改めて失望を買った自民党の景気対策(97.10.22)



【思いつきを並べただけ 】
 10月21日(火)、自民党は「緊急国民経済対策」という大げさな名前の景気 対策を発表したが、改めて国民の失望を買った。株価は、前日の米国株価の上昇 に刺激されて、前場は233円上昇したが、自民党の景気対策が伝わった後場は 失望売りを誘い、317円下落して前日比84円安で引けた。
 それもその筈で、この対策は現状が「政策不況」であるという反省にまったく立 っておらず、不況を招いた政策を転換させるという内容がまったく含まれていな いからである。あるのは、行き当たりばったりの思い付きで、規制緩和、土地流 動化対策、中小企業対策、税制改正を並べているだけで、それも肝腎なところは 「努める」「図る」ばかりで、実施を言い切っている箇所は極めて少ない。

【ネットの減税なし】
 とくに税制については、法人課税の引下げや連結納税制度の導入に「努める」と 書いてあるだけで、本当に実施する保証は何もない。税制改革という言葉はあっ ても、「減税」という言葉はないし、とくに「所得税」にはまったく触れていな い。
 この日(21日)、私が衆議院財政構造改革特別委員会で橋本総理、三塚蔵相に 確認したところによれば、法人税の引下げは課税ベース拡大に伴う増税の範囲 内、すなわち中立的(レベニュー・ニュートラル)であって、実質的(ネット) 減税はしない、という事であった。これでは景気刺激の効果はないし、改めて国 民の失望を買うのは当然である。

【政策不況には政策転換で対処せよ】
 いまの不況は、9兆円の国民負担増加と公共投資減少を含む本年度のデフレ予算 が引き起こした景気「循環的」な部分と、バブル崩壊に伴うバランスシート・リ セッションという「構造的」な部分に対する無策によって引き起こされた「政策 不況」である。
 従って、デフレ予算の転換、不良債権問題の抜本的解決といった政策の修正がな い限り、政策不況からの脱出は出来ない。
 循環的要因と構造的要因の両者に共通する対策として、いま最も必要な対策は、 @ 法人課税のネット4兆円減税(課税ベース拡大を伴う基本税率の37.5% から32.5%への引下げ、および連結納税制度の導入による実効税率の49. 98%から40%への引下げ)
A 所得課税のネット最低2兆円減税(最高限界税率の65%から50%への引 下げを含む税率構造のフラット化と簡素化、NPO寄付金の課税所得控除など) によって、企業の投資意欲、個人の勤労意欲を高め、経済を需要面のみならず、 供給面(サプライ・サイド)から活性化することである。
 4兆円のネット法人税減税は、自己資金の増加、資本収益率の上昇を反映した株 価上昇によるエクイティ・ファイナンの容易化などを通じて投資意欲を高める。 所得減税の乗数効果も、政策転換に伴う先行き観の好転で限界消費動向が高ま り、大きくなるだろう。
 このようなネット減税こそが民間支出主導型の景気回復を始動させ、中期的には 税収の正常化を通じる財政再建にも通じるのである。