自由党はなぜ連立に留まったか (99.12.17)
【リストラや行革の世の中で自由党の国会議員削減提案に抵抗する自公民】
第146回臨時国会が閉会した12月15日(水)夜、自由党は小渕自自公連立政権「離
脱」の瀬戸際まで行った。
民間が歯を食いしばってリストラを実行し、大勢の失業者が巷にあふれ、公共部門で
は行政改革によって国家公務員を10年間で25%削減し、地方自治体の数(従って首長
と地方議会の数)を合併の促進によって現在の3,200から1,000に減らそうとしている時、
その政策を推進している国会議員が自らの数を減らさなくてよいのか。
このような思いから、自由党は国会議員100人(衆参両院50人づつ)の削減を提案し、取敢えず衆議院50人削減の走りとして20人を比例区で削減する法案を、自自両党合意の下、自自両党議員の議員立法で衆議院に提出した。
この法案は、自自公連立政権発足の際の3党合意によって、第146回臨時国会の冒頭で処理することが約束された。
【国民に対する約束を平気で破った自民・公明両党】
公党間の正式合意は、国民に対する約束である。
それにも拘らず、自民党と公明党は野党の民主党などと通じ、公選特別委員会でこの法案の審議に入らず、臨時国会最終日の本会議で「継続審議」として公選特委に差し戻すという本会議の決議を衆議院議長裁定で行った。委員会に差し戻された法案がそのまま審議されなければ、廃案となる扱いである。
自由党はこれに抗議するため、「継続審議」を決める委員会と本会議の際、席を立って退場した。
要するに自民党、公明党、民主党、共産党など、自由党以外のすべての政党は、自分の身を切る国会議員削減法案に反対なのである。そのため自民党と公明党は、国民に対する約束である公党間合意を平気で踏みにじったのである。
【自民党幹部は自由党つなぎとめ工作を執拗に行った】
12月15日(水)の国会閉会後、自由党の国会議員全員が党本部に集合し、今後の対応を協議した。国民に対する約束である公党間の合意が破られた以上、連立を解消すべしという意見は強かった。
これに対して小渕総理は小沢党首と会談し、本年1月以来、景気回復を始め多くの成果を挙げた自自連立を継続してくれと強く要請した。多くの自民党の役員や幹部からも、連立を離脱しないで欲しいという要請が電話で寄せられた。村上自民党参議院議員会長などは、自由党を説得するため、自ら自由党本部に乗り込んできた。
もし自由党が連立を離脱すれば、自公連立政権となるが、この体制で来年の第147回通常国会を乗り切って7月の沖縄サミットにこぎ着ける自信は、自民党幹部に全くない。自民党の下部組織と創価学会の下部組織は犬猿の仲であり、両党の支持層も明確に異なっている。このような政権は持つ筈がないし、国民の目からは数を目的とした「野合」であることが明白になる。内閣支持率は更に下がり、来年10月までに行われる総選挙では自公両党とも惨敗するであろう。
そのことが分かっているので、自民党幹部の自由党に対する説得は執拗であった。
【自民党の内部にも亀裂が走りかけた】
16日(木)になって分かったことであるが、この時自民党内の反主流派は、一箇所に集まり、自由党が政権を離脱した後に小渕総理・総裁の責任を追及して退陣を迫る相談をしていたと伝えられる。そのあとの政権は、民主党と連立することも考えていたと言われる。
事の真相は定かではないが、自民党主流派の幹部達が一生懸命自由党を引留めたのは、このような自民党内部の主流・反主流間の争いの反映でもあったようだ。
【もう一度小渕総理を信用することにかけた小沢党首】
4時間にも及ぶ自由・自民の折衝の結果、「定数削減法案については閉会中審査を行ない、来年の通常国会冒頭に可決し成立を期することとする」という合意書が、自由党の藤井幹事長と自民党の森幹事長の間でサインされた。そして合意書の別紙には、「なお、自由党はこの合意が実施されない場合には、直ちに、自自公連立政権を解消することを表
明した」と政権離脱の予告が付けられた。
この直後の記者会見で小沢党首は、「小渕総理等の善意と誠意をもう一度期待して信頼し、その実現にかけてみようと考えた」と述べている。公党間の合意を踏みにじられたあと、もう1回相手を信じてみようというのである。
【来年度の予算、税制改正など基本政策を正しく決めるために離脱を1ヵ月延ばしたことになるのか】
しかし、臨時国会の開会中でさえ定数削減法案の審議を最終日までしなかった自民
党、公明党や野党が、国会閉会中の年末年始に集って審議をするであろうか。しかも自由党以外の各党の本音は、国会議員の数を減らすこの法案に反対なのである。
結果は1月の第147回通常国会の開会までに判明する。この定数削減法案の閉会中審査が行なわれず、第147回通常国会の冒頭で可決成立しなければ、自由党は政権を離脱する。その場合は、来年度当初予算や税制改正などの基本政策を正しく決め、来年度の日本経済を確実に回復させるために、自由党は政権離脱を1ヵ月延したことになる。