12月短観の示す経済危機 (97.12.16)
−景気は自律的後退局面へ−
【景気は斑模様から黒一色へ】
12月調査の「日銀短観」(12月16日発表)は、予想通り大幅に悪化した
が、そこには先行きを判断する上で重要な手懸りとなる四つの特色が見られる。
第1は、業種別、企業規模別に明暗のあった業況判断DIが、一斉に悪化したこ
とである。景気は「斑模様」から「黒一色」に変ったのだ。
具体的に述べると、9月までは円安と輸出増加に恵まれた主要企業製造業の業況
判断DIは「良い超」(良いと応えた企業数が悪いと応えた企業数を上回る)で
あったが、12月には遂に「悪い超」に転じ、3月までの予想では更に「悪い
超」幅が15%に拡大した。他方、既に9月調査までに「悪い超」に転じていた
主要企業非製造業と中堅・中小企業の製造業・非製造業は、「悪い超」幅を一段
と拡大しており、特に中小企業の製造業・非製造業は来年3月までの予想で「悪
い超」33%と著しく悪化している。
【中小企業非製造業は既往最悪】
中小企業非製造業の場合、「悪い超」33%という水準は平成不況の最悪期を更に
下回る既往最低の水準だ。中小企業非製造業は、本年度のデフレ予算(9兆円の
国民負担増加と公共投資削減)に直撃された個人消費、住宅消費、公共投資に関
連の深い業種が多い。また、土地に依存する経営も多いため、未だに地価下落に
伴う資産デフレに悩む企業が少なくない。
その上、中小企業に対する金融機関の貸し渋りは、ここに来て一段と厳しくなっ
ている。短観の金融機関貸出態度DIを見ると、金融超緩和期であるにもかかわ
らず、12月には「厳しい超」に転じ、3月までの予想ではその幅が14%に拡
大する。これも、中小企業の業況悪化の大きな原因である。
【年度下期の輸出と設備投資は頭打ち】
三つ目の特色は、これまで景気を支えてきた輸出と設備投資の先行きに、変調が
見られることである。
主要企業製造業の輸出は、季節調整済み前期比で見て、96年度上期+5.
7%、下期+6.2%、97年度上期+8.3%の後、下期の計画は−2.7%
と減少に転じる見込みだ。
また、主要、中堅、中小の各企業の製造業・非製造業の合計を見ると、設備投資
の前年比は、96年度+4.0%、97年度上期+2.3%の後、下期の計画は
−3.4%と減少に転じる。直前まで計画の固まらない中小企業において、今後
若干の計画上積みがあったとしても、下期の設備投資が前年比でプラスに転じる
可能性は薄い。
【景気は自律的後退へ】
最後に、企業が設備と雇用の現状をどう見ているかを調べると、ここにも基調変
化が見られる。
まず製造業の主要、中堅、中小の各企業を合計した全企業の設備判断DIをみる
と、9月調査までは「過剰超」幅が縮小していたが、12月に再拡大に転じ、3
月までの予想では一段と「過剰超」の幅が広がる。
また全産業(製造・非製造)全企業の雇用判断DIをみると、3月には一旦「過
剰超」がゼロになった後、6月以降再び拡大している。この中にあって大企業
は、9月調査まで「過剰超」幅を縮小していたが、12月以降3月の予想まで再
び「過剰超」が拡大し始めた。
企業が設備と雇用を過剰と見る度合いを強めているということは、設備投資と雇
用が悪化することを示している。これは企業活動の景気に対するインパクトを示
す2大経路が悪化することに他ならない。
景気は自律的な後退局面に入った。