本年1〜3月GDPが物語る日本経済の深刻さ (1998.6.15)
【今回のマイナス成長は前回より深刻】
本年1〜3月の実質GDP(季節調整済)は、前期比マイナス1.3%(年率5.3%)と大幅に落ち込んだ。予想通りの2四半期連続マイナス成長である。
この結果、97年度の平均成長率も、マイナス0.7%と、74年度(マイナス0.4%)に次ぐ戦後2度目のマイナス成長となった。しかし、74年度の場合は第一次石油危機に伴い輸入原油の価格が一気に4倍になるというサプライ・ショックによって、74年第1四半期の成長率が前期比マイナス3.4%(年率14.3%)と大きく落ち込んだためで、その後は同年第4四半期を除き、プラス成長に戻った。
しかし、今回は、財政再建最優先の急激なデフレ政策によって、97年度中の第1、第3、第4の3つの四半期がマイナス成長となったもので、政策ショックによる持続的なマイナス成長だ。人為的な失政によるという点でも、国内要因による継続的なマイナス成長という点でも、今回のほうが遥かに深刻である。
【4〜6月もマイナス成長の可能性残る】
中身を見ると、まず設備投資、在庫投資、公共投資の3本の投資がマイナスを続けているが、このホームページの月例景気見通し(98年6月版)に書いたよう
に、これは4〜6月にも減り続ける可能性が高い。
第2に、個人消費と住宅投資が下げ止まったが、これは一時的だ。雇用、賃金の悪化が本格化しているので、4〜6月以降、再び下がる可能性が強い。
第3に、アジアの経済危機の影響で、輸出が減少に転じ、外需の成長寄与度がマイナス0.4%にも達した。今後も外需を当てにした成長は難しい。
このように見てくると、本年4〜6月もマイナス成長の可能性を含むゼロ成長近傍の動きが続くであろう。はっきりプラス成長に戻るのは、公共投資の前倒し執
行と16兆円対策の真水である公共投資の6兆円追加(6月18日に補正予算成立の予定)が動き出す7〜9月以降であろう。
【政府見通しの1.9%成長は夢物語】
しかし、その場合でも在庫投資、設備投資、住宅投資は引き続き弱く、個人消費や輸出の回復も当分見込めないので、小幅のプラス成長にとどまるであろう。
そうなると、98年度の政府見通しである1.9%成長は、到底実現不可能な夢物語である。
97年度末の2期連続マイナス成長に伴って、98年度の平均成長率はマイナス1.0%のゲタをはいた。その結果、98年度中の4つの四半期の平均成長率が、各期年率4.8%に達しない限り、年度平均は1.9%に届かない。これは不可能だ。平均4.8%は潜在成長率を大きく上回っており、デフレ・ギャップが急速に縮む絶好調景気の成長率である。
そうなると、本年度の平均成長率は、ゼロ成長を免れるとしても、せいぜい0.5〜1.0%程度の成長率であろう。これはグロース・リセッション(成長下の景気後退)の範囲内である。
【日本の命運を握る野党の選挙協力とその結果】
これでは、金融機関の大型倒産などで、再び危機が発生する危険性がある。その挙げ句、秋以降に再度景気対策が必要になるのではないか。
しかし橋本内閣が続く限りは、大型の恒久減税を柱とする中期的な経済再建策は打てない。今世紀中は、財政再建ではなく、経済再建を最優先とし、21世紀に入って財政再建をするという中期的戦略への転換は、橋本自民党では責任問題が発生し、不可能だからである。
自由、民主、平和・改革の野党3会派が、このような政策を中心に手を握り、選挙を戦って国民の支持を得ない限り、日本は橋本自民党と心中することになろう。
来るべき参議院選挙の結果と、その後の野党の国会協調、総選挙を目指した野党の選挙協力の成否が、日本の命運を握っている。これは最終的には、選挙民である日本国民の行動にかかっている。国民の強い支援発言や世論調査での意思表示に励まされない限り、自由、民主、平和・改革の国会共闘と選挙協力は強まらないと思う。