臨時国会提出予定の金融財政法案を評定する(97.9.29)
【7本のうち2本とは徹底的に対決する】
9月29日に会期75日間の臨時国会がスタートした。この国会には、大
蔵省が準備した7本の財政金融関係法案が提出される。
このうち2本は、為替管理を完全に撤廃する明年4月の改正外為法施行に
合わせ、課税漏れを防ぐための、新たな報告書徴求制度を導入するもので
ある。書類があまり複雑になると取引コストを高め、為替管理撤廃を無意
味にするので、その点の審議がポイントになる。
他の2本は、前国会で成立した純粋持株会社の解禁を金融サービス業
でも可能にする(いわゆる「金融持株会社」の解禁)法案で、内容の精査
は必要であるが、方向性において問題はない。
更に1本は、度重なる銀行や証券会社の不正事件に鑑み、罰則を強化
する法案で、これも他業界の罰則とのバランスをチェックする必要はある
が、方向性に問題はない。
問題があるのは残る2法案、すなわち「財政構造改革の推進に関する
特別措置法案」と「預金保険法の一部を改正する法案」だ。この2つ
の法案とは徹底的に対決したい。
【日本経済を破綻に導く財政構造改革法案】
既にこの欄の7月17日付に書いたように、財政構造改革法案は「構造改
革」とは名ばかりで、実態は「一般会計支出及び赤字削減法案」である。
「支出構造」の改革には一切手をつけず、ただ一般会計の支出繰り延べで
赤字を減らそうという「羊頭狗肉」である。
また、年々赤字国債を減額して2003年までに発行額をゼロにすること
を目標にしているが、これは大きな問題だ。大切なことは、@赤字国債と
建設国債の区別なく、またA一般会計のみではなく中央、地方を合わせた
公共部門全体の赤字を、B年々減らすのではなく2003年までにGDP
の3%以下に減らすことである。
@ は補正予算を組んで建設国債を発行し、無駄を含んだままの公共
投資を拡大する道を残している。
A は赤字を特別会計や公社公団などにシワ寄せして、ごまかす余地
を残している。
B は年々の赤字国債削減に縛られて租税政策が硬直化し、必要な局
面で所得税や法人税の純減税が実施できず、日本経済を破綻に導く恐れが
ある。
【不透明な公的資金導入を図る預金保険改正】
次に預金保険法の改正は、本来、破綻した金融機関の預金支払資金の不足
分に当てるべき預金保険基金の資金援助を、破綻しそうな金融機関が集っ
て新金融機関を作ったり、破綻しそうな金融機関が金融持株会社の傘下に
入る時にも使おうとするものである。
このような事を認めたらモラルハザードが発生し、経営不振の金融機関が
安易にこの方法をを利用して合併したり、持株会社の傘下に逃げ込んだり
するだろう。その結果、預金保険基金の資金はたちまち不足し、政府保証
による借入に頼らざるを得なくなり、最終的には公的資金で保証分を決済
することになろう。これは将来の公的資金導入を約束するようなものだ。
預金保険基金の資金援助は、あくまでも破綻した金融機関の預金支払い資
金の不足分に限定すべきである。その上で、負債超過を解消し、経営者も
責任を取って退陣した後の金融機関がどこかの救済金融機関に吸収合併さ
れるならよい。しかし、始めから合併などを予定し、経営者が責任も取ら
ず、破綻もしないのに資金援助を仰ぐなどという安易な方法は、言語道断
である。