21世紀の日本をこうする (1998.5.28)
5月26日(火)、国会裏の星陵会館において、21世紀環境委員会(NGO)の主催でシンポジウム「政治に訊く――21世紀をどんな日本にするか」が開かれた。私は自由党を代表して参加し、プリゼンテーションとパネル討論を行った。以下は、私のプリゼンテーションの要約である。
なお、他党からは小杉隆(自民党政調会長代理)、菅直人(民主党代表)、伊藤茂(社民党幹事長)、志位和夫(共産党書記長)の各氏が参加した。
【日本の旧システムの特色】
明治維新以来今日までの日本型システムは、西欧の産業化の水準に追いつき、追い越すことを目標として形造られ、定着したものである。その特色は、政治・行政システムは中央が地方に君臨する中央集権型であり、経済・社会システムは官が民に目標を与えて指導し、民の活動を幅広く規制する裁量的介入型である。そこには必然的に政官業の癒着が生まれ、官僚の政界進出や民間天下りが日常化する。
この追いつき型システムは、官僚が先進西欧諸国を手本として知識や制度を導入し、産業を保護・育成する上で一定の成果を収めた。とくに第二次大戦後の高度成長期には奇跡と呼ばれる程経済が発展し、70年代中頃には、比較可能なマクロ経済指標で見る限り先進西欧諸国の水準に追いついた。71年のニクソン・ショックと、その後の円高趨勢は、これを象徴する出来事であった。
【歴史的な条件の変化と旧システムの破綻】
しかし、このシステムを機能させていた歴史的条件が、少なくとも以下の三点で変り、システムは次第に機能不全に陥ってきた。
第一は、追いつきの完了によって、西欧を真似し、技術を導入することによって輸出・投資主導型の高度成長を続けることが不可能になった。官が民を指導する際の手本が無くなり、民が自から律して創造的に技術革新を遂げなければ発展できなくなった。
第二に、89年暮の東西冷戦の終焉により、安全保障を米国に依存し、官指導の下、ひたすら経済の繁栄に邁進する「一国平和主義」「一国繁栄主義」は不可能となった。政治、経済、軍事等あらゆる面でグローバルな競争と協調が複雑に絡み合い、民族主義的分裂と世界的統合の異なる流れが渦巻いている。もはや決められた路線を走る官主導は不可能であり、国民主権に根差す柔軟で多様な政治的対応と発想が求められている。
第三に2025年頃に向って、日本は世界に例をみないようなスピードで超少子高齢化社会に向っている。右肩上りの成長がもたらす所得増加の果実を政官業癒着の利権政治、談合、ゴネ得で分配する余裕はもはやない。限られた所得を、国民各層と世代間のバランスを視野に入れて、公正に分配する国民が主役の政治的リーダーシップが求められている。
【自由党が目指す21世紀の日本】
自由党は、このような歴史的条件の変化によって機能不全に陥った旧システムを改革し、上記の三つの条件に対応した21世紀の日本を築くことを目指してい
る。新しいシステムには、少なくとも次の六つの特色がある。
@ お上依存から自律・自己責任の社会へ(規制緩和、行政改革)
A 中央集権から地方分権の社会へ(陳情政治から住民主権へ)
B 政官業の癒着の出来ない社会へ(自由で機会均等で透明な社会へ)
C ノーマライゼーションを活かした社会へ(高齢者や障害者も堂々と活躍でき
るバリアー・フリーの社会へ)
D 人間と自然の共生社会へ(環境問題に真剣に取組み、美しい国土を大切にす
る社会へ)
E 国際社会で信頼される国へ(一国平和主義、一国繁栄主義を排する国へ)
【新しい日本を造る二段階アプローチ】
このような日本を目指す具体的ステップとしては、二段階アプローチの戦略を採る。
第一段階は今世紀最後の3年間で、経済再建を最優先し、日本経済を実力相応の民需主導型の持続的成長軌道に戻す。
そのための基本的政策は、(a)10兆円の所得・法人課税の減税、(b)土地評価益との損益通算による不良債権早期処理、(c)規制緩和の徹底、行政改
革・地方分権の推進、の三つである。これに伴う財政赤字の拡大は、現在の大幅なデフレ・ギャップの下ではインフレもクラウディング・アウト(民間投資圧迫)も起こさないので、これを許容する。
第二段階は21世紀の初頭であり、自由党が目指す新しい日本のシステムを完成させる時期である。すなわち、第一段階で着手した規制緩和、行政改革、地方分権の完成によって上記@〜Eの特色をもった日本を創り上げる。
また、簡素で効率的な政府となることによって生まれる歳出の削減と、実力相応の成長軌道から生まれる正常な税収によって、財政赤字を縮小し、財政構造改革も完成する。