19日の党首会談に持越された自・自政策協議の最終決着(98.12.17)
【平成11年度予算の協同編成が進む】
自由党と自民党の政策協議は、12月13日の日曜日に、自民党森幹事長などが、地方講演やTV番組で、小渕・小沢会談の合意事項に反する発言を公然と行ったため、自由党が自民党に釈明と謝罪を要求し、14日(月)に予定されていた幹事長会談と政策責任者協
議をキャンセルした。
自由党側が激怒したのは、小渕・小沢会談の合意通り、自由党は臨時国会の運営に協力し、無事臨時国会が終了したのに対し、自民党側は合意事項にある平成11年度予算編成における両党の協力、国・地方を通じる選挙協力などについて、公然と反対意見を述べ
るものが居る、という点である。
これに対して自民党は、森幹事長から正式の釈明と謝罪が行なわれ、小渕・小沢会談の合意事項を忠実に守ると改めて約束ししたため、翌15日(火)に幹事長会談、政策責任者協議、16日(水)に政調会長会談が行なわれた。この2日間の協議、会談は、大蔵
省の主計局、主税局を陪席させた上、予算の協同編成の一環として行なわれた。
【支出ベースの公共事業は10%超のプラス】
この結果、12月3日(木)の第1回政策責任者協議で自由党側が提案した予算事項(このホームページのWhat's New欄“自・自政策責任者協議のポイント(98.12.7)”参照)について、予算編成に取り込まれる合意事項と、合意に達せず19日(土)の小渕・小
沢会談に上げる事項とに整理された。
まず平成11年度予算の公共事業費の規模については、当初予算ベースの比較では勿論のこと、第3次補正後の10年度予算との支出ベースによる比較でも、10%以上上回ることとした。このため、国家的プロジェクト(整備新幹線、中部国際空港、関西空港2
期等)について、優先的・重点的に措置するほか、5千億円規模の公共事業予算費を準備する。
支出ベースで大きく上回るのは、第3次補正予算の公共事業費2.7兆円の大部分、2.3兆円の支出が11年度にずれ込むためである。日経センターの11年度経済見通しをみると、公共投資がマイナスとなっているが、これは情報不足による間違いである。
【自・自協議で成立した税制改正のポイント】
次に税制改正についての合意は、まず所得税・住民税についての子育て減税である。15歳以下の子供の扶養控除を10万円、16歳以上23歳未満の子供の特定扶養控除を5万円、それぞれ増額する。これは自民党税制調査会の反対を自由党の主張が押切る形の
決着であった。このほか、児童手当の所得制限を緩和し、対象となる第3子以降を55%から75%に拡大することも、自由党の主張が通った。これらによって、低・中所得層の税負担がある程度軽減される。
法人関係税については、既に決っていた実効税率40%への引下げに加えて、大蔵省が先送りしたがっていた連結納税制度の導入を2001年4月からということで決着した。これによって新規模事業の分社化が税制面から有利となり、新産業の発展が期待され
る。
また長い間の懸案であり、延び延びとなっていた有価証券取引税と取引所税の廃止も、前倒しして来年度から実施される。これは証券取引コストの低下を通じて、証券市場の再建に貢献するであろう。
以上の結果、平成11年度の減税規模は、過去に例をみない9.3兆円に達し、党首会談合意事項の10兆円の目途はほぼ達成された。
【党首会談に持越される三点】
これに対して、協議が平行線を辿り、19日(土)の党首会談による決着に持越されたのは、次の3点である。
まず消費税については、基礎年金、高齢者医療、介護の三つに資金使途を限定することについては合意し、11年度予算総則に明記されることとなったが、消費税の一時凍結と再引上げについては、どうしても自民党が呑まない。
また所得税・住民税についても、自民党案は最高限界税率を現行の65%から50%に下げたうえ、定率減税を実施するため、低所得層は増税、高所得層は減税となるが、自由党は最高限界税率のみならず、各段階の税率を引下げて、恒久的な制度減税とすること
を主張している。
最後に基礎年金の公費負担を現行の三分の一から二分の一に引上げ、それによって浮いた分に見合って年金保険料を引下げ、上記の低所得層の負担軽減策とすることを自由党は主張している。これは基礎年金は、高齢者医療、介護と並んで保険制度にはなじまず、
将来は消費税で賄うべきであるから、今から保険料を引下げるべきだという考え方である。この主張と表裏の関係にあるのが、2000年4月に導入される介護保険制度の準備を中止し、関係予算を削除せよという主張である。11年度予算では、介護サービスの準備
に集中し、それをファイナンスする保険制度の準備は止めろということである。
【もっと異時点間代替を起こす減税を】
以上の3点は、単に協議が決着しなかったというだけではなく、協議の大前提である「11年度にプラス成長に転じ、12年度に回復軌道に乗り、13年度以降は民需主導型の安定成長が続く」という自・自連立政権の戦略目標をあやうくするものである。
総計9.3兆円に達する過去最大の減税は、いずれも景気回復軌道に乗った時に力を発揮するタイプのものばかりである。残念ながら、マイナス成長をプラス成長に転じる「異時点間代替の政策」(このホームページの雑誌掲載論文欄「経済を見る眼」『週刊東洋
経済』98年12/19号参照)の政策が少ない。僅かに2年間の時限措置による住宅ローン減税と投資減税(パソコンの即時償却など)だけである。
やはり、消費税の一時凍結と再引上げが、一番大きな「異時点間代替」を引き起こす。党首会談でこれが合意されない場合は、マイナス成長からプラス成長に転じる時期が先にずれるのではないか。