財政赤字削減に賛成するが故に財革法案に反対 (97.10.31)
10月31日(金)の財政構造改革特別委員会の締めくくり総括質疑において、
私は新進党を代表し、橋本総理、三塚蔵相、瓦建設相、尾身企画庁長官と討論し
た。
私は、「新進党が財政構造改革法案に反対しているのは、財政赤字削減に反対し
ているからではなく、逆に、この法案通りに財政政策を実施すると財政赤字削減
に失敗するからである」と言うことを、以下の事例を挙げて主張した。
【財政赤字縮小は民間投資拡大の時だけ】
過去において、財政赤字対GDP比率が3%を上回った78〜83年と95年〜
現在は、常に民間投資の対GDP比率が低下して経済が沈滞し、民間余剰(貯蓄
の投資超過)の対GDP比率が上昇した時期である。したがって財政赤字対GD
P比率引下げの決め手は、停滞している民間投資を刺激し、民間投資主導型の持
続的成長を実現して、民間投資対GDP比率を引上げることである。
金融政策は超低金利でこれ以上緩和の余地がなく、公共投資は無駄が多く、規制
緩和・地方分権・行政組織縮減による支出削減が喫緊の課題となっている以上、
民間投資を刺激する手段は法人課税のネット減税しかない。それによって一時的
に財政赤字が拡大しても経済が回復すれば1〜2年のうちに赤字は縮小に転ず
る。この法案が成立すると、毎年毎年赤字を縮させなければならないので、この
ような一時的に赤字が拡大するネット減税が不可能となり、中期的に財政赤字を
削減できる唯一の道がふさがれる。
【経済拡大こそが赤字削減の決め手】
米国の財政赤字は、93年頃、放っておくと97〜98年に4千億ドルを超える
と予想されていたが、現実の赤字は97年現在、1千億ドルを割ってきた。この
3千億ドルの赤字縮小のうち、歳出削減などの政策努力によるものは1千億ドル
であり、残りの2千億ドルは景気拡大に伴う税収増加である。
この例を見ても、民間投資主導型の持続的成長の実現が、財政赤字削減の決め手
であることがわかる。逆に言って、減税による民間投資刺激の手を縛るこの法案
は、決して財政赤字の削減をもたらさず、むしろ経済の長期停滞で赤字が増えて
しまうだろう。
【財革法では赤字が3%以下にならない】
この事を裏付けるシミュレーション結果が、大和総研から発表されている。財革
法の実施を前提に2003年までの日本経済のシミュレーションを行った結果、
98〜2003年度の6年間、成長率は平均1.9%(始めの3年間は1.
6%)にとどまり、低成長の結果、失業率は4.5%(2002〜2003年
度)に上昇、経常黒字対GDP比率は4.5%(2001年度)に達する。
従って、実施期間中、国内では社会不安と経済・金融危機が発生し、対外的には
貿易摩擦が激化して日本は孤立するだろう。
しかも、これだけの犠牲を払いながら、財政赤字対GDP比率は、2003年度
になっても3%を割ることが出来ず、3.4%に高止まりする。
このシミュレーション結果は、中立的な民間研究所が「新進党が財革法に反対す
るのは、財政再建を成功させたいからだ」と言う根拠を裏付けたことになる。