自社さの3与党と民主党が招いた政策不況 (97.11.14)



 現在進行中の在庫調整の先には、いま景気を支えている設備投資と純輸出の腰折 れによる本格的景気後退のシナリオが見えていきた。この不況の本質は何か。

【2つの意味で政策不況】
 これは2つの意味で、自社さの3与党と民主党が招いた典型的な政策不況であ る。
 第一に本年度デフレ予算が招いた循環的不況であり、第二に資産デフレに対する 無策が招いた構造的不況である。
本年度予算は、9兆円の国民負担増加と、公共投資の落込みを含んでいる。9兆 円は国民所得の2.3%に当り、本年度の実質可処分所得はほとんど延びていな い。
 これは超大型の「負のケインズ政策」である。その結果、個人消費、住宅投資、 公共投資が減少し、過剰在庫を発生させ、生産調整を引き起こした。政府はこの デフレ効果を見誤り、4月以降の需要落込みを消費税引上げ前の駆け込み需要の 反動減だと主張し、民間の強気の生産をあおり、在庫調整の規模を大きくしてし まった。
 新進党はこの循環的政策不況を予見し、昨年12月の臨時国会には消費税引上げ を延期する法案を、また本年1〜3月の通常国会には2兆円特別減税を継続する 法案を提出した。しかし、自社さの3与党に加え、民主党までが両法案に反対 し、否決されたのである。
 ケインズ政策は効かないと宣伝し、大規模な「負のケインズ政策」を強行した自 社さ民の4党は、国民に対して何と言い訳する積りか。自社さ民の4党は、日本 経済を中期的低迷から循環的に立直せる絶好のチャンスを潰したのである。 日本経済は92〜94年度のゼロ%台成長のあと、95年度は2.4%、96年 度は2.9%の成長となり、企業収益は増益に転じ、失業率の上昇は止った。も し97年度に大規模な「負のケインズ政策」を採らなければ、成長率は3%台に 乗り、民間支出主導型の自律的成長軌道に戻ったであろう。自社さ民の4党はこ のチャンスをぶち壊した。

【またしても民主党の離反か】
 循環的政策不況に対しては、「負のケインズ政策」をやめるだけでよい。循環的 な財政拡張政策は不要である。財政政策を負の政策から中立的な政策に戻すた め、新進党は増税の修正と公共投資改革を提案している。構造的政策不況に対し ては、日本版RTC(不良債権処理公社)を設立し、破綻金融機関の経営責任追 求と預貯金支払資金の不足に対する公的資金の投入により、不良債権の早期処理 を進めることなどを主張している。
 以下では、循環的政策不況対策を敷延してみよう。
増税行過ぎの是正は法人課税と所得課税の減税で行なうべきだ。課税ベースを拡 大したうえで、法人税の基本税率を37.5%から32.5%へ引下げ、連結納 税制度を導入することにより、全体で実効税率を50%から40%へ引下げるこ とが必要だ(4兆円の純減税)。これによる税引後資本収益率の上昇とこれに伴 なう株価の上昇は、企業の投資意欲を間違いなく高める。
 所得減税は、最高限界税率を65%から50%へ引下げ、累進税率構造のフラッ ト化と簡素化を実現することと、非営利公益法人(NPO)に対する寄付金の所 得控除などによる最低2兆円の純減税実施である。これは恒久減税とするので、 将来の増税を恐れて減税分が貯蓄に回る心配は少ない。
 最低6兆円の減税財源は、歳出構造に潜む無駄の排除で捻出したうえ、足りない 部分は赤字国債の発行でつなぐ。経済が潜在成長軌道に戻りデフレ・ギャップが 縮小すれば、現在10兆円程落込んでいる税収が正常化するので、つなぎ国債は 十分償還できる。
 この6兆円減税案を、新進・民主・太陽の3野党の共同提案とするため、野党の政 策担当者会議が行われていたが、11月13日の会議において、民主党はまたし ても減税案のぶち壊しにかかった。財源案が具体的でないという理由で、一方的 に「決裂!」と叫んで席を立ったのである。野党3党の協議や政策協調は、今後 どうなるであろうか。