またも失政を重ねる政府・自民党 (1998.5.22)

【財革法改正の政府案、衆議院を通過】
5月22日(金)の衆議院本会議において、政府提出の財政構造改革法改正法案と特別減税関係3法案が、自・社・さ3与党の賛成多数で可決され、参議院に送られた。同時に、民主党、平和・改革、自由党の野党3会派提出の財政構造改革法施行停止法案は、共産党も賛成したものの、3与党の反対多数で否決された。
会期末まで後2週間程度となったが、来週以降、衆議院ではこれらの法案に基づく平成10年度補正予算案(総合経済対策関係)の審議に入る。参議院では送付された財革法改正法案と特別減税関係法案を審議成立させることになろう。
私は5月22日の本会議場において、自由党を代表して登壇し、財革法改正法案と特別減税関係法案に反対する立場から代表討論を行った。以下はその主要部分である。
 

【橋本総理は失政の責任を取って辞任せよ】
財政構造改革法は、昨年11月末、三洋証券・山一証券・拓銀が破綻するなど、金融危機が深刻化している最中に、我々の反対を押し切って橋本総理が強引に成立させた法案であります。その後日本経済は、我々が指摘したとおり、鉱工業生産の水準は一割も落込み、倒産件数、金額と、失業率は戦後最高水準を更新し続け、まさに目を覆うばかりであります。橋本内閣が見通しを誤って財革法を成立させ、デフレ型の九八年度当初予算を組みさえしなければ、倒産しなくてもよかったはずの企業が倒産し、失業しなくてもよかったはずの人々が失業しているのであります。まさに橋本不況は人災であります。自ら招いた不況について、未だに国民に対し、反省も謝罪もありません。橋本総理はまず自らの責任を明確にするため、潔くお辞めになるのが議院内閣制の常道であります。

【財革法の根本的問題点】
さてここで、政府提出の財政構造改革法改正案に反対する理由を整理して申し上げます。まず今回の改正案によってもそのまま残されている、財政構造改革法の根本的な問題点を申し上げます。それはキャップ制によって歳出項目の抑制、繰延べを定め、財政赤字削減の帳尻合わせをしただけで、財政の構造を改革すると言う視点も、そのマクロ経済への影響と税収への跳ね返りを考えるという視点も、全く無いことであります。単なる歳出繰延べを、構造改革や財政収支改善とすり替え、ごまかしてはなりません。今回の改正により、社会保障関係費のみを特別扱いしておりますが、高齢化が進展するのは、今年や来年だけではありません。社会保障にせよ、公共事業にせよ、その制度的構造に切り込んで合理的に改革し、無駄を排除した時、初めて構造的支出削減となります。またそのような支出削減のデフレ効果をどのような手段によって帳消しし、税収を確保するかを同時に組み込んだ時、初めて財政再建となるのです。このような視点から見ると、この改正案によっても、財革法は財政構造改革の名に値しないのは一目瞭然であります。それどころか、かえって古い構造を温存し、ただただ経済に対するデフレ効果のみが表面化するでありましょう。橋本総理は、火だるまになっても改革をやり遂げるといわれたが、火だるまにされているのは、国民の方であります。

【改正案ではストップ・アンド・ゴー政策に】
政府の財政構造改革法は、今述べたように、根本の発想が間違っています。改正案によって目標年次を繰り延べてみても、特例公債発行枠を弾力化してみても、財政再建も財政構造改革も達成できません。例えば今回、実質GDP成長率が2四半期連続して1パーセント未満の場合、赤字国債の発行を弾力化するとしておりますが、その結果1%を上回った時は再び集中改革期間に戻り、闇雲に歳出削減を続けることになります。これでは、1%成長をはさみ、バラマキ的刺激と財政帳尻合わせの緊縮を繰り返すストップ・アンド・ゴー政策となり、日本経済は2005年まで1%を中心とする低成長という形でグロース・リセッション(低成長下の不況)に苦しみ続けることになります。このような悲惨な長期予測の下で、どうして消費者や企業のコンフィデンスが回復するでしょうか。まずは財政構造改革法の執行を停止した上で、真の財政構造改革、財政再建を断行すべきであります。

【自由党の財政再建案】
経済再建なくして財政再建はありえません。自由党は今世紀の残された3年間を経済再建・経済構造改革のための集中改革期間とし、@所得・法人課税の減税により、個人の可処分所得と企業の税引き後利益を増やして国民の勤労意欲と企業の投資意欲を刺激し、Aまた、土地含み益との損益通算を時限的に認めて不良債権の一挙償却を実施し、B更に規制緩和を徹底し、行政改革と地方分権を促進する、などの3つの基本政策により、サプライサイドから「民力を回復」する抜本的な経済改革を行い、民需主導型の持続的成長を実現することを提案しております。その上で、21世紀の初頭から、簡素で効率的な政府の実現によって浮いてくる財源と、民力中心の逞しい経済からもたらされる租税増収によって、財政再建を完結すべきであると考えています。

【特別減税は無効で有害】
ここで特別減税関係法案に反対する理由を申し添えます。
政府与党は、いまだに特別減税でこの日本の危機的状況が救えると考えており、危機感の欠除は目に余るものがあります。特別減税は、戻し税法式のバラマキ減税で政策理念のかけらも無い上、期間経過後に増税が待ち構えている増税予告付き減税であります。将来の増税につながるという懸念から、減税資金は消費に回らず、財政の悪化を招くのみであり、かえって先行き不安を煽ることになりましょう。
また特別減税の方式を定額控除方式としたため、課税最低限度額が492万円まで引き上げられ、世界に例の無い不公平な課税体系となっております。これは、最高から最低までの限界税率をすべて引下げ、減税と同時に税率構造の簡素化、フラット化を実現する制度的恒久減税、すなわち私たちが主張している恒久減税の阻害要因となります。