財政構造改革法の執行を停止せよ (1998.5.21)
【野党は財革法執行停止の共同提案をした】
5月20日(水)の衆議院「緊急経済対策に関する特別委員会」において、民主党、平和・改革、自由党の3野党会派が共同提出した「財政構造改革法の停止に関する法律案」の質疑が3時間(午後2〜5時)にわたって行われた。
私は同法案(議員立法)の提出者の一人として、自由党を代表して答弁席に座った。ほかにも民主党を代表して池田元久、海江田万里の両委員、平和・改革を代表して西川知雄委員がともに答弁席に座った。政府・自民党は、今後の財政運営を縛って経済を危機に陥れた財政構造改革法を改正し、弾力条項の導入と目標年次の2年先送りで硬直的な財政緊縮路線を緩和しようとしている。これに対して我々が提出したこの法案は、今世紀中、この法律の執行を停止し、その間に恒久減税などによって日本経済を立直し、その後21世紀初頭からの財政再建については、この執行停止期間中に法的整備を実施しようとするものである。政府の改正案では、弾力条項で一時的に財政赤字の拡大を図るだけなので、一時的な特別減税しか実施できないが、我々の執行停止案では恒久減税による抜本的な経済立て直しが可能である。
【特別減税か恒久減税か】
この財革法執行停止法案に対して、自民党は次の3点から質問し、我々野党側は以下のように答弁した。
第1は、経済危機は深刻であり、一刻の猶予も許されないので、恒久減税を論じている暇はなく、政府・自民党の提案のように財革法に弾力条項を導入して特別減税を実施すべきではないか、という点である。
これに対して私は、以下のように答えた。
97年度の超デフレ予算と財革法によって、日本経済が危機に陥るであろうことは、旧新進党が昨年1〜3月の通常国会と10〜12月の臨時国会で主張していた。その上で、昨年3月には2兆円の特別減税を打ち切らず、恒久減税に切換えて継続せよと言う法案も提出した。このような野党の指摘に耳を貸さず、減税継続法案を否決したのは政府・自民党である。その結果、旧新進党が指摘したとおりの経済危機が発生したのである。すべては政府・自民党の責任である。我々が1年以上も前から主張していた恒久減税を否定してきたその自民党が、一刻の猶予も許されないからといって一時的特別減税を主張するのは、自らの失政に対する無責任な態度である。
戻し税方式の一時的特別減税は、打ち切った時に増税となるのであるから、「増税予告付きのバラマキ減税」であり、政策理念のカケラもない上、増税に備えて貯蓄に回るので効果も薄い。その上、国際的に見ても著しく高い課税最低限度362万円を、さらに492万円まで引き上げ、将来の合理的税体系を目指す恒久的制度減税の障害となる。
したがって特別減税をせず、直ちに恒久減税に切換えるべきである。
【野党の恒久減税案】
この答弁に対して自民党は、それならすぐ実施できる恒久減税の案を示せと迫った。
そこで野党3党派を代表する我々答弁者は、@国際的に高すぎる最高限界税率の65%を国際標準並みに引き下げる、Aこれにともない累進構造の税率をフラット化し簡素化する、B同時に全体の税率も引き下げる、以上の@〜Bについては、3野党会派は一致しているので、いざとなれば何時でも原案を作れると答えた。
さらに私自身は、我が自由党が考えている案として、現行の所得税限界税率10、20、30、40、50%の5段階を10、20、30、40%の4段階とし、現行の住民税限界税率の3、10、15%の3段階を5、10%の2段階とするならば、上記の@〜Bの条件がすべて満たされると答えた。
5月21日付の朝日新聞朝刊は、「野党側、反論しきれず」と報じていたが、自民党の番記者が書いたとしても、何を聞いていたのであろうか、残念に思う。
【恒久減税の財源】
最後に自民党は、しからばその恒久減税の財源はどうするのかと尋ねてきた。
これに対して我々野党答弁者は、@政府案のようなキャップ制による単純な支出繰り延べではなく、規制緩和、行政改革、地方分権と一体化した真の歳出「構造」改革による歳出削減、A経済の潜在成長経路への回復に伴う税収の正常化、の2つによるとこもごも答えた。
その上で私は、自由党の財政赤字縮減の2段階アプローチを述べた。
野党共同提出の財革法執行停止法による執行停止期間中(概ね今世紀最後の3年間)は、@所得課税・法人課税の10兆円減税、A不動産評価益を使った不良債権の一挙処理(非課税)、B規制緩和の徹底、および行政改革と地方分権の推進、の三つの政策によって民間市場経済をサプライサイドから活性化し、日本経済を民需主導型の持続的潜在成長経路に戻す。
次に21世紀初頭の数年間は、財政構造改革をはじめとする各種の構造改革(経済、行政、金融など)を実施する。この第2期こそが、財政改革の集中期間となる。
【各党派の態度】
以上が野党3会派と自民党との質疑であるが、民主党、平和・改革、自由党以外の野党委員からの質問は、共産党が我々の財革法停止法案に好意的、社民党が自民党と同じような立場から否定的であった。
3時間の質疑を通じ、自民党の委員席は、私の恒久減税の具体案や財政改革の2段階アプローチに対して静かに聞き入っていた。中にはうなずく委員も居た。日本の危機克服のために、与野党の間でもっと建設的な政策協議はできないものであろうか。