自・自政策責任者協議のポイント(98.12.7)



【99年度は当初予算でプラス成長を確実にする】
  12月3日(木)午後1時から1時間半にわたり、第1回目の自由党と自民党の政策責任者協議が、衆議院の常任委員長室で行なわれた。自由党側からは、野田政調会長兼幹事長、藤井税制改革本部長、私(政調副会長)の3人、自民党側からは池田政調会長、丹羽政調会長代理、津島税調小委員長の3人が出席した。
  まず政策協議の大前提として、次のことが確認された。
  それは、99年度当初予算によって、97、98年度と2年間続いている日本経済のマイナス成長を、99年度にはプラス成長に転じ、2000年度には回復軌道に乗せ、2001年度以降は実力相応の民需主導型安定成長の持続を実現する、ということである。
  この場合、99年度の途中で補正予算を追加する必要が生じないように、99年度の当初予算によってこのような展望が開けるようにしなければならないという点も、自・自両党の政策責任者間で確かりと確認された。

【緊急経済対策のみでは展望を開くのに不十分】
  次に自由党側から、既に政府・自民党が発表した「緊急経済対策」のみでは、このような展望を開くには不十分であり、追加的な政策が99年度当初予算に盛り込まれなければならないと主張した。
  何故なら、99年度は所得減税4兆円、法人減税2.3兆円、合計6.3兆円の減税というのが「緊急経済対策」であるが、既に本年中に97年度分と98年度分の特別所得減税各2兆円、合計4兆円を実施している。従って99年度中のネット減税は、法人減税2.3兆円に過ぎない。本年中にネット4兆円の所得減税を実施したにも拘らずマイナス成長が続いている時に、どうして99年度のネット2.3兆円の法人減税でプラス成長に転じるのか、すこぶる疑問である。
  また公共投資についても、98年度第3次補正予算に組込まれた「緊急経済対策」による公共投資の追加が、工事ベースでは99年度にズレ込むので、99年度は10%以上伸びると言うが、公共投資の2倍の規模を持つ設備投資が急落している時に、果たしてプラス成長に転じる上で十分か、疑問である。

【消費税の一時凍結と目的税化など税制改革の追加を提案】
  このような自由党側の政策責任者達の指摘に対し、自民党の政策責任者達も否定をせず、では何を追加したらよいかという話し合いに移った。
  そこで自由党側は、平成11年度税制改正について、次のように党の考え方を説明した。
  第1は消費税の一時凍結と社会保障目的税化した上での段階的引上げである。(詳細はこのホームページのWhat's New欄『年金制度改革と減税プログラムを提案する(98.11.2)』を参照)。
  第2は所得税の累進構造緩和と税率の引下げである。
  第3は法人税制における連結納税制度の導入、合併・子会社化促進税制の創設、および配当二重課税の廃止である。
  第4は金融関係税制における有価証券取引税と取引所税の廃止である。
  第5は景気刺激の政策減税として、住宅ローン利子の全借入期間を通じる所得控除、時限的な自社株償却促進税制、投資額の一定割合の所得控除・加速度償却などの時限的実施、省エネ自動車取得価格の一定割合の所得控除の時限的実施、などである。

【異時点間代替を誘う減税が大切】
  これに対して自民党側は、第1の消費税については党内に異論がある(たとえ一本の法律で凍結と引上げを決めても、引上げ時に反対が出る)ので引続き協議、第2の所得税については同主旨の自民党案が固まりつつある、第3、第4、第5については党税調で十分参考にして討議してみる、と答えた。
  そこで自由党側は、第1の消費税凍結と段階的引上げ、および第5の政策減税は、経済学でいう「異時点間代替(inter-temporal substitution)」を狙った政策であると説明し、マイナス成長をプラス成長に転じるには、このぐらい思い切った「支出前倒し」「買急ぎ」を誘う政策が必要だと説いて、検討を促した。
  また自由党は、所得税の累進構造の緩和について、本年の定額減税の結果、課税最低限度が361万円から491万円に上昇したため、自民党案では低所得層が増税、高所得層が減税となり、金持ち優遇という批判に耐えられないのではないかと指摘した。そして、この批判を避けるためにも、消費税の一時凍結は有効であると主張した。

【次回の政策責任者協議で収束に向えば連立内閣へ】
  1時間半にわたる熱心な協議の末、次回12月10日(木)までに自民党は自由党提案を参考にして99年度税制改革を煮詰めて来る、自由党は99年度歳出予算についての党内の考え方をまとめて来る、ということで別れた。
  従って、次回12月10日(木)には、99年度税制大網と予算の政府原案に向けて、自・自両党の歩み寄りが行なわれることになるであろう。
  それ以外の政策協議も、原則としてこの政策責任者協議の場で行ない、適時関係者を加えることでも合意した。
  この政策責任者協議によって、自・自協力の下で99年度の予算編成が完了すれば、小渕・小沢会談で合意されたように、明年1月の通常国会前に、自・自連立内閣が発足するであろう。