民意に反する小渕新内閣を解散・総選挙に追い込もう (1998.7.30)

【民意を反映していない小渕内閣】
参院選惨敗の責任をとって引退した橋本内閣のあとを受けて、小渕内閣が7月30日(木)に発足した。
この内閣は、二つの意味で民意を反映していない。
第一に、直前の参院選で自民党が過半数を20議席以上割り込んだということは、民意が明らかに自民党の単独内閣を拒否したのである。それにも拘らず、こ の民意を無視して自民党は単独で内閣を組閣した。
第二に、自民党は衆議院で過半数を占めているものの、これは民意の反映ではない。平成8年10月の総選挙で自民党は過半数に11議席足りなかった。その後今日までの間に、旧新進党として当選してきた議員を選挙区事情などを餌にして次々と一本釣りをした結果、今日の過半数に達したのである。
従って、衆議院で小渕首相が指名され、参議院では菅首相が指名され、その結果衆議院優先の原則で小渕首相に決ったとはいえ、実際は、前者が民意を反映せず、後者こそが民意を反映しているのである。民主主義の基本原則に立てば、本来は小渕内閣ではなく、菅内閣が短期の選挙管理内閣として発足し、衆議院を直ちに解散して改めて民意を問うのが常道である。

【小渕内閣は橋本内閣の亜流、自民党に反省の色なし】
この憲制の常道に反して発足した小渕内閣は、あらゆる意味で失政を重ねた橋本内閣の亜流である。
日本国憲法第66条によれば、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う」となっている。従って、橋本内閣の外務大臣であった小渕新首相は、橋本内閣の経済失政について、連帯して責任を負っているのである。その人物が責任をとって引退せず、逆に首班指名を得て内閣を組織したということは、この内閣が橋本内閣の失政の責任を引継いでいることを意味する。
そればかりではなく、橋本政権を支えてきた野中幹事長代理が小渕内閣の番頭ともいうべき官房長官に就任し、また森総務会長が幹事長に就任した。小渕首相を支える内閣と党の最高責任者、官房長官と幹事長が、共に橋本内閣を支えてきた党の最高幹部であるということもまた、小渕内閣が橋本内閣の亜流であることを端的に示している。
要するに自民党は、橋本内閣の政策の失敗、その結果である経済危機、金融危機の責任をもっぱら橋本首相個人に押し付けて退陣させ、あとの主要メンバーが小渕新内閣を構成したにすぎない。参院選の結果が示す橋本自民党内閣の失政に対する国民の厳しい批判を、自民党は橋本個人に対する批判にすり変え、自民党に対する批判とは受取っていない。自民党にまったく反省の色がないからこそ、自民党最大派閥の小渕派出身の橋本総理を引込め、小渕氏自身が平気な顔で出てきたのである。

【小渕内閣はこの臨時国会に景気関連法案を出せない】
7月30日から10月7日まで70日間に及ぶ第143回臨時国会に対して、小渕内閣は独自の法案を出さず、橋本内閣が用意していた三つの主要法案を提出する。その点でも橋本亜流内閣である。
第1は金融再生トータルプラン関連法案、第2は日米ガイドライン関連法案、第3は国鉄債務処理関連法案である。いずれも緊急性が高いにも拘らず、第142 通常国会で処理する時間がなかったもので、夏休み返上で審議しようという訳である。
しかし、このうち第2のガイドライン関連と第3の国鉄債務関連は、当面の経済危機とは何の関係もない。いずれも、もっと早く処理すべきであるのに、経済失政の結果、補正予算や財革法改正を優先せざるを得なくなった結果、審議が遅れたものである。
第1の金融再生トータルプラン関連は、景気回復の足枷となっている不良債権問題の処理に必要な法案ではあるが、これを急いで通せば景気が回復するという性質のものではない。しかもその内容は、このホームページの7月13日付のWhats New欄「金融再生トータルプランは羊頭狗肉」や雑誌掲載論文欄  「金融再生トータルプランへの疑問」(「金融財政Banco」7月27日付)に書いたように、金融機関経営やゼネコンの救済に公的資金を投入することになり兼ねない。その反面、不良債権の早期処理や金融システムの安定には大して貢献しない。
このように小渕新内閣は、この70日間の臨時国会に、景気刺激のための法案を何一つ出せないのである。

【一刻も早い解散・総選挙が日本経済再建の近道】
しかし景気後退はおかまいなく進行して行く。それにも拘らず、自民党総裁選挙に小渕首相が公約した6兆円の恒久減税と10兆円の第2次補正予算は、まだ中味がまったく詰っていない。従ってこの臨時国会に法案を出せる筈がない。
そうなると、マイナス成長を続ける日本経済に対する救いは、前国会で成立した6兆円の第1次補正予算だけということになる。これでは、僅かのプラス成長に 転じたとしても不況はまだまだ続き、失業率上昇、倒産多発、果ては金融機関の新たな破綻も起るのではないか。
参院選で惨敗した自民党は、「政治空白」を作ってはならないという口実で、民意を問う解散・総選挙を出来る限り先に延ばそうとしている。しかし、この臨時国会に景気関連法案を提出できず、また金融関連法案も真の不良債権早期処理には程遠い以上、むしろ早期に解散・総選挙を実施し、衆議院にも民意を反映させるのが、日本の危機突破の近道ではないか。民意は、明らかに野党の経済政策を支持している。それらの政策を一刻も早く実現して日本経済を立て直すために、「政治空白」などという口実にごまかされず、参議院の多数勢力によって、小渕内閣を立往生させ、解散・総選挙に追い込むべきである。