いわゆる「自自合流」騒動の真相 (99.11.16)

【小沢党首が「自自合流」を申入れた事実はない】
  小沢一郎自由党党首が、青木官房長官(小渕派)と綿貫小渕派会長の三人で11月6日(土)に会談した際、自由党の自民党への合流を提案したという11月10日(水)付の読売新聞一面トップの報道ほど、自由党にとって迷惑至極でダメージの大きい報道はない。
  小沢党首は、自分の方から「自自合流」を提案した事実はまったくないと、11月11日(木)の記者会見でも、11月14日(日)の報道2001(フジTV)でもきっぱりと否定している。私自身も小沢党首から直接そのように聞いている。私は小沢党首の性格から考えて、小沢党首の言う通りだと確信している。青木、綿貫の両氏も、開かれた場所で小沢党首の方から「自自合流」を提案したとは一度も言っていない。
  それもその筈で、真相は小沢、青木、綿貫(三人は旧田中派以来の旧知の仲)の懇談の席上で、青木、綿貫両氏の側から「自自合流」を話題に出したのである。旧知の仲なので、小沢党首もその話題に加わったようである。しかし、小沢党首の側から「自自合流」を申入れたというのは、まったくのデタラメである。
 
【本質は「小沢カード」を使った自民党内の派閥争い】
  では、何故自分の方から話題に出した「自自合流」を、青木、綿貫の両氏は小沢党首が提案したという話にすり変えて、読売新聞に流したのであろうか。
  これは、自民党内部の派閥抗争が、「小沢カード」を使って展開されたということであろう。つまり、小渕派は「自自合流」という「小沢カード」を持っていることを党内の他派閥に示し、いざとなればもっと大きな派閥になり、小渕氏の後継者が居ないと言われる小渕派に小沢氏という後継者を作ることも出来るのだということを、示威行為として示したかったのであろう。だからこそ、青木、綿貫という小渕派の大幹部が小沢氏との懇談で話題に持出し、読売新聞にリークしたのである。
  江藤・亀井派は、小沢自由党と政策面で最も近く、一番仲の良いのは自分達だと自負しているので、直ちに「自自合流」賛成の態度を示した。つまり「小沢カード」は小渕派の独占ではなく、自分達も持っていることを示したのである。

【まぼろしの「自自合流」は森派、加藤派、山崎派に対する警告】
  そうなると幹事長派閥の森派も、「カヤの外」に置かれてはまずいと判断したのか、11日(木)や12日(金)には、「自自合流」に前向きであるかの如き発言を森幹事長が繰り返した。森派も「小沢カード」を知らなかったわけではないというポーズを示したかったのではないか。
  しかし、派内の会長代理である小泉氏が、加藤氏(加藤派会長)や山崎氏(山崎派会長)と声を合わせて、「自自合流」反対を大声で叫んでいるのでは、森派は一体何を考えているのかと言うことになってしまう。
  要するに、小渕派が示威行動として示した「小沢カード」は、狙い通り、森派、加藤派、山崎派に対する強烈な警告、ないしはパンチとして効いたのである。その意味で、「自自合流」は、自民党内の派閥争いが生み出した「まぼろし」である。

【まぼろしの「自自合流」でも自由党にはダメージ】
  しかし、たとえ「まぼろし」であっても、小沢党首や自由党にとっては極めて迷惑な話である。支持者が動揺したという意味では、大きなダメージを受けた。他人の名前を使って内輪もめするなどということは、けしからんことである。
  怒った我々自由党は、介護制度を巡る自自間の意見の相違を理由に、第2次補正予算に反対し、自自公連立を解消することもあり得るという態度をにじませた。私の許には、多くの自由党支持者から、「自民党にコケにされて黙っているのか」「直ちに連立を離脱せよ」という声が沢山寄せられている。
  この支持者の声は、自由党にとって本当にありがたいことだと思い感謝している。しかし、ここは冷静に判断すべきではないか。

【介護制度を巡る自自公合意には解釈で対立の余地あり】
  介護制度に関する自自公合意には、残念ながら解釈の対立が生まれる余地がある。
  「保険料に係わる部分については実施しない。この措置にかかる財源については国が負担する」となっているのは、自由党の主張が100%通って、介護「保険」制度はストップさせるという表現である。しかしその直後には、「なお2号被保険者については、(中略)国が医療保険者に財政支援を行う」と書いてある。2号被保険者とは、介護保険制度上の40〜64歳の人々で、この人達からの保険料はこの人達が加入している医療保険組合が医療保険料に上乗せして徴求する。その上乗せをストップする以上、財政支援が必要というのが自民党の主張であった。
  自由党は、これは技術的なことなので合意に入れる必要はないと主張したが、時間切れで譲らざる得なかった。
  しかし、その結果、介護制度ではなく介護「保険」制度を認める合意であるとの解釈が自民党側に生まれた。「保険料に係わる部分については実施しない」という表現が「保険制度は実施しない」という意味だという自由党の解釈に対し、介護「保険」制度を前提とした表現(「2号被保険者」)が入っていることは、「保険」制度を認めているのだという自民党の解釈が対立している。

【「合流」も「離脱」もせず総選挙でははっきり対決する】
  その上、平成11年度の第2次補正予算案に、保険料なしで12年度4月1日から介護制度を実施するための国の財政負担9千億円を計上しようと政府・自民党が提案してきた。これは12年度に使う資金を11年度予算に計上しようというのであるから、財政法上の「単年度主義」に違反しているとの疑義がある。ここでも、自自は対立している。
   しかし、解釈が対立し得る政治的な合意文書や単位年度主義違反の疑義を理由に、他の多くの政策合意(景気対策、安全保障、行政改革、経済構造改革など)の実行をホゴにするような連立離脱をしてよいのか。対立は対立としてはっきりさせ、自由党の主張を1年以内に行なわれる総選挙の際の公約として国民に訴え、自民・公明と対決することとし、ここは連立を維持して合意に達した他の改革を粘り強く実行すべきではないのか。
  これが私の現在の心境である。
  「合流」も「離脱」もしない。その代り来るべき総選挙の時こそ、はっきり自公と対決し、どちらの政策が正しいか国民の審判を仰ぎたい。