新進党の経済政策に関する考え方 (97.10.28)
10月28日(火)午後1時より、私は野田毅政策審議会長と共に記者会見し、
次のような新進党の経済政策の考え方を発表した。
【政府の経済運営の問題点】
《 実行の担保なく、小出しで無責任な自民党の景気対策 》
自民党が10月21日に決定した国民緊急経済対策は、政府与党一体で作成した
ものではなく、自民党だけが単に措置すべきとするメニューを示しただけで、き
わめて実効性の薄いものである。
国民はかえって失望し、景気回復どころか、悪化させる結果を招く。こうした対
策を発表すること自体、経済・財政運営において手詰まりになっているという、
橋本内閣の窮地ぶりを示すものである。
《 橋本内閣の失政による現下の政策不況 》
これまで、自社さ連立政権は、経済失政を重ねてきた。
@今年度空前のデフレ予算を編成し、国民に約九兆円の国民負担増を強い、公共
投資を削減し、立ち直りかけていた景気回復の芽を摘んだ。
A丸二年に及ぶ超低金利政策の継続で、国民の生活設計を狂わせ消費を低下させ
ている。
B住専処理の失敗に始まる不良債権問題の未解決が、金融不安、ゼネコン危機な
ど、企業の経 営不安を増大させている。
C2003年まで毎年毎年赤字削減を義務づける財政構造改革法案が、経済の先
行き感を一層 暗くさせ、投資・消費意欲を一段と萎縮させている。
D規制の撤廃・緩和は不徹底、行革も“火だるま”は見せかけだけで腰折れに終
わることは必至。
経済音痴の橋本内閣は速やかに退くべきで、我々は、政権交代こそ最大の景気対
策と考える。
【新進党の経済運営に対する考え方】
《 当面する不況と経済的な課題への認識 》
@今日の政策不況は、循環的不況要因への政策的対応の誤りに加え、わが国経済
が構造的変革を迫られているという構造的要因に対し、橋本自社さ連立内閣が、
経済無策であることに深く根差す。
A目先の現象にとらわれた、近視眼的な景気対策の繰り返しでは短期的にはもち
ろん、中長期的にも経済問題は解決できない。政策不況は、政策で阻止しなけれ
ばならない。
Bわが党は、以下のような抜本的対策を強く推し進めることこそ、わが国経済を
根本から立て直すとともに、今日の不況を打開する道でもあると考える。
《 基本原則 》
@行財政の簡素・効率化は歳出削減を伴い、短期的にデフレ要因となる。従っ
て、デフレ効果を補正するための経済活性化措置が必要で、経済の活性化・構造
改革と行財政の構造改革を同時に進めなければならない。
Aわが党は、約7%のデフレギャップを埋めながら日本経済を潜在成長経路であ
る平均成長3%に復帰させる。このため、今後、実質3.5〜4.0%成長を持
続し、経済構造改革と行財政構造改革を同時に達成する政策を推し進める。
B制度の国際標準化の観点に立ち、規制の撤廃・緩和と税制改革をおこなう。
《 具体的方策 》
T;『直接税の大型減税の実施』
直接税と社会保障負担の合計負担率を抑制し、家計の可処分所得を増大すること
により、中期的に消費の拡大を期す。このため、当面の景気浮揚との意味を併せ
て、「4兆円の法人課税の純減税」「2兆円程度の所得減税」等の、直接税の大
型減税を速やかに実施する。
@約4兆円規模の法人課税の純減税の実施
実効税率を50%から40%に引き下げる純減税とする。
具体的には、法人税の基本税率の37.5%から32.5%への引き下げ、連結
納税制度の導入、地方法人課税の整備、国・地方併せた課税ベースの適正化等を
図る。
A2兆円規模の所得課税の減税等を実施
所得税・住民税を併せた最高限界税率を65%から50%以下に引き下げ税率構
造のフラット化と簡素化を行うほか、所得控除の整理等の簡素化を進め、2兆円
規模の所得減税を実施する。
BNPO(民間非営利セクター)活動の優遇税制を創設
NPOの活動支援のため、市民公益法人の寄付金に対する法人税、所得税、土地
税制等の優遇税制を新設する。
C減税財源
当面の財源は、国債の発行によって対応する。中長期的には、行財政構造の簡
素・効率化による歳出削減と経済の活性化・構造転換による税収の正常な水準へ
の回帰によって国債の償還を図る。
U;『土地の流動化、公共インフラ・住宅整備』
地価税の凍結・譲渡益課税の簡素化など土地税制の是正を図る。
土地担保債権の証券化を推進する。容積率や用途地域等の見直しなど、土地関連
の規制の撤廃・緩和を進めることにより民間活力を強化するとともに、国公有地
の有効活用や定期借地権の活用で家づくりコストを引き下げる。
V;『公共事業の制度改革』
単価の見直し、入札制度の改革、事業実施主体の国から地方への転換など、公共
事業の制度改革を推進する一方、これらによる予算単価の見直しで、光ファイバ
ー等の情報関連や国際ハブ空港等、有効かつ真に必要な公共事業については大胆
に推進し、選択的に実質的な工事量を拡大する。
首都機能移転、新国土軸構想、地域連携構想を実現し、地方の個性ある発展を進
める。
W;『規制の撤廃・緩和等』
民間経済の活性化に重点を置いた規制の撤廃・緩和や公共料金の引き下げ等によ
る高コスト体質の改善などの経済構造を改革する。
@公共料金の引き下げ
規制撤廃・緩和等で民間参入を促進し、電気、ガス、電話、郵便料金、道路・鉄
道・航空等の交通料金、水道料金等の公共料金を国際的な水準に引き下げる。内
外価格差・経済の高コスト構造を是正する。
A資本市場の活性化
有価証券取引税・取引所税の撤廃等の証券税制を整備する。
B戦略的な規制の撤廃・緩和
行政を事後チェック型のシステムに転換する。住宅・土地、情報・通信、流通・
輸入、食料品、運輸、エネルギー、金融、医薬品等に関する規制を大幅に撤廃・
緩和する。
Cニュービジネスの支援・雇用の確保・中小企業の振興
新技術の研究・開発を促進しベンチャー・ビジネス支援のための制度の整備を進
める。「ものづくり基本法」を制定し、「商店街再生」の推進をはかり、職業能
力開発機会の整備や労働法制の抜本的な見直しを進める。
X;『金融システム改革と不良債権処理』
情報開示を徹底し金融機関の破綻処理に対する危機管理体制を整備する。業態別
の規制を緩和し、金融の各業務を横断的に対象とする預金者、投資家の保護と公
正な取引ルールを定めた「市場法」(仮称・金融サービス法)を制定する。
(参考資料)
政府・与党によって潰された新進党の経済政策関連国会提出法案の内容一覧
95・08・04 第133臨時国会
○自己株式消却に係る見なし配当の非課税
○土地税制の是正
・譲渡益課税の軽減
・事業用資産の買い換え特例制度の拡充
○有価証券取引税の非課税
95・10・05 第134臨時国会
○土地税制の是正
・土地譲渡益課税の軽減
・事業用資産の買い換え特例制度の拡充
○有価証券取引税の非課税
96・05・31 第136通常国会
○NPO(市民公益法人)活動に関する優遇税制
96・09・27 第137臨時国会
○消費税率の3%据え置き
96・11・29 第139臨時国会
○消費税の3%据え置き
○NPO(市民公益法人)活動に関する優遇税制
96・02・24 第140通常国会
○平成9年分所得課税の特別減税の実施
○有価証券取引税および取引所税の廃止
○土地税制の是正
・地価税の非課税
・法人の長期所有土地等の譲渡益課税の特別課税の不適用
・法人の新規土地取得等に係る負債の利子の課税の特例の不適用
・ 個人の不動産取得に係る損益通算の特例の不適用
96・02・28
○ 平成9年分所得課税の特別減税の実施
97・05・20
○日本銀行法案
○金融委員会法案