2000年中に民需主導型成長が始まる(2000.1月元旦)



明けましてお目出度うございます。
“自信喪失の90年代”は終りました。
今日から新世紀に向って再挑戦が始まります。
元気を出して活力ある未来に向って走り出しましょう。

  これは、東京都第22区(府中、調布、狛江、稲城の4市が選挙区)の自由党次期衆議院議員選挙公認候補予定者  鈴木盛夫(33歳、私の次男)の年頭挨拶文の冒頭である。次代を背負う若い人達が、この意気込みで“失われた90年代”から脱出し、活力ある21世紀に向けて走り出して欲しい。2000年をその助走期間にして欲しい。

【民需主導型成長の二つの好循環が出てくる】
  2000年の日本経済には現実にその条件が芽生えてくる。それは二つの意味で、民需主導型成長の好循環が始動するからだ。一つは設備投資回復と総需要拡大の好循環である。もう一つは、生産上昇→賃金・雇用改善→消費回復→生産上昇、の好循環である。
  この二つの走りは、既に“失われた90年代”の最後の年、1999年に現われている。自信を喪失し、批判ばかりしている悲観論者の目には映っていないだけだ。

【「法人企業統計季報」の設備投資は既に下げ止まっている】
  設備投資の基本統計は、大蔵省調べ「法人企業統計季報」である。GDP統計の民間設備投資はこの統計から推計される(99年7〜9月期に限り、この統計が発表される前に推計されたので間違って弱く出ているが、10〜12月期のGDP速報が発表される2000年3月には「法人企業統計季報」に基づいて7〜9月期の設備投資が上方修正される。)
  「法人企業統計季報」によると、設備投資の前年同期比マイナス幅は、98年10〜12月の−18.7%が最大であった。その後99年1〜3月期は−10.5%、4〜6月期は−13.4%、7〜9月期は−9.6%とマイナス幅を縮小している。前期比では、1〜3月期プラス、4〜6月期マイナス、7〜9月期プラスである。設備投資は一高一低のうちに、既に下げ止まっているのだ。
  とくに中小企業非製造業(GDPベースの設備投資の約4割)は、99年4〜6月期に前年同期比+3.1%と6四半期振りにプラスに転じ、7〜9月期には同+6.0%とプラス幅を拡大している。

【一般資本財出荷からみても設備投資は下げ止まっている】
  同じ傾向は、設備投資の速報的情報として利用されている鉱工業統計の一般資本財(輸送機械を除く資本財)出荷にも現われている。
  この出荷は、季節調整済みの前期比でみると、99年1〜3月+3.6%、4〜6月−6.6%、7〜9月+5.4%と、一高一低の形が「法人企業統計季報」の設備投資と同じである。
  更にこの一般資本財出荷は、11月まで出ているが、11月の指数は105.3と7〜9月平均の101.8を3.4%も上回っている。前年同月比も+7.2%だ。12月の数字次第では、10〜12月期も前期比と前年同期比の両方でプラスになるかも知れない。
  ただし、この一般資本財出荷には輸出も含まれている。アジア向け輸出が急回復しているので、それを割り引かないと国内の設備投資動向とは一致しない。従って、11月の前年同月比+7.2%から、直ちに設備投資が回復し始めたと判断するのは早計であろう。
  しかし、一般資本財出荷によっても、設備投資が既に下げ止まっていると判断することは出来る。

【2000年度初頭から設備投資は上向く可能性】
  更に、設備投資の先行指標である機械受注(民需、船舶・電力を除く)をみると、99年7〜9月期に前期比+3.1%となったばかりではなく、99年8月、9月、10月と3ヵ月連続して前月比でプラスとなった。しかも99年10月の水準は、前年同月比+5.5%と実に19ヶ月ぶりのプラスに転じた。
  それもその筈で、10月の受注水準は98年7〜9月期以来の高水準である。今後の動向を見極めなければならないが、このまま回復していけば、6〜9ヶ月後の2000年度初頭から設備投資は上向きに転じることとなる。
  ビンテイジが長くなった機械の更新投資、ストック調整が完了した資本の拡大投資、IT革命関係の技術革新、新製品開発、新分野進出の新規投資が揃って出てくるのも、そう遠い話ではない。それが乗数効果を通じて総需要を拡大し、総需要拡大が加速度原理を通じて設備投資を拡大する好循環が始動するに違いない。

【生産は年率8%で急回復している】
  次に生産上昇と消費拡大の好循環の芽生えをみよう。
  鉱工業生産指数を曜日構成も調整できるX-12ARIMAで季節調整すると、97年7〜9月期から6四半期連続で前期比マイナスとなった後、99年1〜3月期以降10〜12月期(12月は予測指数)まで、4四半期連続で前期比プラスとなった。更に2000年1月の生産予測指数は、99年10〜12月期比+3.1%の水準にあり、2000年1〜3月期に5四半期目の連続上昇を記録することは、ほぼ確実である。
  この2000年1月の予測指数の水準は、前年同月を8.0%も上回り、この1年間の生産上昇スピードがかなり早いことを示している。更にこの水準は、97年10〜12月頃の水準と同じであるから、雇用、賃金などの状況がこの頃と同じになっても不思議はない。

【失業者と失業率は97年10〜12月の水準まで改善】
  事実、99年11月の完全失業者数は296万人、完全失業率は4.5%と、ピーク時の99年7月(完全失業者330万人、完全失業率4.9%)から34万人減、0.4%ポイント低下し、97年10〜12月期平均(完全失業者296万人、完全失業率4.4%)とほぼ同じ水準まで改善した。
  他方雇用面をみると、99年11月の常用雇用指数は前年比−0.2%にとどまっているが、パートタイム労働者は前年比+3.0%、時間外労働時間は前年比+3.1%に達している。要するに企業は、常用雇用者の時間外労働やパートタイム労働者の増加で生産拡大を賄っている段階である。従って賃金も、時間外給与だけみると99年11月は前年比+5.7%に達している。
  この状況は、遠からずパートタイム労働者の雇用や時間外労働の延長の限界に突き当たり、常用雇用の拡大が始まる兆とみることが出来る。その時は、本格的な雇用・賃金の回復が始まり、個人所得の回復を通じる消費拡大→生産上昇が始まるであろう。
  また99年度は3年ぶりの増益となっており、99年12月に支給された冬夏型ボーナスは久しぶりに前年を上回った。2000年夏のボーナスからはボーナスが全体として前年を上回り、この面からも個人所得の回復が始まるであろう。

【自律的持続的成長を基盤に構造改革を進めよう】
  2000年度の当初予算は、99年度に続き景気刺激型で組まれた。それに先立って、6.8兆円の99年度第2次補正予算の執行もある。この政策効果が続く2000年度上期中には、上記の二つの好循環が始動するであろう。
  そうなれば2000年度下期には、公的需要から民間需要へのバトン・タッチが行なわれ、民需主導型の成長が始まる。
  この自律的、持続的成長によって“失われた90年代”から脱出し、それを基盤に21世紀の情報化社会、少子高齢化社会に備えた構造改革を進めよう。
  我々はいまその曲がり角に立っている。