現在、どうなったか。99年度上期の実質GDPは、98年度平均比プラス1.0%の水準にある。残りの99年10〜12月期と2000年1〜3月期が横這いであれば、99年度は政府の目標を上回り、早くも1.0%成長を達成する。
  2000年度については、99年度第2次補正予算と2000年度当初予算の公共投資に支えられ、上期中はプラス成長になるが、下期には補正予算を追加しない限り再びマイナス成長に戻るというのが、現在の弱気派の見方である。
  しかし、98年度第3補正予算から2000年度当初予算に至るまでの自・自連立政権の財政政策は、自由党の基本政策を取り入れ、単に公的需要を追加しているだけではなく、企業と個人にやる気を起こさせるサプライサイド政策を実施している。

【設備投資の下げ止まり、回復気配は法人減税の成果】
  すなわち、法人実効税率の国際標準並み40%への引下げ、100万円未満の情報機器の即時償却、中小企業ベンチャー振興税制、中小企業投資促進減税、中小企業技術基盤強化減税などは、赤字企業では利用する余地がなく、2000年3月期に増益になった企業ほど恩恵に浴し易い。また、所得課税の最高限界税率を65%から50%に引下げたことも、2000年2〜3月の確定申告時に減税額が自覚され、個人所得が増え始める本年以降のやる気を促す効果がある。
  法人企業統計季報、一般資本財出荷、リース契約などから判断すると、民間設備投資は99年中に下げ止まっており、機械受注から判断すると、2000年度上期から緩やかな回復過程に入りそうである(詳しくはこのホームページの「月例景気見通し」欄の2000年1月版と「What's New」欄の“2000年中に民需主導型成長が始まる” (2000年1月元旦)を参照せよ)。これは、自由党が主張し、連立政権が取り上げた前記のサプライサイド政策が効き始めたことが一因とみられる。この政策効果は、今後増益が続けば続くほど大きくなってくるであろう。

【民需主導の回復が始まった後2年間は中立的な財政運営】
  こうして2000年度上期に公的需要が出ている間に民間設備投資が立上り、下期には増益を反映したボーナス増加で個人消費も着実に回復し始めれば、公的需要から民間需要へのバトン・タッチが完了する。
  幸いにして、このような形で民需主導型の自律的回復が始まった場合、2001年度以降の財政運営はどうあるべきか。
  自由党は、小渕総理の諮問機関である経済戦略会議が答申しているように、2001〜2002年度の2年間は、増減税なし、支出横這いの「中立的財政運営」を行うべきであると考える。決して短兵急な「財政再建最優先」に転じ、97年度の失敗を繰り返してはならない。97年度は国民負担増9兆円、公共投資削減3兆円、合計12兆円の財政赤字縮小を狙った超デフレ予算を執行し、経済を2年連続のマイナス成長に落込ませ、逆に20兆円もの公債発行増加を招いてしまった。

【インフレ・ターゲティング政策に反対する】
  国民は、「財政再建最優先」の愚を繰り返さないかという心配と並んで、調整インフレ政策が始まるのではないかという恐怖を感じている。それは、自民党の中でインフレ・ターゲティング政策の検討が始まったからだ。
  5〜10%という高いインフレ率に悩む先進国の中には、2〜3%のインフレ率を金融政策の目標として設定している国がある。しかし日本のインフレ率は、2年連続マイナス成長の下でゼロ%ないしはマイナス(物価下落)となっている。これを2〜3%のインフレ率に引上げることを目標にすると、日銀の国債引受けを始めなり振りかまわぬ金融緩和政策が行なわれることになり兼ねない。その結果、インフレ率が上昇し始めると次第に加速し、2〜3%にとめることなどは出来なくなる。これは典型的な調整インフレ政策である。
  自由党は、インフレで国民から収奪し、財政赤字を縮めようという意図を秘めたこのような政策には、断固反対する。

【ペイオフ延期とデノミをもっと国民に説明せよ】
  最後に、小渕連立政権の政策のうち、ペイオフ解禁延期とデノミぐらい国民に誤解されている政策は珍しい。小渕政権と自自公3党は、もっと国民に説明しなければならない。
  ペイオフ解禁の1年延期は決して改革の遅れではないし、日本の金融システムに対する国際的信用が低下したという事実はどこにもない。(詳しくはこのホームページの「What's New」欄“ペイオフ解禁一年延期の意味”(2000.1.11)参照)。
  デノミは、20世紀の大インフレがもたらした負の遺産を清算し、21世紀の円の国際化を進めるための世紀の大事業である(詳しくはこのホームページの「What's New」欄“鈴木淑夫著『デノミの政治経済学』の出版” (99.12.3)および、「雑誌論文」欄“経済を見る眼”(1999年12月2日号)参照)。自自公のデノミPTは、出来る限り早く検討を了え、正式に提案する予定である。