第2回自・自政策責任者協議は一定の前進(98.12.10)



【平成11年度予算案と税制改革案を共同で作成】
  12月10日(木)午前11時より、衆議院常任委員長室において、自由党と自民党の間で第2回目の政策責任者会議が行われた。参加者は前回同様、自由党からは野田政調会長、藤井税制改革本部長、私(政調副会長)の三人、自民党からは池田政調会長、丹羽政調会長代理、津島税調小委員長の3人、それに今回は参議院を代表して自由党からは戸田邦司氏、自民党からは尾辻秀久氏が加わった。
  まず始めに、この協議は平成11年度の予算案や税制改正案について、自由党が自民党に要望する会議ではなく、両党が協力して予算案や税制改革案を決める会議であること(小渕・小沢会談の合意に基づく)を確認したうえで、政策協議に入った。

【自由党提案の多くの税制改革に、自民党も賛成】
  税制改正については、前回自由党が提案した税制改革案(このホームページのWhat's New欄“自・自政策責任者協議のポイント(98.12.7)”参照)について、自民党税制調査会で検討中であり、今のところ取りまとめの段階に入っていない旨の報告が自民党側からあった。しかし、議論の方向性としては、自由党が提案している法人税の連結納税制度の導入、投資促進税制、住宅取得促進税制、児童手当の増額と所得制限の緩和、消費税の社会保障目的税化などについては、賛成意見が多いとのことであった。いずれにせよ今後週末を含む5日間に、両党間で頻繁に連絡を取り合い、協同で平成11年度税制改革案を作成することになった。
  その共同案を審議、決定するため、次回の政策責任者会議は、12月14日午後、または15日(火)午前中に開き、その結果に基づいて、16日(水)に自民党内の手続として平成11年度税制改革大網を決定する手筈となった。

【社会保険料の引下げを提案】
  今回の協議で自由党が税制に関連して新しく提案したことは、「将来は消費税を社会保障目的税に変えて基礎年金の財源とするが、当面平成11年度は基礎年金国庫負担を現行の3分の1から2分の1に引上げ、それに見合った社会保険料を引下げる」という点である。
  社会保険料は、いわば人頭税的な直接税であり、所得税や住民税のかからない低所得層にとって大きな負担となっている。とくに平成10年度の定額特別減税で課税最低限が361万円から491万円に上昇した後、11年度の定率減税では再び正常化して課税最低限が361万円に下がり、361万円以上491万円未満の層は増税となる。
  これを緩和するためにも、自由党は社会保険料の引下げ、消費税の1年間凍結、後述する児童手当増額の三つを主張しているのである。

【平成11年度公共事業費は第3次補正後の10年度を上回るべき】
  今回の協議では、平成11年度歳出予算について、始めて両党間で活発な協議が行われた。
  まず、自由党側は、危機的状況に落ち入った日本経済を立て直し、21世紀に向けて構造改革を断行するためには、なによりもまず民間需要、特に消費・設備投資を最大限引出す必要があるとの基本認識を示し、自民党側もこれに賛成した。そこで自由党側は、その意味では、平成11年度当初予算が、十分にプラス成長転換の力を持つものでなければならず、また、財政面から総需要管理をすると同時に、サプライサイドを改革することが必要であり、税制も十分に活用するべきであるとした。
  具体的には歳出予算の規模のうち、公共事業費については、平成10年度第3次補正後の事業費を下回らない額を、11年度当初予算において計上すべきであり、もし具体的プロジェクトの決定が間に合わない場合には、「公共事業調整費」を計上すべきだとした。
  この調整費は、景気が予想外に回復して来れば使わなければよいし、景気が予想通り弱ければ、補正予算を組むことなく、プロジェクトを決めて執行できる。極めて弾力性に富み、機動力が高い。自民党側は、よく考えてみたいと答えた。

【歳出の重点4項目を提案】
  次に、歳出の具体的内容として、自民党側は次の4点を提案して自民党側と協議した。
@ 国家的プロジェクト(整備新幹線、中部国際空港及びアクセス鉄道、関西国際空港(二期)、基幹的高速道路等)は前倒し実施する。
A 介護については、負担を社会保険方式から公費負担を中心とする税法式に改める。このため保険事業実施に係る予算については削除する。ただし、介護制度整備のための施設・人材等にかかる予算は、この限りではない。
B 少子化対策として、現行の児童手当額を増額し、支給対象年齢を引き上げ、所得制限を緩和する。特に、第3子以降に対する児童手当を増額する。
    ……例  第1子・第2子  5千円を1万円に、第3子以降 1万円を2万円に。
                支給対象年齢0歳から3歳までを義務教育就学以前までに拡充
C 中小・中堅企業に対する貸し渋り対策について、十分な額の予算措置を行なう。
  自民党側は、以上の@〜Cのうち、Cには積極的に賛成、Bもよく検討してみたいという態度であった。@については、自民党内にも同様の意見があるようだ。

【介護は保険料ではなく消費税で賄え】
  最も活発な協議が行なわれたのは、Aである。
  自由党は、介護サービスの供給体制を整えるのは焦者の急であり、大いに予算を付けるべきだと考えているが、それを保険制度でファイナンスすることに反対し、その予算の削除を主張しているのである。何故なら高齢者介護は、日本人全体で支えるべきナショナルミニマムであり、保険料を払う人にのみ保障する性格の事柄ではないからだ。そもそも、年金で細々と生活している高齢者から、毎月6千円もの保険料を年金天引きで取れるのか、政治的に不可能ではないか、という自由党側の問い掛けに、自民党側は黙っていた。基礎年金というナショナルミニマムを国民年金という保険制度で賄っているために、保険料未納者が三分の一に達している現状を考えると、介護保険制度の保険料未納者はもっと増えて、制度が著しく歪み、不公平になるのではないか、という問い掛けにも、自民党側は反論出来なかった。
  自民党側の言い訳は、既に介護保険制度の実施が決まり、準備が始まっている時にやめると混乱する、というだけである。100米競争で50米走った時に中止できるかと言うのであるが、自由党側は50米しか走っていないので今なら中止できるという立場だ。
  消費税を社会保障目的税として介護の財源に使うことについては、自民党内にも賛成者が少なくない。それならば、介護保険制度の立上げをストップするラスト・チャンスである。
  介護問題を含め、上記@〜Cを始めとする平成11年度歳出予算の内容についての協議は、税制改革の協議が終わる次回以降に、集中的に行なわれることになろう。