不良債権処理を放置した政府・自民党は責任をとるべき (1998.5.18)

文藝春秋6月号での梶山氏の論文『日本興国論』に、「誰も本当の中身を調べてみようとせず、目を覆ってなるべく金融界を見ないようにしてきたのです。金融は住専を処理すればもう心配ないという大蔵省の説明を鵜呑みにした私たち政治家が、責任を逃れる術はありません」という内容があるが、それは「誰も」や「私たち政治家ではなく、「政府・自民党の中で誰も」とか、「私たち政府・自民党の政治家」と言い直すべきだ。以下、国会で、金融システム安定化のため、 私が再三、主張していたことを議事録を抜粋する形で紹介し、政府・自民党こそが「責任を逃れる術が無い」ことを証明したい。
なお、The Suzuki Journalにおいて、最初のコメント「危うしビッグバン(97.6.20)」以降、金融システム安定化、不良債権処理方法などは逐一What's Newにおいて主張しているので参照されたい。

【平成9年2月10日 予算委員会】
鈴木「住専を含むノンバンクに一切公的資金を投入しない、それから信用組合以外の預金取扱金融機関に公的資金を投入しないというお約束と、20行の大銀行は破綻させないというお約束、この2つを維持していくと言うのは、現在のような、4月以降、経済がほぼゼロ%成長に半年位は間違いなくなると思いますが、そういう状況の下では大変きついと言うことを指摘しておきます。どうかこれを憶えておいて下さい。何かあったら、これは、この2の政策がきついと言うこと を今からわかっているのにそういう事を言っていたんだと言うことになります。
  
〜中略〜  
今日まで不良債権の整理をきちんと進めてこなかった政府の責任、一生懸命努力しているとおっしゃるが、経済がこんな状況で、地価が下がり続けて、不良債権の処理が進みますか。この責任も2番目にはっきりさせて頂きたい。
そして最後に、97年度の、これは明らかにデフレ予算ですよ。こういうデフレ予算を組んでいると言うことについて、その結果責任をはっきり取って頂きたい。
〜中略〜  
以上私が申上げたことで、もう総理も三塚蔵相もおわかりでしょう。私が、いかに危ないところを逃げてしゃべっているかと言うことであります。ですから、どうかその危機の存在を十分認識されて、対策を早く打って頂きたいと思います。」

【平成9年4月3日 本会議代表質問】
鈴木「総理、信用金庫や銀行を含む不良債権処理の抜本的スキームも確立せず、 9兆円の国民負担増加によって成長率を再び1%台に落込ませた上で、明年4月から外為法の改正、金融の自由化、早期是正措置などをスタートさせて、日本の金融システムは本当に大丈夫なのでしょうか。明年4月までに、金融3法の域を越えた、もっと一般的な金融システムのセーフティネットを張り直す必要があるのではないでしょうか。」
橋本総理の答弁
「金融システムについてお尋ねがございましたが、不良債権の処理は着実に進んでおります。そして、個々の金融機関の経営状況は様々でありますけれども、金融機関全体としては、私は不良債権問題を克服することは可能だと考えています。また、金融システム改革を進めるに当たりまして、金融機関の不良債権を速やかに処理致しますと共に、金融3法の枠組みを最大限活用することによって、システム安定に最新の注意を払って参りたいと考えております。」
代表質問全文はSuzuki Journal「国会活動/発言」参照。

【平成9年4月9日  大蔵委員会】
鈴木「金融3法で十分なセーフティネットかどうか、すこぶる疑問に思います。
信用組合に公的資金を投入する、政府保証すると言うことは、後で公的資金があると言う道が金融3法で開けておりますが、私は、信用組合だけで大丈夫かなと言うことが第1の疑問。
それから2番目に、早期是正措置は大変結構なんですが、しかし、今みたいに不良債権が沢山ある状態、その整理がまだ十分に進んでいない状態で、来年4月から早期是正措置を導入した時に何が起きるだろうか。
〜中略〜  
3番目に、預金保険、7倍にして0.08%の保険料にしたわけですね。年間5千億円な訳で、2001年まで5年として、2兆5千億円だと言う訳ですが、ご承知のように、木津(信用組合)だけで1兆円飛んじゃったじゃないか、これから色々なことが起きてきたら、こんな物じゃとても足りないでしょう。」
鈴木「この問題は特措法の問題と似たところがございまして、せっぱ詰まったら、これはもう無権限状態になっちゃうんだから、これ認めてよ。私どもも3つの条件を付けた上で賛成することにした訳でございますが、これとちょっと似たところがありますね。何かの弾みに金融システムが危なくなったら、もう待ったなしですから、公的資金導入を認めてよといわれると、私どもだって責任野党だから、公的資金を入れなかったらえらいことだなとと言うのが見えた時は考えざるを得ません。
しかし、それじゃあだめであって、せっぱ詰まった段階じゃなくて、事前に、公的資金導入のスキーム、あるいは金融債はどうするかと言うことを、私どもも考え方をしっかりまとめておりますから、政府もあんな観測気球じゃなくて、正面から打出してこられることを是非お願いしたいと思います。」

【平成9年11月28日  大蔵委員会】
北海道拓殖銀行、山一證券、三洋証券の破綻直後の質疑。
鈴木「今年の通常国会、2月10日の予算委員会の議事録がございます。ここで、私は2つのことをご指摘申上げた。
1つは、このデフレ予算、9兆円の国民負担増と公共投資削減を含むデフレ予算を強行するならば、今年の4月以降、成長率は殆どゼロに落込んで、非常な経済の困難が訪れるであろう。
もう1つは、そういう時に、金融3法によって決っている今のセーフティネット、〜中略〜 こんな不完全なセーフティネットで大丈夫かと言うことを総理ならびに三塚蔵相に問いただした訳であります。
その時、総理も蔵相も大丈夫だとおっしゃるから、もし私の予想通り経済が停滞し、金融システムに何かあったら、その結果責任をはっきりと取って頂きたいと言うことを私は申上げました。
半年たった現在、不幸にして、私の予想通り、経済は停滞し、金融危機が発生しております。」
@ 財政面からの抜本的景気対策、A外為法改正の延期、B早期是正措置実施延期、の3点の質問に対する三塚蔵相の答弁を受け、鈴木「私は、必ずしも外為法改正の施行や早期是正措置を延期しろと主張している訳ではないのです。ただ、これを予定通りやるとすれば、2つのことをきちんと手を打っておかなかったらえらいことになりますぞ、と言っている。
第1は、経済危機に対する抜本的な財政面からの対策、もう1つはセーフティネットの強化であります。
〜中略〜
そこでこれまた半年前の時と同じようにしっかり憶えておいて頂きたい。これはおそらく半年も経たないうちに出てくると思いますから、もしこの3つのうちのどれかを使わなければならなくなった時、蔵相は責任を取って頂きたい。必要無いと今おっしゃっているのですから。」
質疑の最後に、念を押し、鈴木「今日のこの金融危機と言うのは、もちろん第一義的には破綻した金融機関の経営者の経営責任を追求しなきゃいけないと言うことはあります。また、関与してきた大蔵省の行政が間違っていたと言うこともあります。しかし、一番責任が重いのは政府であります。政府がこういう経済の停滞を引き起こし、経済危機を引き起こしたこと、そして、再三私どもが申上げたにも拘らず、このデフレ予算で大丈夫だと言って突っ走ってきたこと、それから金融3法に基づくセーフティネットじゃだめですよ、もちませんよと私も新進党も再三言っているのに、これで大丈夫だと言ってここまで来たこと、この政府の責任が最も重大であるというふうに思います。そのことをはっきりと申し上げて、本日の私の質疑を終了したいと思います。」