公的資金導入をどう考えるか (97.11.27)



 11月27日、新進党は「公的資金導入についての基本的考え方」を発表した。 この欄で何度か主張している公的資金問題、金融システム問題について、この党 の発表の内容に沿う形で改めて論じてみよう。

【経営者より重い政治の責任】
 今日の金融不安を招いた第一義的責任は、ズサンな経営を続けてきた個々の破綻 金融機関の経営者自身にある。その経営責任を徹底的に追及することは当然のこ とである。
 しかし同時に、@橋本内閣の本年度デフレ予算(9兆円の国民負担増加と公共投 資削減)の強行とA財政構造改革法案(1998年度以降、毎年公共投資削減、 赤字拡大を伴なうネット減税禁止)の提出、及びB住専処理(経営救済を目的と した公的資金の導入)の誤りに端を発する不良債権対策の無策、が金融不安をい たずらに増大させたもので、その政治責任はより重大である。政府与党は、声を 大にして個々の金融機関の経営責任と、大蔵省の行政責任の追及を叫んでいる が、それは自らの責任を逃れようする以外の何物でもない。

【救済型ではなく整理型の処理をすべき】
 公的資金導入の問題については、金融機関の自己責任の原則を確立することが第 一でなければならない。そのためには、金融機関の『経営破綻を防止』すること に公的資金を使うのではなく、金融機関が破綻したとき、『預金者の保護』と 『金融システムの安定維持』という一点に公的資金投入の根拠をしぼるべきであ る。
 政府与党の画策しているように、金融機関の経営救済のためにも公的資金が投入 されるようなことは断じて認められない。1930年代の米国に習って公的資金 で銀行の発行する優先株を購入するという案が自民党内で検討されているようだ が、以下の3点においてこの考え方は間違っている。@自己責任原則を無視し、 自らが招いたずさんな経営を楽にするため、我も我もと銀行が優先株の買上げを 求めるというモラルハザードが発生するAその結果、どの銀行を対象にするかを 決める際に、大蔵省の裁量性(密室性)が入るB1930年代の米国と違い、現 在の日本の銀行業界は成長産業ではなく、金融サービス業全体の発展の中、衰退 産業であり、むしろ銀行業の縮小が求められている。

【日本版RTCを創設すべき】
 公的資金導入の大前提として金融機関の不良債権等の財務状況の情報開示をすす め、ズサンな経営により、金融機関の経営破綻を招いた個々の経営者の刑事・民 事上の徹底した責任追及をすることは当然であり、そのために法的処理によって 経営責任を追及すると同時に、強力な貸し付け債権回収機構を確立する必要があ る。具体的には住専処理の際に新進党が提案した「不良債権処理公社(日本版R TC)」が1つの案になる。これは「会社更正法」による法的処理を前提に、 「行政組織法上の3条機関」として、公社を設立し、強力に不良債権の回収を図 るものである。



以下は新進党が発表した全文である。

「公的資金導入についての基本的考え方」

政府・与党は預金の取り扱いをしない住専の処理に6,850億円の血税を投入 して国民の厳しい批判をあび、以後は公的資金を一切投入しないと繰り返し述べ てきたが、山一証券、北海道拓殖銀行など一連の金融・証券・保険業の経営破綻 を契機として、再びあいまいな形で公的資金の導入をはかろうとしている。わが 党は公的資金投入の問題については、以下の方針で対処するものである。

一、今日の金融不安を招いた第一義的責任は、徹底した合理化努力を怠り、粉飾 決算等で国民の目を欺くズサンな経営を続けてきた個々の金融機関の経営者自身 にある。その経営責任を徹底的に追及することは当然のことである。
しかしながら同時に、橋本内閣の本年度デフレ予算の強行と財政構造改革法案の 提出、及び住専処理の誤りに端を発する不良債権対策の無策、が今日の政策不況 をもたらし、金融不安をいたずらに増大させたもので、その政治責任はより重大 である。政府与党は、声を大にして個々の金融機関の経営責任の追及を叫んでい るが、それは自らの責任を逃れようする以外の何物でもない。
わが党は、まずもって橋本内閣の政策の誤り、その政治責任を徹底的に追及す る。

一、公的資金導入の問題については、金融機関の自己責任の原則を確立すること が第一でなければならない。そのためには、金融機関の経営破綻を防止すること に公的資金を使うのではなく、金融機関が破綻したとき、預金者の保護と金融シ ステムの安定維持という一点に公的資金投入の根拠をしぼるべきである。
政府与党の画策しているように、金融機関の経営救済のためにも公的資金が投入 されるようなことは断じて認められない。

一、また公的資金導入の大前提として金融機関の不良債権等の財務状況の情報開 示をすすめ、ズサンな経営により、金融機関の経営破綻を招いた個々の経営者の 刑事・民事上の徹底した責任追及をすることは当然であり、そのために法的処理 によって経営責任を追及すると同時に、強力な貸し付け債権回収機構を確立する 必要がある。