10年間3段階の経済再生計画を実行に移せ (99.3.1)

−経済戦略会議の最終報告−

【10年間3段階の再生計画を明示した最終報告】
  小渕総理直属の諮問機関である経済戦略会議(樋口廣太郎議長)は、予定通り2月26日に「最終報告」を小渕総理に提出し、公表した。大枠は昨年12月23日に公表した「中間とりまとめ」と大差ないが、大きな前進が一つある。
  それは、日本経済再生の期間を10年間と明示し、その間を3段階に分け、経済再生のタイム・スケジュールと各段階の戦略的ポイント(どの政策が優先し、経済再生の主導力となるのか)を明らかにしたことである。
  この10年間3段階の再生計画は、私がこのホームページの2月15日付「What's New」欄、“経済戦略会議の「中間とりまとめ」に対するコメント”で提案し、インターネットを通じて経済戦略会議に送り、更に2月16日の衆議院予算委員会の景気・財政・金融の集中審議で、小渕総理、宮沢蔵相、野田自治相、堺屋経済企画庁長官、太田総務庁長官に質問し、賛成の答弁を頂いた内容と同じである(詳しくはこのホームページの2月22日付「What's New」欄“日本経済再生の戦略を打ち立てる時”参照)。

【看視機関の設置は見送られた】
  樋口議長からは、私の予算委員会の質疑をビデオテープで取寄せて観たという連絡があり、また数名の学者委員から、私のこのホームページのコメント(2月15日付「What's New」欄)を読み、タイム・スケジュールと各段階の戦略的ポイントについての提案には賛成なので、残された日数は少ないが努力したいという連絡を頂いた。
  私はこれらの方々のご努力により、私の提案が「最終報告」に活かされたことを、心から喜んでいる。
  しかし、私の提案で活かされなかった部分もある。それは、日本経済が10年間3段階の再生計画通り推移しているかどうかをチェックする看視機関(follow-upの機関)を作れという部分である。これは経済戦略会議が反対したのではなく、官僚が賛成しなかったためではないかと思う。しかし経済戦略会議そのものは解散せず、時折集まるようなので、是非follow-upの機能を果して欲しい。

【景気回復、構造改革、財政収支バランス改善の順序が大切】
  10年間3段階の再生計画が何故そんなに大切かと言えば、景気回復、構造改革、財政収支改善の三つの目標を同時に追求し、三つとも実現しないばかりか、日本経済を戦後例をみない危機的状況に追い込んだ橋本内閣の愚を繰り返さないためである。
  10年間3段階の再生計画は、次の通りである。
第1段階1999〜2000年度 …………  景気回復最優先のマクロ経済政策、集中的なバブル経済清算
第2段階2001〜2002年度 …………  潜在成長率プラスα(デフレ・ギャップ縮小分)の民需主導型安定成長経路に復帰、マクロ経済政策は中立的
第3段階2003〜2008年度 …………  構造改革完成期、2008年度に財政プライマリー・バランスを回復


【潜在成長経路に乗る前に財政赤字縮小に取り掛かってはならぬ】
  この10年間3段階の再生計画は、このホームページの2月15日付と22日付の「What's New」欄で提案したタイム・スケジュールおよび各段階の政策戦略と同じである。
  この3段階戦略で最も大切なポイントは、1999〜2000年度に日本経済がプラス成長に転じた後、日本経済が財政刺激なしに(中立型財政政策の下で)、民間主導型で潜在成長経路を歩んでいることを確認し(2001から2002年度)、しかる後、最後に財政のプライマリー・バランス回復を6年間かけて徐々に実現することである。そしてこの10年間、一貫して規制緩和、地方分権などの経済、行政の構造改革を実施し、簡素で効率的な公共部門と活気に満ちた民間部門を作り上げることだ。

【財政赤字を憂える会は経済危機を作ったA級戦犯達の集り】
  去る2月25日に国会議員による「財政赤字を憂える会」が発足した。ここに集った多くの政治家は、橋本政権(自社さ連立)の下で、1997年度の超デフレ予算(9兆円の国民負担増と3兆円の公共投資削減)を推進した人達だ。その結果12兆円の財政赤字を削減するどころか、日本経済を2年間連続のマイナス成長に陥れ、逆に12兆円以上の財政赤字拡大を招いた張本人達(将にA級戦犯達)である。
  その人達が、国民に謝罪するどころか、又しても日本経済を潜在成長軌道に戻す前に「財政赤字を憂える」などと言い出した事に対して、私は強い憤りを覚える。私は日本を救うために、この人達と政治的に対決しなければならないと思っている。
  自自連立の小渕政権は、自社さ連立の「財政赤字を憂える会」の政治的な揺さ振りに動じることなく、経済戦略会議の「最終報告」に示された10年間3段階の経済再生計画を実行に移して欲しい。私も自由党の衆議院議員として、全力を挙げてこの計画の実現を推進したい。

【後   記】
  経済戦略会議議長の樋口廣太郎氏を招き、本年第1回目の「鈴木淑夫と著名エコノミストを囲む朝食勉強会」を下記の要領で開催する予定です。
  出席ご希望の方は、E-mailで氏名、住所、職業をあらかじめご連絡下されば、詳細を書いたリーフレットをお送りします。出席者には、樋口氏と私の討論をお聞き頂いた上、フロアーから活発にコメントや質問を出して頂きます。

《 記 》
日時    3月25日(木) 午前8時〜10時
場所    パレス・ホテル「チェリー・ルーム」
会費    20,000円