自自連立政権の成果と自自公連立のハードル (99.8.19)

【自由党の連立離脱を支持する国民の声】
  自由党連立離脱の可能性が大きく報じられた先週中(8月9〜13日)、私の許には二つ
のまったく正反対の声が多くの支援者から寄せられて来た。
  一つは、断固連立を離脱すべしという声である。自由民主党は、小渕、小沢の自自党首間
合意に基づき、衆議院議員の定数を比例区で50人削減する法案を自自両党の議員立法として
国会に提出した。それにも拘らず、後から連立に加わろうとしている公明党の反対に配慮し、
審議に入ろうともしない。これは公明党の主張を自自連立合意に優先させるものである。従っ
て、自自間の政策合意は、今後も公明党の反対で破棄されるケースが出よう。
  そうだとすれば、自由党の政策的主張は政府・与党内で次第に実現が難しくなるのではな
いか。それなら連立与党にとどまるべきではない。自民党の公明党への配慮で政府与党内では
通らない政策を、自由党独自の政策として、連立政権を離脱した上で国民に直接訴え、自公連
立批判を展開すべきである。そうすれば、次の総選挙で自由党に対する国民の支持は増え、自
民党内部からも同調者が出るかも知れない。

【自由党に連立継続を求める国民の声】
  このような連立離脱論に対し、他方からは強い連立継続論も私に寄せられた。
  確かに、後から来る公明党への配慮で、先に自自党間で合意した衆議院の定員削減法案を
あいまいにするのは、筋が通らない。自民党は、たとえ公明党が反対しても法案の審議に入
り、会期末まで出来る限りの努力を払うべきである。
  しかし、この問題を別にすれば、昨年11月19日の小渕・小沢両党首間の政策合意は、
大部分実行に移された。その結果、経済はようやく立直ろうとしているし、株価は景気回復を
先取りして、昨年10月のボトムから4割も上昇している。ガイドライン法案など国家存立の
基本に係わる懸案の法案も、次々と成立した。中央省庁改編、地方自治推進、政府委員制度廃
止などの行政改革も、ようやくその第一歩を踏み出した。
  このように、日本の前途にようやく光明が見え始めたのは、自由党の筋の通った政策を連
立政権の中で自民党に呑ませたからに外ならない。
  そのような時に、自由党が連立を離脱し、政策合意の無い数合わせだけの自公政権が出来
たら日本はどうなるのか。日本の前途を思い、日本国民の為を思って、自民党の不誠実を我慢
し、連立にとどまるべきだ。

【何故自由党は連立にとどまる決断を下したか】
  以上のような二つの相反する国民の意見に十分耳を傾けながら、通常国会最終日の8月1
3日に、自由党は連立にとどまる決断を下した。自民党が努力して、衆議院の定数削減法案の
審議に入り、これを継続審議とした上で、次期国会の冒頭で処理することが、自自党首間合意
として決ったのが、直接のきっかけである。冒頭の処理では、次の総選挙に間に合う形で定員
削減を決めるという合意になっている。もっとも削減数は必ずしも50名ではなく、いわゆる
段階的削減になるかも知れない。
  このような妥協を自由党がしたのは、やはり日本のために、自自連立政権の成果をもっと
はぐくみ育てて行かなければならない、と思ったからである。勿論、連立を離脱した場合で
も、日本がめちゃくちゃになるとは思っていなかった。自公政権に対する国民の批判が強ま
り、自民党の内部でも動揺が起こり、半年以内に自公連立の崩壊、場合によっては総選挙とな
り、自由党が自らの政策実現に向けて政権に戻る日が来るに違いないと思っていた。その意味
で、日本の混乱は短期で終わると考えていた。
  しかし混乱は混乱である。出来ることなら避けたい。それが連立にとどまる決意につなが
ったのである。

【自自連立の五つの成果を発展させ補強するための新たな政策合意を目指す】
  連立にとどまると言っても、自由党は新たな政策合意が出来なければ連立は組まない。従
って、自民党の総裁選挙が終わる9月下旬以降に、自自公3党間で政策合意が出来なければ、
3党連立内閣は発足しない。これから2ヵ月間に3党政策協議が進むかどうかが、今後を決め
る。
  政策協議に当たっては、自由党はこれ迄の自自連立政権の成果を発展させ、足りない部分
を補強する観点から考えることになろう。
  このホームページの「国会活動/発言」欄の“最近の国会活動録−第145回通常国会活動報
告”に詳しく書いたように、自自連立政権は主として五つの分野で大きな成果を挙げた(詳し
くは同欄参照)。
  その五つとは、@経済危機を克服する景気対策(9.4兆円減税、10%の公共事業増加など本
年度予算、20兆円の特別信用保証枠新設、中小企業支援を含むサプライサイド政策など)、A
簡素で効率的な政府を目指す行政改革(中央省庁再編法、地方分権推進法、衆議院定数削減法
案提出など)、B明治以来の官僚主導システムの転換(政府委員制度廃止、副大臣・政務官制
度導入など)、C少子高齢化に備えた高齢者社会保障財源の消費税化(本年度予算総則、年金
改正法など)、D国家存立の基本に係わる法制備(ガイドライン法案、国旗・国家法案、住民
台帳法案、情報公開法案など)である。

【自自公連立内閣発足の前に政策合意が必要】
  以上の五つの分野のうち、早急に発展させ、補強しなければならない分野は、@とCとD
であろう。AとBは極めて重要な分野であるが、今国会で成立した諸法案の実施を確実にし、
そこに「魂を入れる」ことが大切な仕事になる。
  @については、第2次補正予算と来年度当初予算を引続き景気刺激型に編成すると共に、そ
の内容を経済構造転換促進型にしなければならない。またそのための規制緩和、構造改革など
の諸施策が要る
  Cについては、来年4月から発足する介護保障制度の財源問題、今後5年間の基礎年金改
革の在り方、高齢者医療保険制度の抜本的改革など、緊急に政策協議を進めるべき課題が山積
している。
  またDについては、「周辺」有事に対するガイドライン法は成立したが、肝心の「国内」
有事に対する危機管理法制が整備されていない。周辺と国内の中間に在る「領域」警備につい
ての立法も必要である。更に船舶検査や国連の平和維持軍(PKF)への参加凍結の解除もあ
る。
  このように、経済構造改革と並んで、高齢者社会保障や安全保障についての政策合意が、
自自公連立内閣発足の前提として必要である。逆に言えば、これが自自公連立内閣の発足に対
するハードルになるのではないか。