1997年日本経済の回顧 (97.12.27)

−絶好のチャンスを逃した年−

【予見できた本年の経済危機 】
1997年の年の瀬を控え、日本国民はいま深刻な経済危機を憂い、金融不安に 怯えている。9兆円の国民負担増加と公共投資削減を含む97年度デフレ予算の 強行と、金融三法に基づく不完全な金融システム対策の放置を前提とすれば、こ のような危機的状況が訪れることは十分に予見できた。私は、96年12月の臨 時国会と97年1〜6月の通常国会で、何回もそのことを指摘した。
指摘しただけではない。96年12月の臨時国会には消費税率引上げの延期法案 の提出者となり、また97年通常国会では2〜3月中に特別所得減税の継続法案 の提出者となって、答弁席に座り、質疑に応じた。この法案を成立させることに よって、合計7兆円の増税を阻止しようとしたのである。しかし自社さの3与党 に民主党も加わって、2法案とも成立を阻まれた。財政赤字削減の目標は、景気 対策に優先するという彼等の政策判断によるものである。
その結果、97年4月以降の日本経済は、私の予想通りに悪化して危機に陥り、 金融システムは私の懸念通りに激動している。

【破綻した財政再建最優先の政策路線】
政府・自民党は、私の指摘から1年も経った98年の通常国会に、2兆円特別所 得減税の復活法案を出し、また10兆円の交付国債と20兆円の政府保証を使っ た金融システム対策の補強に動き出した。しかも財政再建最優先の政策路線には 変更なしという、訳の分からないことをまだ言い続けている。
97年度補正予算の形をとるとはいえ、特別減税の復活は財政赤字の拡大を伴な うし、30兆円の見せ金を現実に使った場合も、財政赤字は拡大する。これら は、毎年毎年財政赤字を縮小するという、政府・与党が自ら作った財政構造改革 法に違反しており、財政再建最優先の政策路線が既に破綻していることを明白に 示している。

【絶好のチャンスを潰した自社さ民4党】
この1年間の政策の遅れは、日本国民に取返しのつかない経済的ロスをもたらし てしまった。96年度に3.2%成長まで回復した日本経済は、97年度にもし デフレ予算の強行が無く、増減税トントン、公共投資横這いの中立予算が執行さ れれば、少なくとも4%近い成長率となり、民需主導型の持続的成長軌道に復帰 したであろう。その絶好のチャンスを政府と自社さ民の4党が叩き潰し、97年 度にはほぼ0%成長に落込んでしまった。その結果、倒産多発、失業率上昇、超 低金利持続に伴なう金利・年金生活者の困窮、金融機関の破綻とそれに伴なう預 貯金、信託、金融債、保険金の不安など、国民生活の安定は根底から脅かされて いる。

【橋本内閣打倒が対策の第一歩】
2兆円の特別減税復活は今となっては焼石に水である。株価の低迷と金融システ ム不安はまだまだ続くであろう。だからと言って政府が財政刺激策を拡大すれ ば、自ら作った財政構造改革法違反となり、政策路線転換は一層明瞭となるの で、政治責任を追求する声は一段と高まるであろう。
私は、日本経済を実力相応の成長路線に戻すことが目先の最優先課題であり、そ のことによってのみ中期的な財政赤字の削減が実現することを、明年も強力に主 張し続けたい。そのことによって、政策路線の転換以外に日本経済を救う道がな いことを明らかにし、一刻も早く橋本内閣を退陣に追い込む政治情勢を作りた い。日本の経済政策路線の明確な転換を、国民は切に念じていると信じるから だ。